26 / 27
第四章 交流会
9.思わぬ副産物
しおりを挟む
「待てよ、可憐! 待てって!」
諒がいくら呼んでも、走る速度を落とすことのなかった可憐さんの背中は、私の叫びに、ピタリと止まった。
「ちょっと待って! 可憐さん!」
ためらうようにしばらく右往左往したあと、クルッと回れ右をして、今度は私に向かって一目散に駆けて来る。
「琴美ちゃん!」
自分の胸に飛びこんで来たいい香りのする華奢な体を、私は慌てて抱き止めた。
「もう嫌だよ! 本当はこんなの嫌なの……!」
涙混じりに叫ばれた言葉こそ、可憐さんの本音だと思った。
だから、私は彼女の体をなおいっそうギュッと強く抱き締める。
「うん……私じゃあんまり役に立たないかもしれないけど、一生懸命考える……だから、可憐さんが今どんなことで悩んでるのか……教えて?」
「うん……」
心の中に溜め込んだものを、誰かに聞いてもらうだけで楽になることもある。
以前、貴人に教えてもらったその大事なことを、私はまだ忘れてはいなかった。
「最初は彼のほうからアプローチしてきたの。五つも年上なんて問題外だって思ってたから、私はさんざん無視したんだけど、そんなこと、全然気にしない人で……」
宝泉学園から一番近かったという理由で、私と可憐さんは諒の家にお邪魔することになった。
もちろん、初めて入った諒の部屋。
ドキドキする気持ちはあるけれど、今はとにかく可憐さんの話を聞くことが大切だ。
家に帰る早々「俺はちょっと……」といなくなった諒のことなんて無視で、私は可憐さんの話を真剣に聞いていた。
「あんまり毎日会いに来てくれてたものだから……ある日、姿が見えなかった時には、もう気になってしょうがなかった……計算なんかじゃなかったって、今でも信じてるけど……きっとあの時から、私のほうが彼にはまっちゃってたんだろうな……」
ポロリと涙を零しながらも、小さく笑ってみせる可憐さんの様子が胸に痛い。
口ではどんなに「もういい!」なんて言ったって、本当はその恋を手放したくなくて。
でも絶望的な状況の中じゃ、どうする事も出来なくて。
苦しくてたまらない思いなら、私はよく知っている。
もう半年以上も前のことなのに、ついこの間のことにように思い出すことができる。
「わかるよ、可憐さんの気持ち……でも、彼氏さんが本当に大切だったら、勝手に決めつけないで、ちゃんと話をしたほうがいいと思う。ひょっとしたら、何かの間違いかもしれないし、理由があるのかもしれないし……」
自分自身はまったくできなかったことを、人に勧めるのもどうかと思うが、あの時、そうできなかった自分を悔いているからこそ、ここは声を大にして叫びたい。
「そのほうが、こうやって逃げ回ってるよりはずっといいと思うよ……?」
可憐さんが、涙に濡れた長い睫毛の目を私に向けた。
きゅっとひき結んでいた桜色の唇を開いて、意を決したように私に答えるには――。
「いやよ」
てっきりいい答えが返ってくるものだとばかり思っていたので、思わずガクッと前のめりに倒れるところだった。
「い、いやよって……」
「嫌なの! 私のほうから確かめるのも、彰人さんの言い訳を聞くのも嫌!」
長い髪を左右に揺らしながら、小さな子供が駄々を捏ねるように、何度も首を横に振る可憐さんの様子に、呆気に取られてしまう。
「だからってこうやって逃げてばかりの自分も嫌! もうこのまま、彰人さんに会えなくなるのも嫌! 今こうしてる間にも、他の人が彼の傍にいるかもなんて、考えるだけで嫌なの!」
あまりの『嫌』の連発に、だんだん笑いがこみ上げてきた。
なんのことはない。
なんだかんだ言ったってやっぱり可憐さんは彼氏さんのことが大好きなのだ。
好きすぎて、いろんな感情を自分で持て余してしまっているのだろう。
(本当に……一回会っちゃえば、それで元の鞘に収まりそう……彼氏さんのほうだって、『あんなに惚れてるんだぞ!』って諒に言わせちゃうくらいなんだし……)
そう考えて、ふと首を捻った。
(うん? でもその言い方だと、まるで諒が可憐さんの彼氏さんのことを、よく知ってるみたいじゃない……?)
実際に耳にした時は気にも留めなかったセリフに、ひっかかりを感じる。
(あれ? ……なんでだろ?)
記憶力と想像力を駆使して、私がいつものように考えを巡らし始めた途端に、バタンと大きな音をさせて背後のドアが開いた。
ビックリしてふり返った先に立っていたのは、思いがけない人だった。
てっきり諒が返って来たのだとばかり思ったのに、諒よりはゆうに十五センチは背が高い男の人。
モデルばりの長身に、均整のとれた体。
キリッとした精悍な顔の、たいそうなイケメン。
(どっかで会ったような……誰だっけ?)
首を傾げた途端に、反対方向から可憐さんの悲鳴が聞こえた。
「彰人さん!」
それでようやく、いつも車に乗ってる横顔ばかりを見ていた、可憐さんの彼氏さんなんだと思い当る。
(まさにグッドタイミング! ……でもなんで? ここ、諒の家だよ?)
わけもわからず首を捻る私の目に、その時、彼氏さんの背後からひょっこりと顔を出す諒の姿が映った。
私に向かって人差し指を向け、こっちに来いとでもいうように急いで手招きする。
(え? なに?)
意味がよくわからずにポカンとしたら、すぐに諒はムッとしたような顔になった。
「いいから! はやく! こっちにこい!」
大きく口を開けて、口パクでそう伝えられたから、これ以上機嫌を損ねないうちに、私は急いで立ち上がった。
「やだ……琴美ちゃん、どこに行くの?」
焦って声を上げる可憐さんに心の中で手を合わせながら、急いでドアの向こうの廊下に向かう。
だって、「早くしろ!」と口パクで叫ぶ諒の形相は、今言うことを聞かないとあとでどんな目にあわされるのかと不安になるくらい、もの凄い怒りがこもっているのだ。
部屋に入ってすぐの所で立ち竦んでいた彰人さんと入れ替わるように、私がドアから廊下に出た途端、諒は私の腕を掴んで自分のほうへ引き寄せ、目の前のドアをガチャンと閉めた。
「諒!?」
「諒ちゃん!」
可憐さんと彰人さんの驚きの声なんて完全無視で、諒はドアに付けられた南京錠をガチリとロックすると、私の手を引き歩き始める。
「これでよし! 母さんの付けたお仕置き用の鍵が初めて俺の役に立った! あとは本人たちでなんとかしてくれ……まったくいつになっても、世話の焼ける……!」
私にはよくわからないセリフをブツブツと呟きながら、そのまま階段を下り、諒は私を一階のリビングへと連れて行った。
「しばらく時間がかかるだろうから、待ってるか? それとも先に帰る?」
尋ねられるままに、「えっと……待ってる……」と答えて、思わず自分の右手首を凝視してしまった。
だってさっきからずっと、諒は私の腕をぎゅっと掴んだままだ。
「あ、わりい……じゃあなんか飲むか?」
慌てて私の手を放してキッチンへと向かっていく諒の頬が、ほのかに赤い気がするのは、私の気のせいだろうか。
「うん。でもそれよりまず、何がどうなってるのか、説明してくれない?」
ちょっと強めの口調でそう言ったら、諒は私をふり返って、眉を寄せた。
「わかってるよ。そのへんに座ってろよ」
可憐さんの相談に乗るつもりでここに来たのに、思いがけず諒と二人きりで過ごすことになってしまった。
頭の片隅をかすめる「今日、諒を待っていた私の本来の目的」に、本当はたまらなくドキドキしていた。
「彰人兄ちゃんは、うちの近所の兄ちゃん。俺の中学の頃の家庭教師でもある。あんな顔してて、オクテで口下手で……だから可憐に一目ぼれした時は、最初のうち俺がいろいろ手伝ったんだよ……まあ……相手が自分と同じ中学生だとは、とても見えなかったからな……高校に行ったら同学年にいるんで、すげえビックリした……」
「そう……」
淡々とした私の返事は、どうやら諒のお気に召さなかったらしい。
ムッとしたような視線を向けられる。
「今のは笑うところだろ。なんだよ……お前、なんか反応おかしくないか……?」
「だって……」
言いかけて私は、諒に淹れてもらったコーヒーのカップに視線を落として、口をつぐんだ。
(てっきり諒は可憐さんのことを好きなんだと思ってた。だからあんなに彼女のことに一生懸命なんだろうって……それを気にして、泣いたり悩んだり……私のこの数日間はいったい何だったわけ?)
怒っていいのか、喜んでいいのか、なんとも複雑な心境で次の言葉が見つからない。
そんな私に向かって、諒は問いかける。
「だって、なんだよ?」
明らかにイライラしている様子に、ため息が出そうだった。
腐れ縁の上に、なぜか一緒に組まされることの多い諒には、私の感情が、実は一番ごまかしが利かない。
表情だけで心理状態を読み取ってしまう繭香以上に、全然騙されてくれないということを、私は知っていた。
(だめだ……このままじゃ、また喧嘩になる)
長年の経験からそう悟った私は、諒がこれ以上機嫌を損ねる前に、さっさと言ってしまうことにした。
でなければ、そのあとに続くべき、私の本来の目的なんて、口に出すことさえできなくなってしまう。
「私、諒は可憐さんを好きなんだと思ってたのよ……」
渋々言葉にした、私のとんでもない勘違いに、諒は呆気に取られた顔をした。
「は?」
無防備なその表情は、なんとも可愛くて、私がこっそりと胸を高鳴らせたのも束の間、すぐに諒は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「お前なあ! 何をどうやったらそうなるんだよ……ほんっとに、信じらんねえ!」
心底呆れ切ったような声に、悪いのは自分のほうだと重々わかっているのに、ついつい負けん気が出てきてしまう。
「だってそう思ったんだもん! 諒だって、あんなに一生懸命可憐さんのこと追いかけてたじゃない!」
「だからそれは彰人兄ちゃんのためだろ!」
「そんなこと、私が知るわけないでしょ! だから……!」
このままどんどん険悪になっていく前に、不毛な言い争いはもう終わりにしたい。
そう思っているのに、口も体も、まったく私のいうことをきいてくれない。
なのに――。
「ふざけるなよ! 俺が好きなのは、中学の頃からずっと……!」
諒がそう叫んだ途端、間近で諒と向き合ったまま、私の体の全機能が停止した。
(中学の頃から? ……嘘? ……嫌だ! ……誰?)
その先の言葉が聞きたくて。
聞きたくなくて。
私の両手は勝手に自分の両耳を塞いでしまっている。
それなのに、諒を見つめる両目には、ぶわっと涙が浮かんでくる。
――まるで絵に描いたように情緒不安定な女。
私のあまりに挙動不審な反応に、激高のあまり我を忘れかけていた諒が、ふと正気に返った。
「な……んだよ? ……どうした?」
ほんのついさっきまで怒ってたくせに、そんなに心配そうな顔で私を見ないでほしい。
まさに世紀の大失恋の直前だというのに、また不覚にもときめいてしまう。
「なんでもないわよ……ごめん、やっぱり私もう帰る!」
「えっ? おい! 待て……!」
焦る諒をふり切って、私は諒の家から逃げ出した。
その足でそのまま繭香の家に向かい、洗いざらいぶちまけて、大泣きして、諒のことはもう諦めようと思ったのに、それは実行できなかった。
私が鳴らした玄関のチャイムを聞いて応対に出て来てくれた繭香は、なんと私を玄関先で追い返した。
「約束をちゃんと守れ! 次は琴美が諒を誘う番だっただろう!」
「だからそれはもうできないの! 可憐さんのことは誤解だったけど、諒には中学の頃からの好きな人がいるんだって!」
繭香は心底呆れたような顔で私を見上げ、よく意味のわからない言葉を呟いた。
「そこまで聞いて、まだ……? よっぽど有り得ないって、はなっから頭の中で排除してるんだな……奴も気の毒に……」
「………………?」
首を傾げる私に向かって、今度は明らかに棘を含んだ言葉を放つ。
「とにかく! この用紙に署名を貰って来い! 成功するかしないかは問わないが……もし実行に移さなかったら、その時は、私はもう琴美とは縁を切る!」
「そんなあ!」
涙でぐしょぐしょに濡れながら、私は繭香が自分に押し付けた用紙に、目を落とした。
それは、全校生徒何百人分も私がこの手で仕分けした、交流会の参加希望書に他ならない。
「無理だよ!」
「無理じゃない! 騙されたと思ってやれ! じゃあな!」
泣いてすがる私を突き放して、ガチャリと玄関扉を閉じた繭香は、本当に鬼なんじゃないかと思った。
(なによお……友だちだったらこんな時は、慰めてくれるのが普通じゃない! 繭香の馬鹿ぁ!)
流石にそれを口に出して言うことはしなかったが、こうなったら明日は学校を休んでしまおうと、私は心に誓った。
しかし、内申書もパーフェクトの内容で大学受験に望もうと思っている私には、学校をズル休みしようなんて、どだい無理な話だった。
いつもの時間に家を出て、いつもどおりに登校した最前列の自分の席で、机につっ伏していると、背後から嫌な声がかかる。
「どうしたの近藤さん? やっぱり悩みごと?」
本当に、心から放っておいてほしいのに、柏木は今日はわざわざ自分の席を立って、私の前へと回りこんできた。
どうしたらいいのかと途方に暮れて、私が机の上に投げ出していた参加希望書をさっさと取り上げる。
「ちょっと! なにすんのよ!」
怒って顔を上げた私を、それはそれは気の毒そうな顔で見下ろした。
「なんだ……やっぱりパートナーがいなくて困ってるんじゃないか……」
嬉しそうに笑うと、制服の胸ポケットからおもむろにボールペンを取り出す。
「ちょ、ちょっと……? 何するつもり?」
嫌な予感に苛まれて、私が立ち上がった時にはもう遅かった。
私にはとうてい手の届かない高さで、柏木が勝手に用紙に何かを書きこもうとしている。
「しょうがないな……期末考査の直前だし、参加するつもりなんてなかったんだけど……ボランティアだと思って、ここは僕が……」
「どんな嫌がらせなのよ、それは!」
慌てて用紙を取り返そうとしても、女子の中でも前から数えたほうが早いくらいの私の身長じゃ、長身の柏木の手に握られた物なんて届くはずがない。
ぶざまにピョンピョン跳ねる私の姿を見て、柏木もその取り巻き連中も、面白そうに笑っている。
「返してよ! ちょっと!」
怒りに肩を震わせながら柏木に向かって突進する私の目の前で、意地悪な笑顔を浮かべた柏木の顔に、もの凄い勢いで校内履きのスリッパが命中した。
「うおっ!!」
スッパーンという音と共に体勢を崩した柏木の手から、私は交流会の参加希望書を取り戻そうとする。
しかしそれよりも先に、隣に歩いて来た誰かが、ひったくるようにその用紙を柏木から奪った。
ゆるゆると視線を上げた先では諒が、床に倒れた柏木の横に転がるスリッパに足をつっこみながら、用紙に何かを書き入れている。
「ほら」
自分に向かってつき返されたその用紙を見て、私は心臓が止まるかと思った。
そこにはちょっと癖のある右肩上がりの諒の筆跡で、確かに『勝浦諒』と書きこまれていた。
「残念だったな。こいつのパートナーは、当日の持ち場の関係で、最初っから俺だって決まってるんだよ」
ドサリと鞄を机の上に投げ出しながら、諒が柏木に言った言葉にドキリとした。
(え? 今回は私と諒って、持ち場が違うよね……?)
けれど、問い質すように視線を向けた途端、諒にギンと大迫力で睨まれてしまったので、もう口を開けなくなった。
「だよな?」
真正面から見据えられたまま、念を押されればもう頷くしかない。
「うん。そう……確かにそうです!」
シュタッと右手を上げて、声高らかに宣言した私に、満足そうに頷いたあと、視線を逸らした諒が肩を震わせて笑っているように見えるのは気のせいだろうか。
「別に……全然、残念なんかじゃないけどね……」
しばらく呆気に取られていた柏木が、忌々しげに言いながら自分の席へと帰るのを見て、諒が小さな声で呟く。
「どうも絡んでくると思ったら、そういうことだったのかよ……まったく油断ならない……!」
「…………?」
その意味はよくわからないけど、思いがけず手にした諒のパートナーの権利に、私は心から感動していた。
(よかった! これで繭香に絶交されずに済む!)
詳しい経緯を語れば、これでOKにしてもらえるのかははなはだ疑問だが、ひとまず昨夜眠れないほど私を悩ませた問題の一つは解決した。
(可憐さんは、きっともう彼氏さんとなかなおりしただろうから、問題ないとして……)
私はこっそりと隣に座る横顔に視線を向ける。
「なんだよ?」
呼びかけたわけでもないのに、本当に諒は、毎回毎回ものすごい速さで反応を返してくる。
「な、なんでもない!」
助けてくれてありがとうと言えばいいだけなのに、心のどこかにやっぱり『諒の好きな人』のことがひっかかって、上手く言葉が出て来ない。
諒とパートナーになれて嬉しい反面、(本当に私と組んじゃってよかったのかな……?)という思いが、どうしても私の胸からは消えなかった。
諒がいくら呼んでも、走る速度を落とすことのなかった可憐さんの背中は、私の叫びに、ピタリと止まった。
「ちょっと待って! 可憐さん!」
ためらうようにしばらく右往左往したあと、クルッと回れ右をして、今度は私に向かって一目散に駆けて来る。
「琴美ちゃん!」
自分の胸に飛びこんで来たいい香りのする華奢な体を、私は慌てて抱き止めた。
「もう嫌だよ! 本当はこんなの嫌なの……!」
涙混じりに叫ばれた言葉こそ、可憐さんの本音だと思った。
だから、私は彼女の体をなおいっそうギュッと強く抱き締める。
「うん……私じゃあんまり役に立たないかもしれないけど、一生懸命考える……だから、可憐さんが今どんなことで悩んでるのか……教えて?」
「うん……」
心の中に溜め込んだものを、誰かに聞いてもらうだけで楽になることもある。
以前、貴人に教えてもらったその大事なことを、私はまだ忘れてはいなかった。
「最初は彼のほうからアプローチしてきたの。五つも年上なんて問題外だって思ってたから、私はさんざん無視したんだけど、そんなこと、全然気にしない人で……」
宝泉学園から一番近かったという理由で、私と可憐さんは諒の家にお邪魔することになった。
もちろん、初めて入った諒の部屋。
ドキドキする気持ちはあるけれど、今はとにかく可憐さんの話を聞くことが大切だ。
家に帰る早々「俺はちょっと……」といなくなった諒のことなんて無視で、私は可憐さんの話を真剣に聞いていた。
「あんまり毎日会いに来てくれてたものだから……ある日、姿が見えなかった時には、もう気になってしょうがなかった……計算なんかじゃなかったって、今でも信じてるけど……きっとあの時から、私のほうが彼にはまっちゃってたんだろうな……」
ポロリと涙を零しながらも、小さく笑ってみせる可憐さんの様子が胸に痛い。
口ではどんなに「もういい!」なんて言ったって、本当はその恋を手放したくなくて。
でも絶望的な状況の中じゃ、どうする事も出来なくて。
苦しくてたまらない思いなら、私はよく知っている。
もう半年以上も前のことなのに、ついこの間のことにように思い出すことができる。
「わかるよ、可憐さんの気持ち……でも、彼氏さんが本当に大切だったら、勝手に決めつけないで、ちゃんと話をしたほうがいいと思う。ひょっとしたら、何かの間違いかもしれないし、理由があるのかもしれないし……」
自分自身はまったくできなかったことを、人に勧めるのもどうかと思うが、あの時、そうできなかった自分を悔いているからこそ、ここは声を大にして叫びたい。
「そのほうが、こうやって逃げ回ってるよりはずっといいと思うよ……?」
可憐さんが、涙に濡れた長い睫毛の目を私に向けた。
きゅっとひき結んでいた桜色の唇を開いて、意を決したように私に答えるには――。
「いやよ」
てっきりいい答えが返ってくるものだとばかり思っていたので、思わずガクッと前のめりに倒れるところだった。
「い、いやよって……」
「嫌なの! 私のほうから確かめるのも、彰人さんの言い訳を聞くのも嫌!」
長い髪を左右に揺らしながら、小さな子供が駄々を捏ねるように、何度も首を横に振る可憐さんの様子に、呆気に取られてしまう。
「だからってこうやって逃げてばかりの自分も嫌! もうこのまま、彰人さんに会えなくなるのも嫌! 今こうしてる間にも、他の人が彼の傍にいるかもなんて、考えるだけで嫌なの!」
あまりの『嫌』の連発に、だんだん笑いがこみ上げてきた。
なんのことはない。
なんだかんだ言ったってやっぱり可憐さんは彼氏さんのことが大好きなのだ。
好きすぎて、いろんな感情を自分で持て余してしまっているのだろう。
(本当に……一回会っちゃえば、それで元の鞘に収まりそう……彼氏さんのほうだって、『あんなに惚れてるんだぞ!』って諒に言わせちゃうくらいなんだし……)
そう考えて、ふと首を捻った。
(うん? でもその言い方だと、まるで諒が可憐さんの彼氏さんのことを、よく知ってるみたいじゃない……?)
実際に耳にした時は気にも留めなかったセリフに、ひっかかりを感じる。
(あれ? ……なんでだろ?)
記憶力と想像力を駆使して、私がいつものように考えを巡らし始めた途端に、バタンと大きな音をさせて背後のドアが開いた。
ビックリしてふり返った先に立っていたのは、思いがけない人だった。
てっきり諒が返って来たのだとばかり思ったのに、諒よりはゆうに十五センチは背が高い男の人。
モデルばりの長身に、均整のとれた体。
キリッとした精悍な顔の、たいそうなイケメン。
(どっかで会ったような……誰だっけ?)
首を傾げた途端に、反対方向から可憐さんの悲鳴が聞こえた。
「彰人さん!」
それでようやく、いつも車に乗ってる横顔ばかりを見ていた、可憐さんの彼氏さんなんだと思い当る。
(まさにグッドタイミング! ……でもなんで? ここ、諒の家だよ?)
わけもわからず首を捻る私の目に、その時、彼氏さんの背後からひょっこりと顔を出す諒の姿が映った。
私に向かって人差し指を向け、こっちに来いとでもいうように急いで手招きする。
(え? なに?)
意味がよくわからずにポカンとしたら、すぐに諒はムッとしたような顔になった。
「いいから! はやく! こっちにこい!」
大きく口を開けて、口パクでそう伝えられたから、これ以上機嫌を損ねないうちに、私は急いで立ち上がった。
「やだ……琴美ちゃん、どこに行くの?」
焦って声を上げる可憐さんに心の中で手を合わせながら、急いでドアの向こうの廊下に向かう。
だって、「早くしろ!」と口パクで叫ぶ諒の形相は、今言うことを聞かないとあとでどんな目にあわされるのかと不安になるくらい、もの凄い怒りがこもっているのだ。
部屋に入ってすぐの所で立ち竦んでいた彰人さんと入れ替わるように、私がドアから廊下に出た途端、諒は私の腕を掴んで自分のほうへ引き寄せ、目の前のドアをガチャンと閉めた。
「諒!?」
「諒ちゃん!」
可憐さんと彰人さんの驚きの声なんて完全無視で、諒はドアに付けられた南京錠をガチリとロックすると、私の手を引き歩き始める。
「これでよし! 母さんの付けたお仕置き用の鍵が初めて俺の役に立った! あとは本人たちでなんとかしてくれ……まったくいつになっても、世話の焼ける……!」
私にはよくわからないセリフをブツブツと呟きながら、そのまま階段を下り、諒は私を一階のリビングへと連れて行った。
「しばらく時間がかかるだろうから、待ってるか? それとも先に帰る?」
尋ねられるままに、「えっと……待ってる……」と答えて、思わず自分の右手首を凝視してしまった。
だってさっきからずっと、諒は私の腕をぎゅっと掴んだままだ。
「あ、わりい……じゃあなんか飲むか?」
慌てて私の手を放してキッチンへと向かっていく諒の頬が、ほのかに赤い気がするのは、私の気のせいだろうか。
「うん。でもそれよりまず、何がどうなってるのか、説明してくれない?」
ちょっと強めの口調でそう言ったら、諒は私をふり返って、眉を寄せた。
「わかってるよ。そのへんに座ってろよ」
可憐さんの相談に乗るつもりでここに来たのに、思いがけず諒と二人きりで過ごすことになってしまった。
頭の片隅をかすめる「今日、諒を待っていた私の本来の目的」に、本当はたまらなくドキドキしていた。
「彰人兄ちゃんは、うちの近所の兄ちゃん。俺の中学の頃の家庭教師でもある。あんな顔してて、オクテで口下手で……だから可憐に一目ぼれした時は、最初のうち俺がいろいろ手伝ったんだよ……まあ……相手が自分と同じ中学生だとは、とても見えなかったからな……高校に行ったら同学年にいるんで、すげえビックリした……」
「そう……」
淡々とした私の返事は、どうやら諒のお気に召さなかったらしい。
ムッとしたような視線を向けられる。
「今のは笑うところだろ。なんだよ……お前、なんか反応おかしくないか……?」
「だって……」
言いかけて私は、諒に淹れてもらったコーヒーのカップに視線を落として、口をつぐんだ。
(てっきり諒は可憐さんのことを好きなんだと思ってた。だからあんなに彼女のことに一生懸命なんだろうって……それを気にして、泣いたり悩んだり……私のこの数日間はいったい何だったわけ?)
怒っていいのか、喜んでいいのか、なんとも複雑な心境で次の言葉が見つからない。
そんな私に向かって、諒は問いかける。
「だって、なんだよ?」
明らかにイライラしている様子に、ため息が出そうだった。
腐れ縁の上に、なぜか一緒に組まされることの多い諒には、私の感情が、実は一番ごまかしが利かない。
表情だけで心理状態を読み取ってしまう繭香以上に、全然騙されてくれないということを、私は知っていた。
(だめだ……このままじゃ、また喧嘩になる)
長年の経験からそう悟った私は、諒がこれ以上機嫌を損ねる前に、さっさと言ってしまうことにした。
でなければ、そのあとに続くべき、私の本来の目的なんて、口に出すことさえできなくなってしまう。
「私、諒は可憐さんを好きなんだと思ってたのよ……」
渋々言葉にした、私のとんでもない勘違いに、諒は呆気に取られた顔をした。
「は?」
無防備なその表情は、なんとも可愛くて、私がこっそりと胸を高鳴らせたのも束の間、すぐに諒は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「お前なあ! 何をどうやったらそうなるんだよ……ほんっとに、信じらんねえ!」
心底呆れ切ったような声に、悪いのは自分のほうだと重々わかっているのに、ついつい負けん気が出てきてしまう。
「だってそう思ったんだもん! 諒だって、あんなに一生懸命可憐さんのこと追いかけてたじゃない!」
「だからそれは彰人兄ちゃんのためだろ!」
「そんなこと、私が知るわけないでしょ! だから……!」
このままどんどん険悪になっていく前に、不毛な言い争いはもう終わりにしたい。
そう思っているのに、口も体も、まったく私のいうことをきいてくれない。
なのに――。
「ふざけるなよ! 俺が好きなのは、中学の頃からずっと……!」
諒がそう叫んだ途端、間近で諒と向き合ったまま、私の体の全機能が停止した。
(中学の頃から? ……嘘? ……嫌だ! ……誰?)
その先の言葉が聞きたくて。
聞きたくなくて。
私の両手は勝手に自分の両耳を塞いでしまっている。
それなのに、諒を見つめる両目には、ぶわっと涙が浮かんでくる。
――まるで絵に描いたように情緒不安定な女。
私のあまりに挙動不審な反応に、激高のあまり我を忘れかけていた諒が、ふと正気に返った。
「な……んだよ? ……どうした?」
ほんのついさっきまで怒ってたくせに、そんなに心配そうな顔で私を見ないでほしい。
まさに世紀の大失恋の直前だというのに、また不覚にもときめいてしまう。
「なんでもないわよ……ごめん、やっぱり私もう帰る!」
「えっ? おい! 待て……!」
焦る諒をふり切って、私は諒の家から逃げ出した。
その足でそのまま繭香の家に向かい、洗いざらいぶちまけて、大泣きして、諒のことはもう諦めようと思ったのに、それは実行できなかった。
私が鳴らした玄関のチャイムを聞いて応対に出て来てくれた繭香は、なんと私を玄関先で追い返した。
「約束をちゃんと守れ! 次は琴美が諒を誘う番だっただろう!」
「だからそれはもうできないの! 可憐さんのことは誤解だったけど、諒には中学の頃からの好きな人がいるんだって!」
繭香は心底呆れたような顔で私を見上げ、よく意味のわからない言葉を呟いた。
「そこまで聞いて、まだ……? よっぽど有り得ないって、はなっから頭の中で排除してるんだな……奴も気の毒に……」
「………………?」
首を傾げる私に向かって、今度は明らかに棘を含んだ言葉を放つ。
「とにかく! この用紙に署名を貰って来い! 成功するかしないかは問わないが……もし実行に移さなかったら、その時は、私はもう琴美とは縁を切る!」
「そんなあ!」
涙でぐしょぐしょに濡れながら、私は繭香が自分に押し付けた用紙に、目を落とした。
それは、全校生徒何百人分も私がこの手で仕分けした、交流会の参加希望書に他ならない。
「無理だよ!」
「無理じゃない! 騙されたと思ってやれ! じゃあな!」
泣いてすがる私を突き放して、ガチャリと玄関扉を閉じた繭香は、本当に鬼なんじゃないかと思った。
(なによお……友だちだったらこんな時は、慰めてくれるのが普通じゃない! 繭香の馬鹿ぁ!)
流石にそれを口に出して言うことはしなかったが、こうなったら明日は学校を休んでしまおうと、私は心に誓った。
しかし、内申書もパーフェクトの内容で大学受験に望もうと思っている私には、学校をズル休みしようなんて、どだい無理な話だった。
いつもの時間に家を出て、いつもどおりに登校した最前列の自分の席で、机につっ伏していると、背後から嫌な声がかかる。
「どうしたの近藤さん? やっぱり悩みごと?」
本当に、心から放っておいてほしいのに、柏木は今日はわざわざ自分の席を立って、私の前へと回りこんできた。
どうしたらいいのかと途方に暮れて、私が机の上に投げ出していた参加希望書をさっさと取り上げる。
「ちょっと! なにすんのよ!」
怒って顔を上げた私を、それはそれは気の毒そうな顔で見下ろした。
「なんだ……やっぱりパートナーがいなくて困ってるんじゃないか……」
嬉しそうに笑うと、制服の胸ポケットからおもむろにボールペンを取り出す。
「ちょ、ちょっと……? 何するつもり?」
嫌な予感に苛まれて、私が立ち上がった時にはもう遅かった。
私にはとうてい手の届かない高さで、柏木が勝手に用紙に何かを書きこもうとしている。
「しょうがないな……期末考査の直前だし、参加するつもりなんてなかったんだけど……ボランティアだと思って、ここは僕が……」
「どんな嫌がらせなのよ、それは!」
慌てて用紙を取り返そうとしても、女子の中でも前から数えたほうが早いくらいの私の身長じゃ、長身の柏木の手に握られた物なんて届くはずがない。
ぶざまにピョンピョン跳ねる私の姿を見て、柏木もその取り巻き連中も、面白そうに笑っている。
「返してよ! ちょっと!」
怒りに肩を震わせながら柏木に向かって突進する私の目の前で、意地悪な笑顔を浮かべた柏木の顔に、もの凄い勢いで校内履きのスリッパが命中した。
「うおっ!!」
スッパーンという音と共に体勢を崩した柏木の手から、私は交流会の参加希望書を取り戻そうとする。
しかしそれよりも先に、隣に歩いて来た誰かが、ひったくるようにその用紙を柏木から奪った。
ゆるゆると視線を上げた先では諒が、床に倒れた柏木の横に転がるスリッパに足をつっこみながら、用紙に何かを書き入れている。
「ほら」
自分に向かってつき返されたその用紙を見て、私は心臓が止まるかと思った。
そこにはちょっと癖のある右肩上がりの諒の筆跡で、確かに『勝浦諒』と書きこまれていた。
「残念だったな。こいつのパートナーは、当日の持ち場の関係で、最初っから俺だって決まってるんだよ」
ドサリと鞄を机の上に投げ出しながら、諒が柏木に言った言葉にドキリとした。
(え? 今回は私と諒って、持ち場が違うよね……?)
けれど、問い質すように視線を向けた途端、諒にギンと大迫力で睨まれてしまったので、もう口を開けなくなった。
「だよな?」
真正面から見据えられたまま、念を押されればもう頷くしかない。
「うん。そう……確かにそうです!」
シュタッと右手を上げて、声高らかに宣言した私に、満足そうに頷いたあと、視線を逸らした諒が肩を震わせて笑っているように見えるのは気のせいだろうか。
「別に……全然、残念なんかじゃないけどね……」
しばらく呆気に取られていた柏木が、忌々しげに言いながら自分の席へと帰るのを見て、諒が小さな声で呟く。
「どうも絡んでくると思ったら、そういうことだったのかよ……まったく油断ならない……!」
「…………?」
その意味はよくわからないけど、思いがけず手にした諒のパートナーの権利に、私は心から感動していた。
(よかった! これで繭香に絶交されずに済む!)
詳しい経緯を語れば、これでOKにしてもらえるのかははなはだ疑問だが、ひとまず昨夜眠れないほど私を悩ませた問題の一つは解決した。
(可憐さんは、きっともう彼氏さんとなかなおりしただろうから、問題ないとして……)
私はこっそりと隣に座る横顔に視線を向ける。
「なんだよ?」
呼びかけたわけでもないのに、本当に諒は、毎回毎回ものすごい速さで反応を返してくる。
「な、なんでもない!」
助けてくれてありがとうと言えばいいだけなのに、心のどこかにやっぱり『諒の好きな人』のことがひっかかって、上手く言葉が出て来ない。
諒とパートナーになれて嬉しい反面、(本当に私と組んじゃってよかったのかな……?)という思いが、どうしても私の胸からは消えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる