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「……なにしてる?」
———何をするつもりなのか
「…この先は聞かない方がユウリ兄さんのためだと思う、それでも聞きたい?」
ユウリ兄さんはピュアなところがあるからなあとハルが少しこちらに視線を向ける。その表情は言葉の雰囲気とは裏腹に苦痛そうに歪んでいた。
ハルはそんなことをつぶやくが、ここまでいて聞かない方が酷というものだ。
「もちろん聞き…っ」
「たい」という後に続くはずの言葉が言えなかった。
ハルの方向に視線を移していたから横から近づく者の手に反応が遅れる。
「——危ない!」
ハルの叫びと共に強く後ろに腕を惹かれて、シュウに引き寄せられる。ジュナファーの指先がユウリの目の前に迫っていた。今さっきまでのジュナファーの様相はどこかにいってしまったのかますます剣呑な雰囲気を持つ。
『アァ…黄金の目、』
「お前……お前が触れていい奴ではない」
シュウはその言葉に目を開くと、瞳の色を強くして、ユウリに伸ばされたその腕に手を伸ばす。しかし、あと少しでつかめるというところでその手を止めてしまった。
「この空間はいすぎれば魔法と同化してしまう。彼は長すぎた」
ハルの言うように体がぼろぼろの屑のようで動くたびに輪郭が落ちる。魔物から出る灰に似ていて、一目みてこれが瘴気を含むものだと気づく。触ったら危険だ。ジュリィの母親は子どもたちに見せていた慈愛の表情をなくし無表情で立ち尽くしていた。
「もう君のお父さんはこちらにとどまるのも難しそうだよ。このまま灰になってしまうのと少しでも輪廻に戻せる可能性のある魔方陣に乗せるのとどちらのほうがいいかな?」
『…っ。』
その二択しか残されていないことに唇をかむ。自分の娘がこんなにも悔しそうな顔をしているというのに当の本人はいまだユウリの顔を見続けていた。
『オマエたちがきたのがわるカっタァ』
ユウリの瞳に執着するように手を伸ばす。ユウリの瞳に固執している姿は本当にジュナファーかと疑うほどで、それにジュリィの母親はハルの言葉に少しだけ瞳を揺らしてユウリの瞳に手を伸ばすジュナファーを覚悟を決めたように見据えた。
手を伸ばされているとはいえ、適度な距離を保っているユウリには一歩も触れることはできないが、それでもシュウは守るように強く抱え込んだ。
(それにしてもどうしてこんなに俺の瞳に固執する…?)
いつもだったらシュウにこんなに抱き込まれて反抗もするけれど、それよりもその言葉のことで頭が占められていた。
———どうしてこんなにジュナファーがユウリの瞳について触れてくるのに、誰も聞こえないみたいにするんだ?
今さっきまでデリクたちと自分の瞳について話していたからなおさら引っかかる。
ユウリが悶々と考えている内もどんどん話が先に進む。ジュナファーは手を出すでもなくユウリに手を伸ばしたままの状態でただそこにたたずむ。まるで音が通じていないかのようだ。
『——父さん、こんなことはもうやめようよ』
彼女は表情の中に少しの感情をにじませながら近づいた。伸ばされたままの腕を彼女が止めると引っ張るように魔法陣の中へ進み出る。足取りは軽くて、ためらいもない。
しかし進み出たそのそばからジュワっと彼女の指先が音を立てた。
ジュナファーはうつろな目でその様子を見ていた。腕は引っ張られても体はまだ陣の外だ。
『父さん、お願い。』
外から見てもわかるほど魔法陣からは聖魔法がにじみ出ている。この上に乗ったなら、根源であるジュナファーさんはあっという間に浄化されてしまうのだろう。
『……何を言ってるんだいカレリア。父さんたちはなにも悪くないだろう?ただしあわせを守っているだけじゃないか』
女性、カレリアはジュナファーの手を強く握る。
「やっぱり10年前の戦争が関係しているんですね。」
ハルはそういうと、地面を何度かたたく。
コン、コンと響かない木の板をたたき終わると、白い文字で書かれた魔法陣の輪が徐々に広がっていくようだった。
『そうだ。前みたいにみんなでくらしたいだろう?母さんに会いたいだろう?ダッタラ——』
『——でももう母さんはいないんだよ』
ジュリィの母親、カレリアは言葉を遮って、父に気づかせるようなにそんな風に話す。ジュナファーはその言葉に強く反応すると、勢いよくカレリアの手を振り切るとこちらに踵を返した。
『おまえたちが来なければ、そんなことにはならなかった!!』
ユウリのほうに伸ばされた手を寸でのところでかわすも体勢を崩して体が傾いてしまった。
“おまえたち”にいったい誰が含まれているのか。
傾きながらそんなことを考える。ユウリのもつ薄い茶色の瞳をそう呼ぶのだろうか。
『その瞳をよこせ!ようやく手に入る。これで私たちの暮らしは元に戻るはずなんだ。邪魔をするな!!』
ユウリ達にとって、邪魔されているのはこちらも同じである。ユウリをかすめた指が諦めずに迫ってくると同時にその後ろで真っ青にしたカレリアが大きくユウリの名前を呼んだ。
『———ユウリ君!!』
———何をするつもりなのか
「…この先は聞かない方がユウリ兄さんのためだと思う、それでも聞きたい?」
ユウリ兄さんはピュアなところがあるからなあとハルが少しこちらに視線を向ける。その表情は言葉の雰囲気とは裏腹に苦痛そうに歪んでいた。
ハルはそんなことをつぶやくが、ここまでいて聞かない方が酷というものだ。
「もちろん聞き…っ」
「たい」という後に続くはずの言葉が言えなかった。
ハルの方向に視線を移していたから横から近づく者の手に反応が遅れる。
「——危ない!」
ハルの叫びと共に強く後ろに腕を惹かれて、シュウに引き寄せられる。ジュナファーの指先がユウリの目の前に迫っていた。今さっきまでのジュナファーの様相はどこかにいってしまったのかますます剣呑な雰囲気を持つ。
『アァ…黄金の目、』
「お前……お前が触れていい奴ではない」
シュウはその言葉に目を開くと、瞳の色を強くして、ユウリに伸ばされたその腕に手を伸ばす。しかし、あと少しでつかめるというところでその手を止めてしまった。
「この空間はいすぎれば魔法と同化してしまう。彼は長すぎた」
ハルの言うように体がぼろぼろの屑のようで動くたびに輪郭が落ちる。魔物から出る灰に似ていて、一目みてこれが瘴気を含むものだと気づく。触ったら危険だ。ジュリィの母親は子どもたちに見せていた慈愛の表情をなくし無表情で立ち尽くしていた。
「もう君のお父さんはこちらにとどまるのも難しそうだよ。このまま灰になってしまうのと少しでも輪廻に戻せる可能性のある魔方陣に乗せるのとどちらのほうがいいかな?」
『…っ。』
その二択しか残されていないことに唇をかむ。自分の娘がこんなにも悔しそうな顔をしているというのに当の本人はいまだユウリの顔を見続けていた。
『オマエたちがきたのがわるカっタァ』
ユウリの瞳に執着するように手を伸ばす。ユウリの瞳に固執している姿は本当にジュナファーかと疑うほどで、それにジュリィの母親はハルの言葉に少しだけ瞳を揺らしてユウリの瞳に手を伸ばすジュナファーを覚悟を決めたように見据えた。
手を伸ばされているとはいえ、適度な距離を保っているユウリには一歩も触れることはできないが、それでもシュウは守るように強く抱え込んだ。
(それにしてもどうしてこんなに俺の瞳に固執する…?)
いつもだったらシュウにこんなに抱き込まれて反抗もするけれど、それよりもその言葉のことで頭が占められていた。
———どうしてこんなにジュナファーがユウリの瞳について触れてくるのに、誰も聞こえないみたいにするんだ?
今さっきまでデリクたちと自分の瞳について話していたからなおさら引っかかる。
ユウリが悶々と考えている内もどんどん話が先に進む。ジュナファーは手を出すでもなくユウリに手を伸ばしたままの状態でただそこにたたずむ。まるで音が通じていないかのようだ。
『——父さん、こんなことはもうやめようよ』
彼女は表情の中に少しの感情をにじませながら近づいた。伸ばされたままの腕を彼女が止めると引っ張るように魔法陣の中へ進み出る。足取りは軽くて、ためらいもない。
しかし進み出たそのそばからジュワっと彼女の指先が音を立てた。
ジュナファーはうつろな目でその様子を見ていた。腕は引っ張られても体はまだ陣の外だ。
『父さん、お願い。』
外から見てもわかるほど魔法陣からは聖魔法がにじみ出ている。この上に乗ったなら、根源であるジュナファーさんはあっという間に浄化されてしまうのだろう。
『……何を言ってるんだいカレリア。父さんたちはなにも悪くないだろう?ただしあわせを守っているだけじゃないか』
女性、カレリアはジュナファーの手を強く握る。
「やっぱり10年前の戦争が関係しているんですね。」
ハルはそういうと、地面を何度かたたく。
コン、コンと響かない木の板をたたき終わると、白い文字で書かれた魔法陣の輪が徐々に広がっていくようだった。
『そうだ。前みたいにみんなでくらしたいだろう?母さんに会いたいだろう?ダッタラ——』
『——でももう母さんはいないんだよ』
ジュリィの母親、カレリアは言葉を遮って、父に気づかせるようなにそんな風に話す。ジュナファーはその言葉に強く反応すると、勢いよくカレリアの手を振り切るとこちらに踵を返した。
『おまえたちが来なければ、そんなことにはならなかった!!』
ユウリのほうに伸ばされた手を寸でのところでかわすも体勢を崩して体が傾いてしまった。
“おまえたち”にいったい誰が含まれているのか。
傾きながらそんなことを考える。ユウリのもつ薄い茶色の瞳をそう呼ぶのだろうか。
『その瞳をよこせ!ようやく手に入る。これで私たちの暮らしは元に戻るはずなんだ。邪魔をするな!!』
ユウリ達にとって、邪魔されているのはこちらも同じである。ユウリをかすめた指が諦めずに迫ってくると同時にその後ろで真っ青にしたカレリアが大きくユウリの名前を呼んだ。
『———ユウリ君!!』
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