最強の1年1組、理不尽スキル「椅子召喚」で異世界無双する。微妙なスキルしか無い担任の私は「気持ち悪っ!」連発しながら子供たちを守り抜きます!

加藤伊織

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40 危ない領主

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 私たちはライリーさんに連れられて、ソントンの街に入っていった。
 もちろん、開放された門の前に椅子結界を置くことも忘れない。
 八門遁甲の椅子だと、最悪中で人とモンスターが一緒にぐるぐるしちゃうからね……。

「大きな街ですね」

 フロードルほどではないけども、ソントンは結構大きい方の街じゃないだろうか。
 そうでなければ、奪い合いにならないか。

「ここから半日ほど西に向かったところにあるマーズルとほぼ規模は一緒です。ソントンとマーズルはその歴史から双子都市と呼ばれ、フロードルとオルミアの間の争いに何度も巻き込まれてきました。
 その度に城壁が強化され、民の心を離さぬように為政の手厚い施策が入り、結果賑わった街なのですよ」

 ライリーさんは丁寧に説明してくれたけど、なんというか、「ケッ、王族なんて奴らは馬鹿ばっかりしやがる」って思ってるのが丸わかりの口調だった。
 ……まあ、ね。仕方ないな、それは。他にもっと手厚くしなきゃいけないところがあるはずと思う気持ちもわかるし、最前線にあたる都市に力を注がなければいけないのもわかる。

 わかるから、嫌なんだよなー。

「今はどこに向かっているんですか? 教会ですか?」

 子供たちの列を率いて歩く私たちに、すれ違う住民から感謝の言葉が雨あられと降ってくる。その度に私は頭を下げながら、ライリーさんについて歩いていた。
 
「領主であられるハーストン伯の館です。オルミア国王からこの都市を任されているだけあって、なかなか有能な人物ですよ」
「正直に聞きます。野心的にはどんな人物でしょうか」

 有能は有能でも、リチャード3世系の野心を持っていられると困る!
 私の質問に、ライリーさんは足を止めて私を振り向く。
 彼は聖職者っぽくないニヒルな笑みを湛えて、クッと喉の奥を鳴らした。
 
「なるほど、『あの』聖女レティシア様が殊更に気に掛ける理由がわかった気がします。あなたは危うい。しかも危ういとわかっていてやっているからたちが悪いですね。
 ハーストン伯は民を常に気に掛ける、領主としては実に良心的な人物ですよ。そうですね、私ですら、彼が存命のうちは戦が起こらないことを祈るくらいです」
「安心しました。ハーストン伯のこともですが、ライリーさんの事も」
「私の事で安心、ですか?」

 若干胡乱げな顔をしている彼に、私は笑って見せた。ニヒルぶりやがって、ちゃんと聖職者じゃないの!

「はい。ライリーさんは頭の回る人物ですね。他の人が馬鹿に見えることが多いんでしょう。皮肉屋で――でも、善人です。聖職者らしくないと思った瞬間もありましたが、あなたはレティシアさんと同じく、神を信じて祈りを捧げる人です」

 パッとライリーさんは嫌そうな顔をした。お、懐かしいな。これ、レイモンドさんに散々された表情だ。
 
「仮にも司教ですからね。しかし、どうなっているんですか、あなたの頭の中は。遠慮がないのは置いておいても、観察眼がおかしい」
「後ろ見て下さいよ。6歳と7歳が34人ですよ? 慎重に観察しながらその子なりの特性を見極めていかないといけないんですよ? しかも私、この子たちに出会ってからまだ半年くらいなんです」
「……なるほど」

 振り返ると、子供たちはちゃんと後ろに付いてきていた。いつもの「隣の子と必ず一緒にいてね」だから、勝手な行動をしたら相方の報告が入る。お喋りはしてるけど、以前に比べて格段にちゃんと歩いてる。
 もしかしてこれも私の指揮・指導スキルのおかげなのかな?
 システム管理者は元の世界とはシステムが違うから、こっちでいくら能力が上がっても帰ったら関係ないとか言ってたけど、スキルだけでもいいから持ち帰りたい!


 そして、目抜き通りと覚しき大通りを抜け、街の中心にある大きな屋敷に私たちは案内された。
 あらかじめ、おもてなしは不要と断っておく。何か混入してると嫌だし、食料はこちらの世界では私たちの世界よりもずっと大事なもの。
 私たちはモンスターを倒せばいくらでも供給できるから、気を遣ってもらう必要がないのだ。


「やあやあやあ! 貴女が噂のミカコさんですか! それと、おおおおお、子供がこんなに! わはははは、可愛いなあ! 実に、いい! 子供が元気にしているのはとてもいい!」

 子供たちと別室にされるのかなと思ったら、ホールのような場所に40歳くらいの男性が降りてきて、子供大好きな大型犬みたいな顔をして足早に歩み寄ってきた。

「ハーストン伯です」
「この人が!?」

 ライリーさんに耳打ちされて若干驚いた。
 こう、イメージとしては初老の落ち着いた男性とかそういうのを予想してたから。
 まさか、ゴールデンレトリバー系アラフォーが来るとは思わないでしょ!

「立ったままで失礼。もてなし不要と伺ったので、こちらも簡潔にお話をさせてもらおうと思いましてな。キーラン・ハーストンです。お初にお目に掛かる。
 さて、総大司教猊下と聖女様の手紙によれば、異世界からの来訪者とのこと。にわかには信じがたいですが、『椅子の奇跡』を目の当たりにしては信じるしかあるまい。まあ、簡単に言うと私の身分は気にせず、忌憚なき意見を交換したいということです」

 ……一気にまともなことを喋ったな、と思ったら、ハーストン伯は真澄ますみちゃんの前にしゃがみ込んで「可愛いねー。お年いくつ? お菓子食べる?」とか訊いてるよ! 不審者か!

「ハーストン伯、おやめ下さい。人から勝手にものをもらわないようにと教えておりますので。食べたものによって具合が悪くなる子供もいます。例えば、蕎麦粉が近くにあるだけで呼吸が苦しくなってしまう子供とか」
「おお、すまない。私は子供が大好きでね。……子供は6人いたが、その内3人は3歳になる前に死んでしまったんですよ。成人したのはふたりだけ。なので、元気そうな子供を見るとつい嬉しくなってしまうのです」

 私は思わず言葉を失ってしまった。そうだよね、魔法があってもほとんど役に立たないような世界なら、私たちの世界の中世とあんまり変わらないと思っていいはずだ。
 医療が発展するまでは、子供は物凄く死にやすい。平均寿命をガクンと押し下げるくらい、乳幼児の死亡率は高い。

「いや、貴女にそんな顔をさせたかったわけではない。子供を失うのは何も私に限った話ではない。それに戦争が起きれば子供だけではなく大人も大勢死ぬ。
 フロードルが常に我ら双子都市を狙うのは痛いほどわかるのだ。なにせあの国は国土の大半を大陸北部が占めていて、土地が痩せている場所が多い。貧しさとも戦いながら、南下の機会を常に窺っている。南は肥沃な土地が多いのでね。
 悲しい話だが、私が彼の国の王だったとしても、民を思えば思うほど、戦争を起こしたいだろう。双子都市を陥とし、それを足がかりに豊かな土地を増やす。それが、ひいては長い目で見て国の民全てを豊かにすることなのだから」

 真澄ちゃんの頭を撫でながら、ハーストン伯はそんなシリアスな事情を話す。悲しそうな寂しそうな笑顔がその顔に浮かんでいた。
 そうか、私はどうしても平民だから考えられなかったけど、為政者としてみたらそういう事情があるのか……。あの貧しい村に手を差し伸べるには、国としての余力が足りない。だから、手っ取り早い戦力を手に入れたからには戦争を起こす。

 なんてきつい話なんだ。
 
「ああ、だからそんな顔をしないで欲しい。今は魔物被害が増大して、南へ行くほど強力な魔物が出てくるせいで、逆にオルミアは軍事力に力を傾けざるを得ず、フロードルの軍事的脅威はありません。簡単に言うと、フロードル軍ではまともに戦ってオルミア軍に勝てない。魔物被害が収まっても、しばらくこの状況は続くでしょう。
 なので、貴女方には思う存分魔物を倒していただきたい」
「はい、それです! そのお話をしたかったんです!」

 話が急に本題に入って、私は思わず元気よく返事をしてしまった。
 さっき聞いた限り、マーズルとの距離はそれほどではないから、私の希望としてはこの2都市の間を行き来してモンスターを倒しまくりたい。

「簡潔に言います。ソントン・マーズル両都市からの支援はいりません。ただ、この辺りをうろうろして魔物を倒している私たちに危害を加えないでいただければそれだけで充分です。
 私たちが魔物を倒すと、神の御加護によりその魔物の『存在するための力』が、食べ物や飲み物になって手に入ります。ただ、それは私たちが食べることで魔物の『存在するための力』を消すことになるため、都市の人たちに分け与えると魔物被害の解決が遅くなるのです」

 あのシステム管理者の語ったことを、言い方を変えて説明する。ライリーさんとハーストン伯は私の説明を聞いて明らかに驚いていた。

「私たちが元の世界に帰るためには、とにかくたくさんの魔物を倒さねばならないのです。でも、魔物が多い南にいきなり行くには戦力的に怖いので、できれば力を付けるためにもこの辺りで森からやってくる魔物たちを倒したいと思っています。実際、フロードル領では見かけなかったような強い魔物もいましたし」
「よし、わかった。マーズルの領主にそのように伝えておこう。ただ魔物を倒してもらうだけでも、我々にとって充分利がある。
 ライリー師の策で、貴女方はこの都市にとっては救い主と思われておりますしな。手を出したら街から追放されるくらいのことは想像付くだろう」
「話が早い! 助かります!」

 私が頭を下げると、ハーストン伯は立ち上がって私に向かって笑いかけた。

「なに、国の利益などが絡むから面倒なのであって、魔物に困る都市とそれを倒せる力として考えれば単純なのだ。支援は無用と言われたが、何か困ったことがあったらいつでもここに来て言いなさい。――私は純粋に、この子供らが無事に親の元に帰れる事を祈っているよ」

 そう言って子供たちに向けたハーストン伯の目はとても優しくて。
 この人は本当に子供が好きなんだなあってよくわかる。
 ……速攻桂太郎けいたろうくんを抱っこしたりしなければ、心底信用できるんだけどなあ……。
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