大鳥居横あやかし宅配便~ワケアリ荷物お届けします~

シェリンカ

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14 神車のお札

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 夕暮れになり、狭間の時間の宅配便屋のほうへ顔を出すと、カウンターに二つ並んだ宅配便ひき受け窓口が、もう一つ増えていた。

「え……これどうしたの?」

 尋ねると、シロが説明してくれる。

「瑞穂ちゃんもすっかり引き受け業務に慣れたみたいだし、数もこなせるから、新しく、特別受け付け用の窓口を設けてもいいかなって……」
「特別受け付け用……?」

 首を傾げる私に、クロが鋭い目を向けた。

「あやかしから人間宛ての荷物だ」
「えっ……でも……いいの?」

 クロは確か、人間とあやかしが親しくするのをあまり好ましく思っていなかったはずだと思いながら問いかけると、予想通りぷいっと顔を逸らされる。

「豆太の例みたいに、前から需要があったことは確かだからな」

 それきり仕事のほうに集中してしまったクロに代わり、シロが説明してくれる。

「でもこれまでは、引き受けてもお届けできる人がいなくってね……そのてん瑞穂ちゃんは、みや様から『神車』のお札をいただいたんでしょ?」
「え? なんで知ってるの?」

 シロの口からその名前とその話題が出てくるとは思わず、つい問いかける私に、彼はぱちりと片目を瞑ってみせる。

「俺の情報網を舐めてもらっちゃ困るな」

 それきりクロと同じように、仕事のほうへ集中してしまったシロに、うまくはぐらかされてしまったことはなんとなくわかる。

(別にいいけど……隠してたわけでもないし……)

 私も荷物の受け付けをしようと、空いている一番奥の窓口へ向かうと、ちょうど一人のお客さんを応対し終えたところだったシロが、大きな声を上げる。

「そうだ! これが一番大事なんだけど……一つ忠告するならば、瑞穂ちゃんはもうちょっと、あやかしについて学んだほうがいいと思うよ」
「え……」

 突然そういうことを言われても、どうしていいのかわからない。

「私、なんかあやかしのおきてを破ったとか……そういうことやった?」
「いや、そうじゃないけど……むしろ逆? 瑞穂ちゃん自身のために?」

 よくわからない説明をするシロが、ガラス扉に目を向け、さっと外を指さした。

「たとえば豆太だけど……瑞穂ちゃんきっと、小さな男の子だと思っているだろうけど、彼、実は俺より年上だから」
「へ?」

 あまりに思いがけない言葉を聞いたために、おかしな声が出てしまった私をぷっと笑い、シロがガラス扉の向こうを見てみるように促した。

 そこにはなかなかに上背のある、茶色い髪の青年が立っている。
 ふとふり返って私と目があうと、しゅるしゅると身長が縮み、豆太くんの背の高さになった。

「どういうことなのっ!?」

 叫ぶ私に笑顔で手を振ると、今日は頼む荷物もないのか、豆太くんは鳥居のほうへ帰っていく。

「田中のお爺ちゃんに最初に会ったのが、少年の姿だったからそれを続けてたのか……あれだと瑞穂ちゃんみたいな単純な人に、優しくしてもらえるからわざとなのか……どっちにせよ彼、老若男女どんな姿にも化けられるよ。実年齢は俺より少し上。れっきとした成人男のあやかし」

「ちょっとおおおおお!!!」

 豆太くんは小さな男の子なのだからと、移動の時は抱っこしたり、泣いていたら抱きしめて慰めたり、甲斐甲斐しく世話を焼いてあげていた過去の自分に、今すぐ教えに飛んで行きたい。
 もちろんそんなこと出来るはずはないのだけれど――。

「うん、だから少し、勉強したほうがいいかなって……」

 シロはあわれむような目で私を見るけれど、クロの鋭いひと言が私の心をえぐる。

「考えなしだからだ」

(なんですって!)

 心の中でだけ反駁はんばくの声を上げた私は、くじけそうになる自分を励ましながら、あやかしたちの荷物を引き受ける窓口に立った。
 限られたわずかな時間だけ営業する『狭間の時間の宅配便屋』は、今日もさまざまなあやかしたちでごった返していた。
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