エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

文字の大きさ
33 / 42

Ⅰ-32

しおりを挟む
『———ユウリ君!!』


その声が聞こえたのと同時に何かに押し倒されるようにその体が吹っ飛んでいく。
シュウが指をうごかすと、勢いよく氷でできた剣が触れようとしていた腕をたたき切った。鈍い音とともに勢いよくその腕が吹っ飛ぶと、瘴気の灰が宙へ舞う。

生き物を殺すような感じではなくて、無機物を殺しているような感じだ。

「触るな」

シュウは鋭い瞳で睨みつける。冒険者になれば傷の一つや二つあって当たり前だ。だからシュウが怖いくらいに過保護になっている様子はユウリからしたら何だか複雑だ。

シュウの緊張する体に大丈夫だと合図するように肩をたたいてこちらに意識を向けさせる。目が何処か仄暗いようなアメジストの瞳がユウリをとらえた。

「シュウ、そんなに心配しなくても自分で守れる。」

「わかってる。」

本当にそう分かったのかと疑いたくくらい軽い返事をする。

『君たちは相変わらずなんだね…』

ささやくくらいの小さい声にシュウが反応する。

「やっぱり…覚えているかジュナファーさん。10年前にサイフォス様に助けられたときのことを。」
(———え?)

サイフォスというのはユウリの家名だ。どうしてシュウがサイフォスを知っているのか。どうしてこの世にもう一人しかいない家名を知っている?
視線だけを動かして問われた先を見つめる。しかし何も答えずに黙ったままだ。

「…なぜ何も言わない。」

うめき声があげる。たたき切られたはずの腕に苦痛に表情をゆがめるでも、そんなものを気にした様子もない。

「———なあ、サイフォスってどういうこと?……黄金ってなんのこと?」

こんな状況で黙っていられなかった。ただ巻き込まれたはずだったのにいつの間にか舞台に立たされてしまったみたいだ。

こぼれんばかりに目を見開いて、追いつかない頭を落ち着かせようとする。
知る限りこの世界に黄金を意味する固有名詞はないのだ。金はある。でも黄金は違う。
ではそれはいったい何なのか。こんなに自分の周りを囲まれているのに自分に関係ないなんて思えないじゃないか。そこまで鈍くはなりきれない。

耳元に聞こえてくる音がうるさくて、周りの音が上手く拾えない。
下がり気味だった頭を上にあげるとシュウとハルの焦ったような顔が目に入った。そこで初めて聞こえてくる煩い音が自分の息遣いであることに気づく。

こんな風になったことはない。どことなく頭も刺すように痛い気がしてきた。
でもアイツの声だけははっきりと耳に響く。

『アア、そうだ。黄金がやってこなければおこるはずもなかったものを…アイツガ持ち込んだァ』

———そうだ黄金が悪い。

目的が変わったかのように鋭い目つきに変わる。

混乱する頭をはっきりさせたくて、頭を振るもまるでええ靄がかかったように頭が働かない。自分が知らないことを
なぜみんなが知っているのかよくわからない。

じゃあそのユウリが持っている黄金を渡したらもう許してくれる?


それともみんながきれいって言ってくれたから譲らないほうがいい?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話 ※長くなりそうでしたら長編へ変更します。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...