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控え室
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「なんだか罪人扱いとも違うような気がしない?」
「お前は肝が座ってて良いなぁ──アリサに本当に似てるなぁ」
あたしの隣でハゲ親父はしきりと汗を拭いた。
うわー。テカテカしてる……。
「母さん似で本当に良かったわ」
脂ギッシュなオヤジの横顔を見ながらあたしは大きく息を吐き出した。
城の騎士があたしたち親子を急な呼び出しで引っ立てて来たあの後──。
いつもの王座に続く控えの間に案内され、言われるがまま待機してそこで優雅にお茶をいただいていたりするのだった。
むろん、言うまでもないことだがあたしに縄はかけられていないし、逃亡防止に見張りの兵がたてられているわけでもない。
「いつもの王様の気まぐれかもね?」
言って私は用意されていたお茶請けの焼菓子に手を伸ばした。
朝御飯を食べ損ねたのだ。空腹でお腹がぐうぐう言っている。
「ヴィッセル家の娘に毒を盛ったと言われてるのによく食えるな──」
「だーかーら! あたしは知らないってば」
あたしはパタパタと左手を振った。
「だいたい、昨日キースに婚約破棄してくれって言われたばかりだし」
「……はぁ!?」
あたしの言葉に驚愕のあまり、あんぐりと口を開けるハゲオヤジ。
「なぜ、そんな大事なことを先に言わんのだ!!」
「あー、ごめん。結構どうでも良すぎて忘れてたわ……」
本当に忘れてたんだから笑えるわ。うん。
「それで──お前。まさかあのキース王子にはめられたんじゃ……」
ポツリとオヤジは呟いた。
「イヤイヤイヤ。キースにそんな脳ミソはないでしょ。誰かが糸を引いているなら別だけど──」
「だな」
呆然としたまま、オヤジは頷いた。
「では、キース王子を引き受けるかわりに我がクローディス侯爵家が拝領したあの町はお返しせねばならぬのか……それではまた財政が逼迫するな。来月から酒税をあげて通行料も値上げして──」
どうやら頭の中のソロバンを弾くのに忙しくなったハゲオヤジ。
心配なのはやっぱりそこ?
母さんが亡くなってからは財テクにしか興味がなくなり、身に構わなくなったらハゲ散らかしてしまったけど、若い頃はそこそこ踏めたイケメンだった、らしいのに残念なことよねぇ──。
その時。
突然、バン! と扉が開いたかと思うと、黒ずくめの長身の執事がつかつかっとあたしのそばに歩み寄ってきたのだった。
「お前は肝が座ってて良いなぁ──アリサに本当に似てるなぁ」
あたしの隣でハゲ親父はしきりと汗を拭いた。
うわー。テカテカしてる……。
「母さん似で本当に良かったわ」
脂ギッシュなオヤジの横顔を見ながらあたしは大きく息を吐き出した。
城の騎士があたしたち親子を急な呼び出しで引っ立てて来たあの後──。
いつもの王座に続く控えの間に案内され、言われるがまま待機してそこで優雅にお茶をいただいていたりするのだった。
むろん、言うまでもないことだがあたしに縄はかけられていないし、逃亡防止に見張りの兵がたてられているわけでもない。
「いつもの王様の気まぐれかもね?」
言って私は用意されていたお茶請けの焼菓子に手を伸ばした。
朝御飯を食べ損ねたのだ。空腹でお腹がぐうぐう言っている。
「ヴィッセル家の娘に毒を盛ったと言われてるのによく食えるな──」
「だーかーら! あたしは知らないってば」
あたしはパタパタと左手を振った。
「だいたい、昨日キースに婚約破棄してくれって言われたばかりだし」
「……はぁ!?」
あたしの言葉に驚愕のあまり、あんぐりと口を開けるハゲオヤジ。
「なぜ、そんな大事なことを先に言わんのだ!!」
「あー、ごめん。結構どうでも良すぎて忘れてたわ……」
本当に忘れてたんだから笑えるわ。うん。
「それで──お前。まさかあのキース王子にはめられたんじゃ……」
ポツリとオヤジは呟いた。
「イヤイヤイヤ。キースにそんな脳ミソはないでしょ。誰かが糸を引いているなら別だけど──」
「だな」
呆然としたまま、オヤジは頷いた。
「では、キース王子を引き受けるかわりに我がクローディス侯爵家が拝領したあの町はお返しせねばならぬのか……それではまた財政が逼迫するな。来月から酒税をあげて通行料も値上げして──」
どうやら頭の中のソロバンを弾くのに忙しくなったハゲオヤジ。
心配なのはやっぱりそこ?
母さんが亡くなってからは財テクにしか興味がなくなり、身に構わなくなったらハゲ散らかしてしまったけど、若い頃はそこそこ踏めたイケメンだった、らしいのに残念なことよねぇ──。
その時。
突然、バン! と扉が開いたかと思うと、黒ずくめの長身の執事がつかつかっとあたしのそばに歩み寄ってきたのだった。
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