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「———え?」
———僕のことを忘れていたってなんだ…
「———っ」
突然、わずかな痛みが頭を覆う。
何だっけ、なにを忘れている?何を……?
「…っレオン、それについてはまた後だ。今はここから出ることが先だ、ここにいるのはよくないぞ。しかもそのちびたちは…?」
シュウはこれ以上話をさせないかのように、少し慌ただしく言葉を紡ぐ。
確かにシュウの言うようにここから脱出することが先決かもしれなかった。ユウリは鈍くなった思考を振りきった。今さっきまで広がっていた青空が何処か薄暗く、怪しい雰囲気に変わっていた。ハルはその様子を目敏く察すると、今さっきまでのどこか王子様感満載の雰囲気を捨て、パンっと手をたたいた。
その様子に子供たちがビクッとしたのが見える。
「ああ、そうだね。懐かしい話はまた後で。…クピディダスの核となる場所を見つけたので、子供たちは空間の外に。ずっとここにいるのは危ないからね…、それより兄さんはどうして中に?」
「それは、ユウリがいきなりいなくなるから、……お前勝手にいなくなって、俺がどれだけ——」
シュウの言葉に少し浮かれていた自分を顧みる。パーティーを組んでいるというのに仲間を心配させてしまった。一生懸命探してくれたシュウにうれしいよりも申し訳ない気持ちのほうが大きくなって、心が冷えたみたいに重く沈む。
何の言い訳もできやしない。
シュウはその言葉に少しうつむいたユウリの頬をさすると、おでこをくっつけて「心配したんだ」とユウリにしか聞こえないような声で言う。
「——っは?」
その時ハルが大きな声を出したのと同時にけたたましい音が辺りに鳴り響いた。
ユウリたちは咄嗟に子供たちが怪我をしないようにしゃがんで、風を背に受けるとその方向に瞳を向けた。
気を抜けば、吹き飛ばされそうなほど強くて、息が出来ないほどの熱くて重い風が全身を包み込む。シュウがこちらに目線を移して再び口を開こうとしたのも、遮ってあっという間に草木に熱風が炎となって乗り移った。
先ほどまで何も変わりのなかった家が中から真っ赤な炎を上げて、中から熱い風が押し寄せる。
ユウリはあっけに取られて、口を開いた。
「いきなりなんでこんなことに」
咲き誇っていたはずのエイデンが一気に萎れ、遠くの方でも煙や炎が上がる。
ここだけが燃えているわけじゃないようで、何が何だかよくわからない。
まるで、10年前の戦争を思わせるようなそんな惨状だった。
ここにいても埒が明かない。ユウリはそう思うと、子供たちの避難を先にしようと立ち上がる。まだ正気を保っているデリクに歩くように促して、何が何だかわかっていないミリーと足を動かすのがやっとのジュリィに視線を移した。
「——っ。お前たち、ここに来い。」
このままでは先に子供たちがどうにかなってしまいそうだ。
ユウリが腕を伸ばすと同時にそう叫ぶ。
もう寸秒も残されていないのかもしれない。ユウリはそう思った。いつものように、一人で行動するのと違って、周りの体力と気力に気を配る必要がある、しかも一緒にいるのはまだ年端もいかない子供だ。
ユウリがこんなにも焦るのには理由があった。今の熱気に包まれるこのありさまが通常の状態ではないことは分かったが、まるでユウリのそばだけ何かに包まれたように感覚が鈍くなっていて、正確に状況をつかむことが出来ていなかった。それは経験値故で、まるでどんどん熱くなってきているようにも感じるし、そうでないかもと感じる。
どこが自分の限界か分かつていないということでもあってますます眉間にしわを寄せ、集中して無口になった。
「あそこのまだ焼けていないところに移動しよう」
シュウが指した方に足を進める。ユウリはデリクが離れないようにつかもうとして、見つけた違和感に、遅れて前の二人がこちらを振り向く。
「—————っ!」
あのユウリをこちらに連れてきたときの腕がユウリの伸ばした手を押しのけて子供たちに絡まった。
ユウリが引き込まれた時とは異なって優しく抱きしめる。
(——まさか、今度は子供たちをさらうのか⁉)
ユウリは咄嗟に腕をたたき切ろうと、背に背負っていた大剣を引き抜く。流れるままに斜めから降りおろそうとした…とそこまで見て、あの時とは違ってその腕には続きがいたことに気が付いた。
その腕は壁から飛び出ているわけでも、異空間から飛び出ているわけでもなくて、途中から見事な人間女性を作り上げていた。
「え?」
「あ、おかーさん!」
ユウリが焦って大剣を押しとどめるその瞬間に、あろうことかジュリィが嬉しそうにその女性に笑いかけた。
———僕のことを忘れていたってなんだ…
「———っ」
突然、わずかな痛みが頭を覆う。
何だっけ、なにを忘れている?何を……?
「…っレオン、それについてはまた後だ。今はここから出ることが先だ、ここにいるのはよくないぞ。しかもそのちびたちは…?」
シュウはこれ以上話をさせないかのように、少し慌ただしく言葉を紡ぐ。
確かにシュウの言うようにここから脱出することが先決かもしれなかった。ユウリは鈍くなった思考を振りきった。今さっきまで広がっていた青空が何処か薄暗く、怪しい雰囲気に変わっていた。ハルはその様子を目敏く察すると、今さっきまでのどこか王子様感満載の雰囲気を捨て、パンっと手をたたいた。
その様子に子供たちがビクッとしたのが見える。
「ああ、そうだね。懐かしい話はまた後で。…クピディダスの核となる場所を見つけたので、子供たちは空間の外に。ずっとここにいるのは危ないからね…、それより兄さんはどうして中に?」
「それは、ユウリがいきなりいなくなるから、……お前勝手にいなくなって、俺がどれだけ——」
シュウの言葉に少し浮かれていた自分を顧みる。パーティーを組んでいるというのに仲間を心配させてしまった。一生懸命探してくれたシュウにうれしいよりも申し訳ない気持ちのほうが大きくなって、心が冷えたみたいに重く沈む。
何の言い訳もできやしない。
シュウはその言葉に少しうつむいたユウリの頬をさすると、おでこをくっつけて「心配したんだ」とユウリにしか聞こえないような声で言う。
「——っは?」
その時ハルが大きな声を出したのと同時にけたたましい音が辺りに鳴り響いた。
ユウリたちは咄嗟に子供たちが怪我をしないようにしゃがんで、風を背に受けるとその方向に瞳を向けた。
気を抜けば、吹き飛ばされそうなほど強くて、息が出来ないほどの熱くて重い風が全身を包み込む。シュウがこちらに目線を移して再び口を開こうとしたのも、遮ってあっという間に草木に熱風が炎となって乗り移った。
先ほどまで何も変わりのなかった家が中から真っ赤な炎を上げて、中から熱い風が押し寄せる。
ユウリはあっけに取られて、口を開いた。
「いきなりなんでこんなことに」
咲き誇っていたはずのエイデンが一気に萎れ、遠くの方でも煙や炎が上がる。
ここだけが燃えているわけじゃないようで、何が何だかよくわからない。
まるで、10年前の戦争を思わせるようなそんな惨状だった。
ここにいても埒が明かない。ユウリはそう思うと、子供たちの避難を先にしようと立ち上がる。まだ正気を保っているデリクに歩くように促して、何が何だかわかっていないミリーと足を動かすのがやっとのジュリィに視線を移した。
「——っ。お前たち、ここに来い。」
このままでは先に子供たちがどうにかなってしまいそうだ。
ユウリが腕を伸ばすと同時にそう叫ぶ。
もう寸秒も残されていないのかもしれない。ユウリはそう思った。いつものように、一人で行動するのと違って、周りの体力と気力に気を配る必要がある、しかも一緒にいるのはまだ年端もいかない子供だ。
ユウリがこんなにも焦るのには理由があった。今の熱気に包まれるこのありさまが通常の状態ではないことは分かったが、まるでユウリのそばだけ何かに包まれたように感覚が鈍くなっていて、正確に状況をつかむことが出来ていなかった。それは経験値故で、まるでどんどん熱くなってきているようにも感じるし、そうでないかもと感じる。
どこが自分の限界か分かつていないということでもあってますます眉間にしわを寄せ、集中して無口になった。
「あそこのまだ焼けていないところに移動しよう」
シュウが指した方に足を進める。ユウリはデリクが離れないようにつかもうとして、見つけた違和感に、遅れて前の二人がこちらを振り向く。
「—————っ!」
あのユウリをこちらに連れてきたときの腕がユウリの伸ばした手を押しのけて子供たちに絡まった。
ユウリが引き込まれた時とは異なって優しく抱きしめる。
(——まさか、今度は子供たちをさらうのか⁉)
ユウリは咄嗟に腕をたたき切ろうと、背に背負っていた大剣を引き抜く。流れるままに斜めから降りおろそうとした…とそこまで見て、あの時とは違ってその腕には続きがいたことに気が付いた。
その腕は壁から飛び出ているわけでも、異空間から飛び出ているわけでもなくて、途中から見事な人間女性を作り上げていた。
「え?」
「あ、おかーさん!」
ユウリが焦って大剣を押しとどめるその瞬間に、あろうことかジュリィが嬉しそうにその女性に笑いかけた。
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