エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

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シュウとあったあの日から二週間もたたないうちに、ユウリの足はすっかり良くなった。
完治しないうちから無理やり動かして慣れさせればどうってことないのだ。

「ユウリ、昨日の依頼は少しハードだったからゆっくり稼げるやつ探そうぜ」

シュウが疲れたような顔をしてこっちを見た。

「…ほんとかよ、うそついてんじゃねーぞ、お前が楽しそうに大蛇ファシーの首をたたき切ってるの、俺は見た」

「———それは気のせいだ、俺はそんなことをした記憶はない、」

クックっとシュウは笑い声をあげた。

(…嘘つけ、昨日も絶好調だったじゃないか。俺はお前をよーく見ていたから知っている。)

昨日と言えば、報酬良さに惹かれて復帰記念がてら、狼の森に出没するファシーという大蛇に羽が生えたような大型の怪物を倒しに出かけた。シュウはどうやら魔法だけじゃなくて剣術も心得ていて、そこら辺の棒きれでブッチブッチ切っていた。

ファシーなんてここらへんじゃダンジョンでしか現れない。
どうせ誰かがダンジョンから連れて帰ってきたに違いない。

ファシーはダンジョンではそれなりに見かける魔物だが、倒すならBランクの冒険者がせめて4人ぐらいは欲しいところで、通りすがりの行商人に襲い掛かることもあるから報酬はもちろん弾んでくれる。たいていの人は静かに逃げるか協力して倒すかといったところだ。

————と、昨日を振り返っているそのさなかに隣でずっと疲れたアピールをするシュウに眉を寄せた。
実際のところ、机での作業よりも走り回る方が楽しいから、ユウリとしては走り回るような以来やりたいというのが本音だ。しかし見たところ依頼ボードには昨日みたいに緊急の依頼はなさそうで、こんなに赤ちゃん返り、というにはいささか何かが違う気がするが、している相棒に少し気持ちが揺れた。

わざわざ大変な仕事に手を出す必要もないかとおもって、おもむろに報酬が良い仕事を手に取った。

「じゃあこの依頼、どう」
———仕事の割に報酬がいい。

しかし目を通してみると、自分で選んだくせにかなりの重労働そうだった。

“腰を痛めた主人の代わりに牧場の仕事をすること”

穏やかさを考えれば、シュウも文句は言わないだろう。ユウリは自分で提案したくせに不満の表情をにじませた。

そのとき引きちぎった依頼書の裏に、隠れていた依頼書が目に入った。

“地下ダンジョンのキノコ探索‼今なら買取アップ”

「え、」
(なんで楽しそうな依頼、裏に隠してる?おかしいんじゃねーか…。)

絶対に牧場の仕事をするよりも何倍も面白いものであるはずのものがあろうことか隠されているなんて、ひどすぎるんじゃないのか。

ユウリがそのビラにくぎ付けとも知らずにシュウは隣で「うん」と頷いた。

「ああ、それぐらいなら休憩できそうだな。…どうかしたのか?不満か?」

シュウは依頼ボートに顔を固定したままのユウリの顔の横にずれると、同じ場所に視線を添わせた。
ユウリを見ると表情はないに等しいが、今までのユウリを参考に考えると、つい笑いがこぼす。

「どうせほかの仕事のほうがよっぽどいい稼ぎだったとか思っているんだろ?」

「なっ!…それがわかっていて……むっ」

ユウリの大きな金色の瞳が少し見開かれる。シュウは片手でユウリの頬をつまむ。

「なんだっていいだろ。…牛、かわいいしさ、これにしよう、おまえが提案したんだろ?」

「ふぁ?!そんな理由で?おい、頬を放せ!しかもそれだと足腰の労働が大変だぞ、しかも時間がかかる」

「ああ、だけど、まだ俺はギルドに登録して一か月もたってない。初めてのうちは周りの人に馴染める仕事のほうが楽しいんだよ。な?いいだろ?もしかしたら報酬で牛肉が追加されるかもしれないぞ?」

「…にく。」

ユウリの薄い金の瞳を紫の瞳が見つめ返した。シュウはにやにやしながら諭すようにそういうとギルドカウンターのほうに体を向けた。

「はい、きまり!俺が受付のところに行ってくるよ」

片手でひらっと髪を受け取ると身軽に走っていった。
魔物退治のような武を鍛える仕事を好むユウリとしてはもの足りない気がするし、さらに言うなら後ろのキノコを見過ごせないという気持ちが否めないが、シュウが嬉しそうにしているからそれ以上文句は言えなかった、…いや、言わなかった。



—————————

毎日見てくださる皆さま、ありがとうございます。
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