エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

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手続きの間ユウリは手続きをシュウに任せて、ギルドのバーに足を進めた。

「アン、ガムシュエールほしい」

ユウリがそういうとカウンターの大男が振り返る。
その大男は律儀に繊細なレースの制服を着て、長くなった髪を三つ編みにしていた。
この制服はもともとここにいたバー担当の人が作ったもので消して彼の趣味ではないらしい。

ギルドに作られたバーは、こげ茶色の繊細なアンティークで几帳面にそろえられていた。だからなのか、薄暗いランプとカウンターの繊細な装飾がされている机に座るギルドの者たちは、騒がしいギルドの一角にしては静かに過ごしていた。

そんな男たちをユウリは横目で見ながら定位置になりつつある席に座った。
こんなところで静かにしたってお前らの煩さは変わるわけはないのだ。

顔はいたって普通のおじさん。アンこと、アンジェルはそのカウンターのボスである。
小さいころにアンジェルに年齢を聞いたことがあるが、いつ聞いても何度聞いても20で止まっている。
ユウリは今年18歳、そう考えると年齢は嘘であることは間違いないだろう。
アンジェルの本当の年齢はマスターしか知らず、たまに制服から覗く筋肉は男のあこがれだ。

筋肉があまりつかない体質のユウリはアンジェルのことを羨ましく思うが、アンジェルは逆にユウリの体質がうらやましかったりする。
アンジェルはこちらに気づくと大きな声をあげた。

「ユウリか!こんな昼間に座るなんて珍しいこともあるんだな。それにしても…お前は時にはお酒でも飲め!」

大きな笑い声で静かな空間を一気に破壊するとお決まりのパターンでユウリに酒を勧めた。

「…いやだ。昼間から騒ぐのは疲れる。」

アンは背中を力強くたたいて酒瓶をドンと目の前に置いた。
まだ朝だっていうのに酒を煽るのもユウリはあまり好まない。

「そんなことを言って、酔っぱらったことなんて一度もないじゃないか!お前が酔っ払ったところが一生に一度は見てみたいもんだ。」

ガハハハハとありがちな笑い声にユウリは絡まれてなるものかと冷めた目を送る。

「————そういえば、ようやくパーティーを組んだんだな。あの男前、いい筋肉だな…、俺とは違ういい筋肉…後で俺にどう鍛えているか教えてくれるように頼んでおいてくれないか?」

喉を鳴らして話を変えるとそんなことを言う。

目線をそちらに向けると、シュウの目の前にいるギルド職員さんは心なしか少し顔が赤らんでいて、なんだか慌てている。いつもはそんな風に慌てたりすることのない人だから、珍しい。

でも、確かにあんな顔のやつが目の前に座ってきたら、そりゃそうなるよなとユウリは受付に同情した。


アンジェルが言うように、シュウの体つきは確かに引き締まっていて「余分な肉はありません」みたいな体つきだ。
たしかにいい筋肉しているよな、でもな、「でも」なんだよな、とガムシャエールを口に含める。
ユウリはもう一度視線を戻すと今度はアンジェルの筋肉に目を向けた。
———目の前にいるアンジェルはそれよりも屈強なのだ。アンジェルは上腕三頭筋、前腕屈筋、いや大胸筋か…もうすべてがいい筋肉過ぎて比べてシュウがかすんで見えるくらいの差だ。

「…確かに、な」
(俺だって鍛えているはずなのに。なにかがおかしい。…冒険者には筋肉つく人しかいないのか…?)

ユウリはシュウ、アンそして自分の筋肉を見比べた。
力はあるはずなのにこの二人に並ぶと自分でもわかるくらいに華奢に見える。
その現実にユウリが眉間にしわを寄せると隣の席にドカッと人が座り込んだ。

「そういえば、お前今度は牛だって!?」

静かな空間に大きな声が響く。そういって勢いよくこちらの席に詰め寄ったのは、トワーズというユウリと年の近い男だった。同じ時期にギルドに入った。人柄のせいか、今ではかなりの情報通で一部では簡単な情報屋を営んでいるらしい。

「トワ、勢いよく来るな」

「悪い悪い。今さっきあそこのやつと話しているのを聞いていたんだ。最近はずいぶん優しい仕事を受けているんだな?」

そういって、トワーズは顔をシュウのほうにむける。「妙に雰囲気のあるやつだな。」と一言漏らした。

(雰囲気って何の雰囲気を感じ取ったんだ。…色気か?)

「でもよ、剣豪と言われて五本の指に数えられるユウリが今さら子供が受けるようなするんだぞ?面白いと思わないでどうすんだよ」

「なんでもう知ってんだ…今さっき決めたんだ。それに俺は五本の指に入らない」

「いや三本じゃないか?」

「ああ、そうだな。三本かもな。」

こっちの話も聞かないで、二人はそういってうんうんと頭を縦に振った。

「ってそこじゃなかった!」

大きく頭を揺らし大げさに反応する。

(そこじゃねぇってじゃあどこだよ。おまえが話ふったくせに。本当に行動がうるさいやつだな)

ユウリは横目でそう訴えていると突然トワーズがさらに大きな動きでこちらを向いた。
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