エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

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家の裏側に回ったところで、ユウリはふと思った。

「なぁ、ここの人がクピディダスじゃなかったらどうする」

もしここにいるのが何も知らない大人だったら、いきなり子供を抱えて現れた自分たちは不審者なのでは、と思った。今までの経験上ユウリが赤の他人の子供を抱えて現れた場合、いや、たいして話した事のない人にあった場合、その人にはひどく嫌な顔をされる。

顔のしわをすべて眉間に寄せて、不快だとでもいうような顔なのだ。
それがどうしてかと問われれば、口をもごもごさせてから必ず「表情の変わらない能面のような顔が気持ち悪い」という。そんなことを言われたらわざわざ人を不快にしてまで近づこうと思う人はいないはずだ。

それにユウリの薄い瞳みたいに魔力量の少ない人は魔力ありきのこの世界ではそんなにいい仕事には恵まれない。魔力がないから仕事の効率も悪いし、どこか不公平に感じる。それを見ているからいいイメージがないのだろう。

別に顔の造詣がどうこう言われたわけじゃない。それに、シュウみたいなイケメンが能面ならまだしも、イケメンではないから、ただ単純に怖い思いをさせる、ユウリはそう思った。

ハルはそれを考えていなかったとでもいうような感じで少し下をむいて悩みこんでいたが、ユウリはその様子を見てすぐに自分の悩みは必要なかったかもしれないと感じた。
何せ、仮面からでも子供たちに王子様と呼ばれるくらいだ。仮面越しでもハルの人の良さくらい伝わるだろう。
別にどうってことないじゃないか。


ふと、今さっきまで匂わなかったにおいが鼻の奥をかすめる。ユウリはピクリと鼻を動かして、勢いよく正面を向いた。

「———シュウのにおいがする」

慣れ親しんだ匂いだ。

心から安心するようなそんな匂い。

「…なんていいました?」

その先にあるのは目標としていた扉で、ハルの質問なんてほとんど聞こえていない。
衝動に駆られて、子供たちを足もとにおろす。

「シュウ!」

数歩歩んでそのまま急ぎ足になってノックもせずに扉に手をかけた。いつにもまして興奮したようなユウリの様子を子供たちもその様子を何も言う間もなくぽかんとした顔で見る。ノックもせずに人の家に押し入ることは悪いことだということもすっかりそのことは頭から抜けていた。

勢いよく扉を開けようとしたとき、それよりも早く扉が開いた。ユウリの前髪をフワっと風が通り抜けて、目の前の扉にピタッと体を止めた。あと少しで扉が頭に命中していたかもしれない。額があぶねえ、とそんなことを思ったのも束の間、あっという間に何かに包まれた。

何だか暖かくて、すごくなれた匂いが鼻腔にいっぱい広がる。
胸のあたりから温かいものが一気に込み上げて耳まで何だか幸せになる。
ユウリはうれしくなって、無表情の顔をいつもよりも輝かせた。

「シュウ!」

久しぶりに感じる。一時辰たったか経っていないかくらいのそれだけの時間だけど、ずいぶん長いことあっていなかったんじゃないかぐらいに久しぶりで相棒としてのシュウの立ち位置がユウリの中でしっかり築かれていたのだなと感心した。

抱きしめられたところが少し苦しくって、身じろぎする。
シュウは鼻もぶつかるんじゃないかという至近距離で、ユウリの腰を強く引き寄せて、口をパクパク、まるで魚みたいに動かす。間近に見える、紫色の瞳を見つめ返した。

「…なんだそれ?シュウ。魚の真似か?」

シュウの奇行に少し鼻で笑うとますます強く抱きしめられる。過剰な反応に過保護すぎんだろと、思わないわけじゃないが、うれしかった。

「———兄さん?」

感極まってシュウ以外の人が目に入っていなかった。

「…は?まさか——、レオンか?」

シュウはその声に驚いたように目線をユウリの後ろにずらす。その言葉はハルから出ていて、意味が分からない。ハルがレオ。
ユウリの知っている名前とは違う名前をシュウは言う。

(兄上?)

シュウは困惑したように、瞳を揺らす。

「——っ、なんで俺のこと分かるんだ?」

「なんでって、俺が兄さんの顔を忘れるような上のない奴だと思っているんですか?」

シュウのやけに焦った言葉にハルが当たり前のことを言うようにそう答える。
そりゃそうだ。ユウリは逆にシュウがどうしてそんなに焦っているのかわからなかった。久しぶりに会った兄弟を、会わなかっただけで忘れるわけがない。なのに、その言い草はまるで、忘れていないほうが可笑しいと遠回しに言っているみたいだった。
ユウリが、状況が分からず、取り残されているのを感じたのかシュウは回していた腕を少し緩める。

「あ、悪い。」

「お前らは兄弟なのか?」

ユウリは疑問に思ったことをすぐに口にした。その反応に、ハルのほうが困惑した表情で答える。

「え?…ユウリ兄さんは仮面付けていたから僕のことをわかんないんだと思っていたんだけど、まさかほんとに僕のこと忘れていたの?俺だよ?」

「———え?」

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