エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

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「探しモノがあるんです。探しモノはきっと悪魔が持っている。そもそも悪魔たちは人間の欲から生まれるんです。だから大きな戦争とか人の感情が高ぶる時が一番生み出しやすいんです。———自分が必要だと思った人や物を無意識に取り込んでその空間に閉じ込めようする。ほら、昔話にも『ゼニフの秘密の扉』っていう本があるじゃないですか。」

「…あれが?」

「そう、いつしかかわいい童話に変えられましたが、協会なんかにはそのまま残っているのもありますよ。」

仮面野郎はそういった。
ゼニフってあのゼニフ?あんな御伽噺がこれと同じというなら確かにそれは一大事だ。『ゼニフの秘密の扉』は古くからある子供向けの本だ。どこにでもあるようなごく普通の話で、なんも不思議なところはない。

「でもあれのどこが同じなんだ?あれは爺さんが大切なものをカバンに詰め込んでなくさないっていうだけじゃ?悪魔なんてみじんも出てこない。」

「違うよ?もしかして絵本しか読んだことないんじゃないですか?」

「違う?」

仮面野郎は「ああ」と言って頷くと語り始めた。

老人ゼニフは孤独だった。若いころに妻は死に、厄災で大事に育てていた娘を失った。
ゼニフは自分の大切な人を奪うこの世界に絶望した。

しかし幸いにもゼニフは周りの人間に恵まれていた。周りの人からの懸命な支援があってゼニフは絶望の淵から立ち直ることに成功したのだった。そこでゼニフはふと気づいた。

大切なものはなくならないように、しまっておけばいいじゃないかと。だからこの世に復讐するでもなく、大事なものは奪われない自分の空間にしまおうと大切なものをすべてしまったのだった。

そんなある日のことだった。ゼニフはいつものように妻の好きだったもの、娘の好きだったものをしまっていた。でもふとした瞬間に手を止めると、つぶやいたのだった。

「僕はどうしてここで一人でかき集めているんだろう?アンシアとわが娘セルディ―にも見せなくては」

ゼニフは愛しい妻と娘を探し始めた。
立ち直ったと思っていたゼニフは、やはり心の奥底で愛しい存在を諦められなかったのだ。
もうすでにこの世からいなくなってしまったという事実を忘れて、探し回った。
その時ゼニフに目の前を横切った子供の姿が目に入った。それは自分に良くしてくれた友人の孫であったが、柔らかそうな金髪が娘にそっくりだった。
「……見つけた。」
ゼニフはその子供を抱き上げると、自分の空間へと放り込んだのだった。

その日の晩ゼニフは友人から娘の場所を聞かれるが、「知らない」と答える。
本当に娘だと思い込むゼニフには心当たりがなかった。その時開いたゼニフの空間から声が漏れた。
彼の、友人の愛する孫の声だった。

ゼニフは、その瞬間何を思ったのか「じゃあお前も俺の宝物に入れてやる」というと友人を空間に入れた。
明け方、一人の商人が通りがかった。いつもならこの時間ににぎわうはずの市場に誰もいなくて、いつの間にか無人の町になってしまった。


「————というのが本当に話。つまり俺が言いたいのは一夜にしてクピディダスの呪いにかかった人間が街を滅ぼしたということです。」

しらなかった。幼いころから知ってるはずなのに、そんな物語があったなんて考えたことがなかった。

「なので、この空間でのんきに生活していたあなたが絶対に主だと思っていましたが…。実際の洞窟だと言い張る変な人しかいなくて、今に至ります。」

仮面野郎はこちらに視線を向けるとあろうことか本人に同意を求めてきた。

「いやそうするなら、仮面野郎だって十分に怪しい」

「…か、仮面野郎?僕のことですか?」
(あ。さっきからずっとそう呼んでいたから)

ユウリは咄嗟に口に封をした。態度の差が激しいこの男に少し不機嫌になりながらも、さすがに悪い呼び名だったなと思った。そうして下手くそな話題の替え方をする。

「———ま、まあそのことは置いといてさ、あんたはここをエイデン将軍の庭だって言っていたけどどうしてそうなるんだ?」

「僕もそのことが気になっていました。本来同じ空間にいるものは所有者の意思で同じ景色にいるはず。しかしそうではないということは、あなたがその影響を受けていないということで、…あなたは高位魔術師だったんですか?」

「……いや?俺はただの剣士だが?」
(…俺が高位魔術師?なことはあるわけないだろ。)

両親はれっきとした冒険者だったし、ユウリは魔法で生活を良くするくらいのことしかしたことがない。そもそも高位っていうのはシュウみたいな器用な奴のことを言うんだ、と心の中で思った。

「そうなのか…そうなるとますます奇妙だな。俺は人の空間を移動できるからこの景色が見えるけど、そうじゃない人は何なんだ?」

そういうと悩むしぐさなのか右手を握りしめ、手を仮面の中心部に置くと一定のリズムで刻み始めた。一向に説明がつけられない状況にユウリもよくわからないけど異例の事態なんだなーと理解する。

「それより、お前は名前なんていう?今さっきから、心の声が漏れそうで仕方がない。」

「実際に漏れていましたけどね、—僕のことはハルと呼んでください。」

「ハルか、了解した、俺はユウリだ」

ハルはおどろいたように仮面の奥の瞳を見開くと、声を上げた。

「………ユウリ?…やはりあなたはユウリなのですか?」

突然、ハルはユウリの肩をつかんだ。

「ん?どっかで会った?」

いきなり驚いたようにするから、どこかで偶然会ったことがあるのかもしれない、とユウリは振り向いた。それにしても、どっかであったとして、その仮面では、顔なんてわからない。
あまり重く考えすぎず、ハルを見るも全く心当たりがなかった。

「…いや、こっちの勘違いという可能性もあるので、」

ハルはそのまま黙り込むと、ユウリがつけていた火の近くに寄った。
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