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番外編2-1
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「いや、そんなに気にしなくても大丈夫だ」
シュウが強引にユウリをベッドへ引っ張るものだからもちろん家主のユウリがここで譲るわけにはいかない。綺麗な枕も押し付けて抗議する。
「——よくない。ちゃんとシーツだって変えている。遠慮なく使え。そんなところで寝て支障が出たらどうする」
「どうもしない、お前こそ支障がでたら困る」
かれこれこの格闘を始めてから何分経ったのか。途中でどこかに行ったりしながらも結局はこの話に戻ってきてしまうのだから、今やるしかない。
なぜ今さらこんな話をしているかというと、それは今日の討伐でのことだった。
________________
「ユウリそろそろ帰ろう。こんなにもって行っても買取に時間がかかるだろ?」
まだまだやり足りないくらいなのにシュウがそんなことを言う。確かに日が傾き始めているからあと少し経てば日が落ちるのだろう。
「もう?」
ユウリはあまり変わらない顔を少し不服そうにして振り向いた。
足元の枯れ葉がサクサクと音を立てる以外に音はしなくて、かなり深く森に入り込んでいることが分かる。狼の森は基本的に遠くないし、シュウがいないときならば、夜が更けるまで走ってしまうことがあるくらいだ。
多くの冒険者は日が暮れる前に帰るがユウリには関係なかった。しかしシュウもいる手前そんなことは言えない。しかたがないと今買った獲物を軽く捌こうとしたその時だった。
本当に気付かなかったのだ。
足元に出ていた木の根に引っかかってすっ転びそうになった。
盲点だった。右手でバランスを取ろうとして、右手にも獲物をつかんでいたことをすっかり忘れていたのだ。
その隣が崖だったこともあり、獲物の重さに引きずられるようにして落ちてしまった。
「ユウリ!!」
シュウの伸ばした腕もすれすれのところでとることが出来ず真っ逆さまに落ちていく。
まあ俺ぐらいなら別に落ちても獲物を下にひいてどうにかなるだろうとそんなことを考えていたのに、それを見たシュウはそうではなかったらしい。
つかみ損ねたとわかると、ユウリが落ちてからすぐにシュウも飛び落ちてくると、ユウリを守るように抱え込んだ。
いきなり身動きが取れないように包まれたユウリはわけがわからなくなって何もできなかった。シュウが出した蔓が網のように絡み取ったおかげで地面に叩き潰されることはなかったが、それをじかに受けたシュウはかなりのダメージを受けたのだった。
「お、おい!…生きてるか?」
「お前なぁ、これ以上心臓に悪いことはしないでくれ。おまえが怪我したらどうすればいいんだ。」
怒るでもなくただ単純に心配されると何を言い返していいかわからなくなるじゃないか。
大量にポーションを取り出すと少し血のにじんでいる背に惜しげもなく振りかけた。
そうして今に至る。
怪我した住人にベットを譲るのは家主として当然の行いだ。
そのはずなのに頑なに遠慮しやがって…。
ユウリは頑なに断ってきたシュウに心の中で舌打ちして、びくともしないシュウの足を引っかけてやる。
それでも本気じゃないそれはシュウに何も与えない。
くすぐるのも、腕を引くのも、怪我をしているシュウにそんな仕打ちはできないし、一向に気を許さないシュウに気の長くないユウリはそろそろ憑かれて負けてしまいそうだ。
ユウリは仕方なく立ち上がる。
「今日の傷のところにもう一度、薬を塗ろう」
「俺も一緒に行こうか?」
ユウリの様子に少し悪いとでも思ったのかそんなことを言って腰かけていた椅子から立ち上がる。
「いや良いよ。そこで座っていろ。」
ため息をついて、戸棚にしまった薬箱を取りに行く。ユウリもたまに手に取るそれは戸棚の手前においてある。近くにあった積み荷の上に足をかけて、手に取った。
そうして後ろを振り向くと、シュウの姿が見えなかった。
「あいつ…座っていろって言ったのに」
しょうがないからシュウを探すかとかけた足を戻す。
その時、積み荷の位置がずれてしまったみたいで、不意に足元の地面が消える。
そうしてまたしても体勢を崩したのだった。
シュウが強引にユウリをベッドへ引っ張るものだからもちろん家主のユウリがここで譲るわけにはいかない。綺麗な枕も押し付けて抗議する。
「——よくない。ちゃんとシーツだって変えている。遠慮なく使え。そんなところで寝て支障が出たらどうする」
「どうもしない、お前こそ支障がでたら困る」
かれこれこの格闘を始めてから何分経ったのか。途中でどこかに行ったりしながらも結局はこの話に戻ってきてしまうのだから、今やるしかない。
なぜ今さらこんな話をしているかというと、それは今日の討伐でのことだった。
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「ユウリそろそろ帰ろう。こんなにもって行っても買取に時間がかかるだろ?」
まだまだやり足りないくらいなのにシュウがそんなことを言う。確かに日が傾き始めているからあと少し経てば日が落ちるのだろう。
「もう?」
ユウリはあまり変わらない顔を少し不服そうにして振り向いた。
足元の枯れ葉がサクサクと音を立てる以外に音はしなくて、かなり深く森に入り込んでいることが分かる。狼の森は基本的に遠くないし、シュウがいないときならば、夜が更けるまで走ってしまうことがあるくらいだ。
多くの冒険者は日が暮れる前に帰るがユウリには関係なかった。しかしシュウもいる手前そんなことは言えない。しかたがないと今買った獲物を軽く捌こうとしたその時だった。
本当に気付かなかったのだ。
足元に出ていた木の根に引っかかってすっ転びそうになった。
盲点だった。右手でバランスを取ろうとして、右手にも獲物をつかんでいたことをすっかり忘れていたのだ。
その隣が崖だったこともあり、獲物の重さに引きずられるようにして落ちてしまった。
「ユウリ!!」
シュウの伸ばした腕もすれすれのところでとることが出来ず真っ逆さまに落ちていく。
まあ俺ぐらいなら別に落ちても獲物を下にひいてどうにかなるだろうとそんなことを考えていたのに、それを見たシュウはそうではなかったらしい。
つかみ損ねたとわかると、ユウリが落ちてからすぐにシュウも飛び落ちてくると、ユウリを守るように抱え込んだ。
いきなり身動きが取れないように包まれたユウリはわけがわからなくなって何もできなかった。シュウが出した蔓が網のように絡み取ったおかげで地面に叩き潰されることはなかったが、それをじかに受けたシュウはかなりのダメージを受けたのだった。
「お、おい!…生きてるか?」
「お前なぁ、これ以上心臓に悪いことはしないでくれ。おまえが怪我したらどうすればいいんだ。」
怒るでもなくただ単純に心配されると何を言い返していいかわからなくなるじゃないか。
大量にポーションを取り出すと少し血のにじんでいる背に惜しげもなく振りかけた。
そうして今に至る。
怪我した住人にベットを譲るのは家主として当然の行いだ。
そのはずなのに頑なに遠慮しやがって…。
ユウリは頑なに断ってきたシュウに心の中で舌打ちして、びくともしないシュウの足を引っかけてやる。
それでも本気じゃないそれはシュウに何も与えない。
くすぐるのも、腕を引くのも、怪我をしているシュウにそんな仕打ちはできないし、一向に気を許さないシュウに気の長くないユウリはそろそろ憑かれて負けてしまいそうだ。
ユウリは仕方なく立ち上がる。
「今日の傷のところにもう一度、薬を塗ろう」
「俺も一緒に行こうか?」
ユウリの様子に少し悪いとでも思ったのかそんなことを言って腰かけていた椅子から立ち上がる。
「いや良いよ。そこで座っていろ。」
ため息をついて、戸棚にしまった薬箱を取りに行く。ユウリもたまに手に取るそれは戸棚の手前においてある。近くにあった積み荷の上に足をかけて、手に取った。
そうして後ろを振り向くと、シュウの姿が見えなかった。
「あいつ…座っていろって言ったのに」
しょうがないからシュウを探すかとかけた足を戻す。
その時、積み荷の位置がずれてしまったみたいで、不意に足元の地面が消える。
そうしてまたしても体勢を崩したのだった。
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