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自分だけあんなに個人情報をさらけ出しといて、関係ないって言われると何も言えない。
たしかにあいつに自分から出自の話題を振ったのだって一番初めにあった時以外になかった。だからこれも仕方のないかもしれないが、せめて相棒なのだから「関係ない」なんてほかの人と一緒の言葉にしないでほしかった。
そういわれてむっとしたのも束の間、ハルが驚いたように身を乗り出してきた。
「——え?本当にユウリ兄さん?もう昔すぎて忘れちゃったの?」
鼻で笑いながら顔を柔らかくさせて笑う様子はシュウに似ているなと思いながら、ハルの言葉に首をかしげる。
「なぁそれって何の話…?」
——忘れちゃった…?微塵も記憶にない。
ズキンっと頭の中に鋭い痛みが走る。
「——このことは後にしよう。レオンはその手に持っているもの、なにかあるんじゃないのか?」
「ああそうだった。今回のクピディダス討伐は…って言っても兄さんたちは巻き込まれただけだと思うんだけど、国からの依頼なんだよ。」
「……家に依頼が来たのか?」
シュウの問いにレオンハルトが頷くと怪訝な顔をして、ますますきれいな顔が鋭くなる。以前、狼の森からエイデン領までの間で多くの人が行方不明になる事件があったそうだ。これだけ大きな事件ならば、もちろん冒険者として名を馳せるユウリの耳にも届いていそうなものだったが、初めて聞く話だ。
「じゃあジュナファーさんが?」
「いや、そうとも断定できないんだ。たしかに今回の討伐はジュナファーさんだ。だけど、さすがにそれにしては規模が大きすぎる。……だって見ただろ?」
確かにジュナファーはクピディダスと化していた。しかし襲い掛かるでもなく、言葉と単純な暴力は非力な人間と同じだった。そんな非力なジュナファーが商隊を襲う力があるとは言えないのだろう。
「それに今回助けたジュリィたちだけど、ジュリィは随分前からあそこにいたみたいで、現実に戻ってきたけどまだ目が覚めない。いまは王国の管理する病院にいる。デリクとミリーはそれほど大きな影響が出ていなかったみたいで、二人はもう家族のもとに帰っていったよ。」
「…そうなのか。」
元気なジュリィはジュナファーさんの孫。
最後に見た彼らの顔が忘れられない。不安そうにこちらを見つめる瞳は何も知らない。起きたらもう誰もいないのかと考えると、だましたように連れてきてしまったことに自分の親と結局同じことをしてしまったのかと目線を落とした。子供でも、何が起きているのかくらいわかる。何も言われなかったことが一番つらくなるというのに。
シュウたちはあの後にカレリアさんと共にジュナファーさんをクピディダスから浄化した。本当にあっけなく姿も消えてしまって、それを最後に見ていないユウリは実感がわかなかった。ただ彼らもまたどこかで幸せに生きてほしいと思った。
シュウが何かを決めたようにガタっと音を立てて椅子を引く。
「ユウリにはもう少し休んでいてもらいたいんだが、急いで家に帰ろう。早ければ明日だ。」
「なんかあったのか?」
「ああ、」
普段は見ない余裕のなさに何かあったのかと足にかかっていた布団をかすかに握る。
そうしてシュウは立ち上がると部屋の中にある箪笥やらクローゼットからいろいろなものを引っ張り出す。
「お、おい。」
そんなに物色していいのか?そもそもこの部屋は誰の部屋なんだ?
「え?兄さん、まだ目が覚めたばかりのユウリ兄に無理させるの?さすがにそれは——」
「家までは俺が抱えるから問題ない。帰ることが先決だ。」
「いや、さすがに明日じゃまだ歩いて移動するには効率が悪いと思うぞ。」
「俺が運ぶから問題ない」
聞いていないみたいに目当てのものを空間に放り込んだ。
たしかにあいつに自分から出自の話題を振ったのだって一番初めにあった時以外になかった。だからこれも仕方のないかもしれないが、せめて相棒なのだから「関係ない」なんてほかの人と一緒の言葉にしないでほしかった。
そういわれてむっとしたのも束の間、ハルが驚いたように身を乗り出してきた。
「——え?本当にユウリ兄さん?もう昔すぎて忘れちゃったの?」
鼻で笑いながら顔を柔らかくさせて笑う様子はシュウに似ているなと思いながら、ハルの言葉に首をかしげる。
「なぁそれって何の話…?」
——忘れちゃった…?微塵も記憶にない。
ズキンっと頭の中に鋭い痛みが走る。
「——このことは後にしよう。レオンはその手に持っているもの、なにかあるんじゃないのか?」
「ああそうだった。今回のクピディダス討伐は…って言っても兄さんたちは巻き込まれただけだと思うんだけど、国からの依頼なんだよ。」
「……家に依頼が来たのか?」
シュウの問いにレオンハルトが頷くと怪訝な顔をして、ますますきれいな顔が鋭くなる。以前、狼の森からエイデン領までの間で多くの人が行方不明になる事件があったそうだ。これだけ大きな事件ならば、もちろん冒険者として名を馳せるユウリの耳にも届いていそうなものだったが、初めて聞く話だ。
「じゃあジュナファーさんが?」
「いや、そうとも断定できないんだ。たしかに今回の討伐はジュナファーさんだ。だけど、さすがにそれにしては規模が大きすぎる。……だって見ただろ?」
確かにジュナファーはクピディダスと化していた。しかし襲い掛かるでもなく、言葉と単純な暴力は非力な人間と同じだった。そんな非力なジュナファーが商隊を襲う力があるとは言えないのだろう。
「それに今回助けたジュリィたちだけど、ジュリィは随分前からあそこにいたみたいで、現実に戻ってきたけどまだ目が覚めない。いまは王国の管理する病院にいる。デリクとミリーはそれほど大きな影響が出ていなかったみたいで、二人はもう家族のもとに帰っていったよ。」
「…そうなのか。」
元気なジュリィはジュナファーさんの孫。
最後に見た彼らの顔が忘れられない。不安そうにこちらを見つめる瞳は何も知らない。起きたらもう誰もいないのかと考えると、だましたように連れてきてしまったことに自分の親と結局同じことをしてしまったのかと目線を落とした。子供でも、何が起きているのかくらいわかる。何も言われなかったことが一番つらくなるというのに。
シュウたちはあの後にカレリアさんと共にジュナファーさんをクピディダスから浄化した。本当にあっけなく姿も消えてしまって、それを最後に見ていないユウリは実感がわかなかった。ただ彼らもまたどこかで幸せに生きてほしいと思った。
シュウが何かを決めたようにガタっと音を立てて椅子を引く。
「ユウリにはもう少し休んでいてもらいたいんだが、急いで家に帰ろう。早ければ明日だ。」
「なんかあったのか?」
「ああ、」
普段は見ない余裕のなさに何かあったのかと足にかかっていた布団をかすかに握る。
そうしてシュウは立ち上がると部屋の中にある箪笥やらクローゼットからいろいろなものを引っ張り出す。
「お、おい。」
そんなに物色していいのか?そもそもこの部屋は誰の部屋なんだ?
「え?兄さん、まだ目が覚めたばかりのユウリ兄に無理させるの?さすがにそれは——」
「家までは俺が抱えるから問題ない。帰ることが先決だ。」
「いや、さすがに明日じゃまだ歩いて移動するには効率が悪いと思うぞ。」
「俺が運ぶから問題ない」
聞いていないみたいに目当てのものを空間に放り込んだ。
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