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夏の章
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赤と白のビニール紐で編まれたネットに入ったスイカをカヨがぽんぽんと叩いた。いかにも中身が詰まっているようないい音が響いて返ってくる。
「これは美味しいスイカだから。これ持ってきな」
「これ……ですか」
スイカの大きさに真珠は目を見開いた。スイカ割りに使ったら良いのではないかという、一抱えもある大きさだ。持つとずしりと重く、確かにこれはひとりでは食べきれないと納得した。むしろ、ふたりでも無理だろうと思ってしまう。
「遠慮すんな、うちももらったもんでさ、さてどうしようかと思ってたところなのよ。これがまた、食べきれないからって隣からこれの半分をもらってるもんでねえ。そしたらちょうどシロちゃんが見えたもんだから」
「それなら、そっちの半分ので……」
「ばあさまがひとりでこんなスイカ食いきれるわけないでしょ! 若者ふたりで頑張ってな!」
純粋な好意なのか押しつけなのかが、真珠には微妙に判断できない。結局断ることができず、確実に10キロ近くはあるだろうというスイカを持って真珠は篤宏の家へと向かった。
真珠が重い物を抱えて篤宏の家を訪れたのは2度目だ。泊めてもらっている礼として、村の駅で買った5キロの米を抱えて歩いてきたこともある。あの時は肩に担ぐと楽だったが、スイカはそうはいかなかった。ネットを持てば食い込みがきつく、抱えれば腕が痺れてくる。
きっと村の中でも農家をしている家なら、こんなものは車で運ぶのが当たり前なのだろう。
ようやく坂を登って篤宏の家に着いたときには、普段ではあり得ないほど息が上がっていた。早くスイカを降ろしたくて、勢いよくドアをノックするが返事はない。戸に手を掛けると、鍵が掛かっていた。篤宏は在宅しているなら鍵を掛けていないので、不在にしているということだった。
真珠はスイカを地面に置くと、玄関脇にある植木鉢を持ち上げた。そこには鈍い銀色の鍵が置かれている。
特に連絡も入れずに突然ここを訪れる真珠は、以前運悪く篤宏の不在中に来てしまい1時間ほど玄関前で待ったことがあった。
玄関前に座っている真珠を見た篤宏は大いに慌てていて、それから彼はここに植木鉢を置き、鍵を隠すようになったのだ。
篤宏がいないときに真珠が来ても家に入れるように。
いつ来るかわからない真珠のために、篤宏はそうして鍵を置いていく。君がいつ帰ってきてもいい家なんだよと、初めてこの村から帰るときと同じに彼は言った。
しかし、いざ鍵を開けて人気のない家に入ると、小さな子供になったような微妙な心細さがあった。誰もいない家に帰宅する子供だった時代が、思わぬ傷になって真珠をそうした気分にさせているのかもしれなかった。
もらったスイカを冷蔵庫に入れようとして、冷蔵庫の前まで持って行ってそこで真珠は絶望した。
「こんなでかいスイカ、入るわけない……」
念のため開けてみたが、やはり中のものを全て出して棚を抜き出しでもしないと入りそうに思えなかった。
ならば風呂場か。しかしスイカだけのためにあの風呂に水を貯めるのは……。
そこまで考えて、真珠はピンとひらめいた。スイカを持ち上げて外に出る。思いついたアイディアに心が躍って、重いスイカを抱えながらも自然と足取りが軽くなった。
「これは美味しいスイカだから。これ持ってきな」
「これ……ですか」
スイカの大きさに真珠は目を見開いた。スイカ割りに使ったら良いのではないかという、一抱えもある大きさだ。持つとずしりと重く、確かにこれはひとりでは食べきれないと納得した。むしろ、ふたりでも無理だろうと思ってしまう。
「遠慮すんな、うちももらったもんでさ、さてどうしようかと思ってたところなのよ。これがまた、食べきれないからって隣からこれの半分をもらってるもんでねえ。そしたらちょうどシロちゃんが見えたもんだから」
「それなら、そっちの半分ので……」
「ばあさまがひとりでこんなスイカ食いきれるわけないでしょ! 若者ふたりで頑張ってな!」
純粋な好意なのか押しつけなのかが、真珠には微妙に判断できない。結局断ることができず、確実に10キロ近くはあるだろうというスイカを持って真珠は篤宏の家へと向かった。
真珠が重い物を抱えて篤宏の家を訪れたのは2度目だ。泊めてもらっている礼として、村の駅で買った5キロの米を抱えて歩いてきたこともある。あの時は肩に担ぐと楽だったが、スイカはそうはいかなかった。ネットを持てば食い込みがきつく、抱えれば腕が痺れてくる。
きっと村の中でも農家をしている家なら、こんなものは車で運ぶのが当たり前なのだろう。
ようやく坂を登って篤宏の家に着いたときには、普段ではあり得ないほど息が上がっていた。早くスイカを降ろしたくて、勢いよくドアをノックするが返事はない。戸に手を掛けると、鍵が掛かっていた。篤宏は在宅しているなら鍵を掛けていないので、不在にしているということだった。
真珠はスイカを地面に置くと、玄関脇にある植木鉢を持ち上げた。そこには鈍い銀色の鍵が置かれている。
特に連絡も入れずに突然ここを訪れる真珠は、以前運悪く篤宏の不在中に来てしまい1時間ほど玄関前で待ったことがあった。
玄関前に座っている真珠を見た篤宏は大いに慌てていて、それから彼はここに植木鉢を置き、鍵を隠すようになったのだ。
篤宏がいないときに真珠が来ても家に入れるように。
いつ来るかわからない真珠のために、篤宏はそうして鍵を置いていく。君がいつ帰ってきてもいい家なんだよと、初めてこの村から帰るときと同じに彼は言った。
しかし、いざ鍵を開けて人気のない家に入ると、小さな子供になったような微妙な心細さがあった。誰もいない家に帰宅する子供だった時代が、思わぬ傷になって真珠をそうした気分にさせているのかもしれなかった。
もらったスイカを冷蔵庫に入れようとして、冷蔵庫の前まで持って行ってそこで真珠は絶望した。
「こんなでかいスイカ、入るわけない……」
念のため開けてみたが、やはり中のものを全て出して棚を抜き出しでもしないと入りそうに思えなかった。
ならば風呂場か。しかしスイカだけのためにあの風呂に水を貯めるのは……。
そこまで考えて、真珠はピンとひらめいた。スイカを持ち上げて外に出る。思いついたアイディアに心が躍って、重いスイカを抱えながらも自然と足取りが軽くなった。
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