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36 王都にて
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予定より遅れる事3日、私たちは王都フロードルの城門の前に立っていた。
「うわー、すっごいー」
中世ファンタジー慣れしている私ですら、ぽかんと口を開けて見てしまうその偉容。黒い石で作られた強固にして巨大な外壁は、遥か遠くまで続いている。
この中に、巨大な街があるんだ……。うわぁ、ゾクゾクする!
遠くからでも「王都が凄いぞ」というのは見えてわかっていたけども、実際に目の前にすると想像以上だった。
私たちが王都に入るのが遅れた理由はふたつある。
ひとつは、湊斗くんの蕎麦アレルギーの危険を避けようと、最短距離の街道ではなく西寄りに迂回をしたため。
もうひとつは、王都の手前で一日待機し、近隣のモンスターをできる限り片付けていたためだ。
だって、王都に入ったはいいけど、辺境騎士団の砦の時みたいに「周囲にモンスターが群がりました」なんてことになったら大変だもんね。
商人さんたちは昨日私たちと別れ、一足先に王都に入った。
城門ではレティシアさんは顔パス。騎士団もミカル団長からの手紙を見せて通行を許された。
問題は私たちなんだけども。
結果的に、何も問題がなかった……。オルミアのスパイとか紛れ込んでると思われたらまずいんじゃないかなと思ったけど、そもそもこの世界では戸籍の管理がほとんどできてないらしくて、領主や国王の発行した手形を見せるか、一定の通行料を払えば都市には入れるらしい。
そして、子供が大半である事と、ミカル団長から国王陛下への手紙、そしてレティシアさんの「彼女らの事については私が全面的に責任を持ちます」という鶴の一声であっさり通らせてもらう事ができた。
強いな、レティシアさん……。
クリスさんとレイモンドさんは、手紙を持って国王陛下の謁見の許可を取るために近衛騎士団の詰め所へと向かった。
他の騎士たちは、地方に駐屯している騎士団が王都に来たときに利用する、正規軍の宿舎へ。
私たちはレティシアさんに連れられて、本来彼女が所属している王都の教会へとやってきていた。
「まあ、レティシア様!」
教会に踏み込んだ途端、レティシアさんと同じ僧服に身を包んだ年嵩の女性が駆け寄ってきた。
「突然いなくなって心配したんですよ! 貴女は教会の柱である聖女であり、四大司教のおひとりであるということにもっと自覚を持って下さい!」
いきなりびしりとレティシアさんを叱っている! これは、これは強いぞ!?
「ご、ごめんなさい……。でもほら、途中の村から手紙は出したでしょう?」
「ええ、いつ帰ってくるかも書いていない、商人を送ってくれという要望だけ書いたお手紙を下さいましたね」
「……ごめんなさい」
凄い! 凄い物を見たのは今日2回目だ! あのレティシアさんが縮まっている!
私だけでなくて、女性の迫力に気圧されて子供たちも息を呑んで成り行きを見守っていた。
「……ともあれ、紹介します。ミカコさん、彼女はこの教会を任されている司祭で、アグネス。私の教育係でもあったの」
「ああ、なるほど、納得しました」
教育係か……そりゃ、頭が上がらないはずだ。
「アグネス、この女性はミカコ・モテギさん。そして、彼女の生徒である子供たち。彼女とこの子たちは、この世界の大いなる希望です。最初はクリスが危ないって飛び出していったのは事実よ。でも、その運命を変えてくれたのが彼女たち。私はこの人たちの力になるために辺境騎士団の砦まで行っていたんです」
――あれ、興味があるから、とか言ってなかったっけ。
物は言い様ってことかな。
お風呂とかめちゃくちゃ堪能してたけどな。
アグネスさんはレティシアさんの言葉を聞いて、眉を片側だけ器用に上げた。
「お話は奥で伺った方がいいでしょうね。子供たちは隣の養護院へ一旦移動してもらいましょう。これだけいると狭いかもしれませんが、この教会にいるよりは気が楽でしょうし」
「アグネスさん、お気遣いありがとうございます。みんな、隣の養護院で遊んでてくれるかな。椅子は出さないでね」
自分でも、「椅子は出さないでね」って変な注意だなーと思うけど、街中で知らない人の前であれをやられるといろいろ問題が起きすぎるよね。
年若い修道女がやってきて子供たちを引率して行ってくれ、私はレティシアさんと共にアグネスさんの私室に招かれた。
「お疲れでしょうし、お茶でもどうぞ」
アグネスさんがそう言って出してくれたのは、紅茶ではなくてハーブティーだった。
ちょっとあの村を思い出してしまったけども、司祭の私室にやばいハーブティーが常備してあるなんてそうそうあり得ないよね。
ちらりと横目でレティシアさんを窺ったけど、彼女は慣れた様子で香りを楽しみながらお茶を飲んでいる。
「ありがとうございます、いただきます」
口に含むと、ほんわりとしたリンゴの様な優しい香りが広がった。カモミールかな、なんかどっかで飲んだ覚えがある感じの味だ。優しい味の温かいお茶は、心をほっとさせる。
「何からお話ししたらいいか……」
私はそれだけ呟いてレティシアさんに「助けて」と視線で訴えた。それに対して「任せて」って頷きが返ってくる。
「アグネスも、ミカコさんと子供たちがこの辺りの人間ではない事に気付いていたわよね?」
「ええ、肌の色や顔立ちなどが違いますからね。人買いか、もしくは何かしらの理由があって遠くからこちらにやってきたのかと」
「ミカコさんと子供たちは、神の導きによりこの世界を訪れた、異なる世界の御方なのです」
「れっ!?」
レティシアさん、いきなりそれ言っちゃうー!?
私が焦っていると、レティシアさんは尚も言葉を続ける。それを聞きながら私は冷や汗をかいていた。
「ミカコさんと子供たちは、初めは何のために突然こちらの世界に喚ばれたのかもわからず、子供たちが神より与えられし力で魔物と戦い、日々を生き延びて来たのです。そんな厳しい日々の中でも、彼女たちは私の弟の命を救ってくれました」
「な、なんという……他の世界から神のお導きによって?」
アグネスさんが顔いっぱいに驚愕を貼り付けて私を見る。私はそれに対して素直に頷いた。
「はい、正直にお話ししても、とても信じていただけるような話ではないと思って、困っていたのですが」
美談は美談なんだけど、クリスさんたちを助けた下りが完璧に「作られた」美談。
確かにモンスターに襲われまくりの生活をしてたけど、村で子供たちが攫われそうになった以外はそんなに厳しい日々は送ってないんだよね……。
もういいや、レティシアさんに任せとこ。
私は困った顔を作ってお茶を飲んだ。
「クリスたちと同行して騎士団の砦にやってきた彼女たちに、私は出会いました。私が騎士団の砦へ急いだ理由も、千里眼で彼女たちの戦いを見たからです。
この方たちの力にならなければと思い、商人を呼ぶようにお願いした手紙を途中の村から送ったのです。そして、礼拝堂にて私の目の前で、彼女は神託を授かりました!
彼女たちの力をもって、この世界に増えすぎた魔物を倒すようにと、彼女たちは使命を授かったのです! 急激に増えた魔物の被害を、神も憂いていたのです!
ミカコさんが指揮をする子供たちの力は、辺境騎士団の砦で私も目の当たりにしてきました。あれはまさに、この世界を救う光!」
レティシアさんの声がやたらめったら盛り上がってる。手を胸の前で組んで立ち上がって熱弁振るってるし。
神託、神託かあ……。まあ、言葉としては間違ってないよね。レティシアさんも何ひとつ嘘は言ってないんだけど、教会の人向けの隠蔽と誇張が入ってるから私としては「なんか違う」感が拭えない。
「ところでレティシア様、何割本当の話です?」
「ひっどーい! 全部本当よ! ね、ミカコさん!」
ざっくりとアグネスさんが切り込んできた途端、レティシアさんの聖女モードが崩れた。
うん、凄い。ある意味凄い信頼関係。アグネスさんはレティシアさんを理解しきってるし、レティシアさんも即座に素に戻っている。
「あー、アグネスさんもレティシアさんの演技だってお分かりだったんですね……」
「当然です。何年このじゃじゃ馬聖女の教育係をしてきたんだとお思いですか」
「お察しします……。ですが、まあ、表現の仕方はともあれ、レティシアさんの仰った事は全て本当の事なのです。困った事に……。
私たちは元いた世界から突然こちらにやってきて、クリスさんたちを助け、騎士団の砦でレティシアさんと出会い、そして礼拝堂で確かに神から私たちのなすべき事を教えられました。それが『増えすぎてしまった魔物を退治する事』であるのも事実です。その、今回に限っては、レティシアさんのお話は全て本当の事です」
システム管理者を名乗る「神」がどんなだったのかは、言ってはいけないだろうな。
しかも、そいつのミスでできたバグで魔物が増えたとか。私だったら絶許案件だもん。
「私たちが元の世界に帰るための道筋は既に示されました。それは魔物をひたすら倒す事。それがこの世界の方にとっても助けになることだと信じています」
「ほんっと、凄いんだからー! これぞ神の御業って感じよ? さすがに目立ちすぎてここでは出せないのが辛いわね、あのお風呂」
「レティシア様はちょっと黙ってて下さい。――ミカコさん、お話はわかりました。にわかには信じがたいことですが、レティシア様もその目で奇跡を見ていることですし、私も信じましょう」
アグネスさんは、はしばみ色の目で私をじっと見つめてきた。皺を刻んだ顔はそれだけの長さを信仰に捧げてきたのだと理解できる穏やかさと強さを秘めていて、目はひたすらに澄んでいた。
「あなた方が神から力を授かり、それをこの世界の人々の安寧のために振るうのならば、教会としてもそれを支援するのが当然。レティシア様がミカコさんをここに連れてきたのはそういう事でしょう?」
「そう、そうよ! さすがアグネスね、話が早いわ」
「それで、総大司教猊下へ自分でお話を持って行くのが嫌なので、私に代わりに行かせようということですよね?」
「……はい、すみません。よろしくお願いします……」
総大司教という名詞が出てきた途端、レティシアさんがしおしおとうなだれた。レティシアさんにも苦手な人がいるんだなあ……。
「わかりました。一介の司祭とはいえ、私も聖女の教育と王都の一教会を任された人間。猊下は多忙を極める御方ですから、早急に面会をお願いしておきましょう」
「よろしくお願いします!」
私はうなだれてるレティシアさん以上に頭を下げた。
教会って基本的に国を跨いでるし情報ネットワークが凄いから、その後ろ盾がもらえれば凄く助かるぞ!
国王陛下の許可と、教会の後ろ盾、その両方があればこの世界での移動や異能力について困る事も減るだろう。
転移してきてから最初は散々だったけど、元の世界へ戻るためのいい風が吹いてきた!
「うわー、すっごいー」
中世ファンタジー慣れしている私ですら、ぽかんと口を開けて見てしまうその偉容。黒い石で作られた強固にして巨大な外壁は、遥か遠くまで続いている。
この中に、巨大な街があるんだ……。うわぁ、ゾクゾクする!
遠くからでも「王都が凄いぞ」というのは見えてわかっていたけども、実際に目の前にすると想像以上だった。
私たちが王都に入るのが遅れた理由はふたつある。
ひとつは、湊斗くんの蕎麦アレルギーの危険を避けようと、最短距離の街道ではなく西寄りに迂回をしたため。
もうひとつは、王都の手前で一日待機し、近隣のモンスターをできる限り片付けていたためだ。
だって、王都に入ったはいいけど、辺境騎士団の砦の時みたいに「周囲にモンスターが群がりました」なんてことになったら大変だもんね。
商人さんたちは昨日私たちと別れ、一足先に王都に入った。
城門ではレティシアさんは顔パス。騎士団もミカル団長からの手紙を見せて通行を許された。
問題は私たちなんだけども。
結果的に、何も問題がなかった……。オルミアのスパイとか紛れ込んでると思われたらまずいんじゃないかなと思ったけど、そもそもこの世界では戸籍の管理がほとんどできてないらしくて、領主や国王の発行した手形を見せるか、一定の通行料を払えば都市には入れるらしい。
そして、子供が大半である事と、ミカル団長から国王陛下への手紙、そしてレティシアさんの「彼女らの事については私が全面的に責任を持ちます」という鶴の一声であっさり通らせてもらう事ができた。
強いな、レティシアさん……。
クリスさんとレイモンドさんは、手紙を持って国王陛下の謁見の許可を取るために近衛騎士団の詰め所へと向かった。
他の騎士たちは、地方に駐屯している騎士団が王都に来たときに利用する、正規軍の宿舎へ。
私たちはレティシアさんに連れられて、本来彼女が所属している王都の教会へとやってきていた。
「まあ、レティシア様!」
教会に踏み込んだ途端、レティシアさんと同じ僧服に身を包んだ年嵩の女性が駆け寄ってきた。
「突然いなくなって心配したんですよ! 貴女は教会の柱である聖女であり、四大司教のおひとりであるということにもっと自覚を持って下さい!」
いきなりびしりとレティシアさんを叱っている! これは、これは強いぞ!?
「ご、ごめんなさい……。でもほら、途中の村から手紙は出したでしょう?」
「ええ、いつ帰ってくるかも書いていない、商人を送ってくれという要望だけ書いたお手紙を下さいましたね」
「……ごめんなさい」
凄い! 凄い物を見たのは今日2回目だ! あのレティシアさんが縮まっている!
私だけでなくて、女性の迫力に気圧されて子供たちも息を呑んで成り行きを見守っていた。
「……ともあれ、紹介します。ミカコさん、彼女はこの教会を任されている司祭で、アグネス。私の教育係でもあったの」
「ああ、なるほど、納得しました」
教育係か……そりゃ、頭が上がらないはずだ。
「アグネス、この女性はミカコ・モテギさん。そして、彼女の生徒である子供たち。彼女とこの子たちは、この世界の大いなる希望です。最初はクリスが危ないって飛び出していったのは事実よ。でも、その運命を変えてくれたのが彼女たち。私はこの人たちの力になるために辺境騎士団の砦まで行っていたんです」
――あれ、興味があるから、とか言ってなかったっけ。
物は言い様ってことかな。
お風呂とかめちゃくちゃ堪能してたけどな。
アグネスさんはレティシアさんの言葉を聞いて、眉を片側だけ器用に上げた。
「お話は奥で伺った方がいいでしょうね。子供たちは隣の養護院へ一旦移動してもらいましょう。これだけいると狭いかもしれませんが、この教会にいるよりは気が楽でしょうし」
「アグネスさん、お気遣いありがとうございます。みんな、隣の養護院で遊んでてくれるかな。椅子は出さないでね」
自分でも、「椅子は出さないでね」って変な注意だなーと思うけど、街中で知らない人の前であれをやられるといろいろ問題が起きすぎるよね。
年若い修道女がやってきて子供たちを引率して行ってくれ、私はレティシアさんと共にアグネスさんの私室に招かれた。
「お疲れでしょうし、お茶でもどうぞ」
アグネスさんがそう言って出してくれたのは、紅茶ではなくてハーブティーだった。
ちょっとあの村を思い出してしまったけども、司祭の私室にやばいハーブティーが常備してあるなんてそうそうあり得ないよね。
ちらりと横目でレティシアさんを窺ったけど、彼女は慣れた様子で香りを楽しみながらお茶を飲んでいる。
「ありがとうございます、いただきます」
口に含むと、ほんわりとしたリンゴの様な優しい香りが広がった。カモミールかな、なんかどっかで飲んだ覚えがある感じの味だ。優しい味の温かいお茶は、心をほっとさせる。
「何からお話ししたらいいか……」
私はそれだけ呟いてレティシアさんに「助けて」と視線で訴えた。それに対して「任せて」って頷きが返ってくる。
「アグネスも、ミカコさんと子供たちがこの辺りの人間ではない事に気付いていたわよね?」
「ええ、肌の色や顔立ちなどが違いますからね。人買いか、もしくは何かしらの理由があって遠くからこちらにやってきたのかと」
「ミカコさんと子供たちは、神の導きによりこの世界を訪れた、異なる世界の御方なのです」
「れっ!?」
レティシアさん、いきなりそれ言っちゃうー!?
私が焦っていると、レティシアさんは尚も言葉を続ける。それを聞きながら私は冷や汗をかいていた。
「ミカコさんと子供たちは、初めは何のために突然こちらの世界に喚ばれたのかもわからず、子供たちが神より与えられし力で魔物と戦い、日々を生き延びて来たのです。そんな厳しい日々の中でも、彼女たちは私の弟の命を救ってくれました」
「な、なんという……他の世界から神のお導きによって?」
アグネスさんが顔いっぱいに驚愕を貼り付けて私を見る。私はそれに対して素直に頷いた。
「はい、正直にお話ししても、とても信じていただけるような話ではないと思って、困っていたのですが」
美談は美談なんだけど、クリスさんたちを助けた下りが完璧に「作られた」美談。
確かにモンスターに襲われまくりの生活をしてたけど、村で子供たちが攫われそうになった以外はそんなに厳しい日々は送ってないんだよね……。
もういいや、レティシアさんに任せとこ。
私は困った顔を作ってお茶を飲んだ。
「クリスたちと同行して騎士団の砦にやってきた彼女たちに、私は出会いました。私が騎士団の砦へ急いだ理由も、千里眼で彼女たちの戦いを見たからです。
この方たちの力にならなければと思い、商人を呼ぶようにお願いした手紙を途中の村から送ったのです。そして、礼拝堂にて私の目の前で、彼女は神託を授かりました!
彼女たちの力をもって、この世界に増えすぎた魔物を倒すようにと、彼女たちは使命を授かったのです! 急激に増えた魔物の被害を、神も憂いていたのです!
ミカコさんが指揮をする子供たちの力は、辺境騎士団の砦で私も目の当たりにしてきました。あれはまさに、この世界を救う光!」
レティシアさんの声がやたらめったら盛り上がってる。手を胸の前で組んで立ち上がって熱弁振るってるし。
神託、神託かあ……。まあ、言葉としては間違ってないよね。レティシアさんも何ひとつ嘘は言ってないんだけど、教会の人向けの隠蔽と誇張が入ってるから私としては「なんか違う」感が拭えない。
「ところでレティシア様、何割本当の話です?」
「ひっどーい! 全部本当よ! ね、ミカコさん!」
ざっくりとアグネスさんが切り込んできた途端、レティシアさんの聖女モードが崩れた。
うん、凄い。ある意味凄い信頼関係。アグネスさんはレティシアさんを理解しきってるし、レティシアさんも即座に素に戻っている。
「あー、アグネスさんもレティシアさんの演技だってお分かりだったんですね……」
「当然です。何年このじゃじゃ馬聖女の教育係をしてきたんだとお思いですか」
「お察しします……。ですが、まあ、表現の仕方はともあれ、レティシアさんの仰った事は全て本当の事なのです。困った事に……。
私たちは元いた世界から突然こちらにやってきて、クリスさんたちを助け、騎士団の砦でレティシアさんと出会い、そして礼拝堂で確かに神から私たちのなすべき事を教えられました。それが『増えすぎてしまった魔物を退治する事』であるのも事実です。その、今回に限っては、レティシアさんのお話は全て本当の事です」
システム管理者を名乗る「神」がどんなだったのかは、言ってはいけないだろうな。
しかも、そいつのミスでできたバグで魔物が増えたとか。私だったら絶許案件だもん。
「私たちが元の世界に帰るための道筋は既に示されました。それは魔物をひたすら倒す事。それがこの世界の方にとっても助けになることだと信じています」
「ほんっと、凄いんだからー! これぞ神の御業って感じよ? さすがに目立ちすぎてここでは出せないのが辛いわね、あのお風呂」
「レティシア様はちょっと黙ってて下さい。――ミカコさん、お話はわかりました。にわかには信じがたいことですが、レティシア様もその目で奇跡を見ていることですし、私も信じましょう」
アグネスさんは、はしばみ色の目で私をじっと見つめてきた。皺を刻んだ顔はそれだけの長さを信仰に捧げてきたのだと理解できる穏やかさと強さを秘めていて、目はひたすらに澄んでいた。
「あなた方が神から力を授かり、それをこの世界の人々の安寧のために振るうのならば、教会としてもそれを支援するのが当然。レティシア様がミカコさんをここに連れてきたのはそういう事でしょう?」
「そう、そうよ! さすがアグネスね、話が早いわ」
「それで、総大司教猊下へ自分でお話を持って行くのが嫌なので、私に代わりに行かせようということですよね?」
「……はい、すみません。よろしくお願いします……」
総大司教という名詞が出てきた途端、レティシアさんがしおしおとうなだれた。レティシアさんにも苦手な人がいるんだなあ……。
「わかりました。一介の司祭とはいえ、私も聖女の教育と王都の一教会を任された人間。猊下は多忙を極める御方ですから、早急に面会をお願いしておきましょう」
「よろしくお願いします!」
私はうなだれてるレティシアさん以上に頭を下げた。
教会って基本的に国を跨いでるし情報ネットワークが凄いから、その後ろ盾がもらえれば凄く助かるぞ!
国王陛下の許可と、教会の後ろ盾、その両方があればこの世界での移動や異能力について困る事も減るだろう。
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