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第一章・美麺を制する者、世界を制す
カルメンといっしょ。
しおりを挟む俺はカルメンとカップヌードルを食べた。
王国の首都「リベルテ」が一望できる城の漆黒のベランダで、優雅にカップヌードルを食べる様はなんとも珍奇だが、まあこれが俺の望んだ食べ物であり、俺達らしい生活なのだ。
俺が本来欲しかった生活。
「うむ。お主のおかげで望んでいた自由を手に入れたぞ」
俺は言う。
「は、はい」
緊張するカルメン。
「カップヌードル以外にも欲しいものはあるが…まあたくさんは望むまい」
「………」
黙って俯くカルメン。
「とりあえず、二年経ったが…そろそろ礼をせねばな。なにか欲しいものはあるか?」
「あ、あの…」
「なんだ?」
唐突にカルメンは言った。
「アデリナ様は…その…婿をもうけられないのですか」
意外な質問に、俺はきょとんとなった。
「いや、私は婿はいらない」
アデリナはきっぱり言う。
「はい…」
「妻ならば、欲しいが…」
俺は言う。
「???」
顔を赤らめ、混乱するカルメン。
「あ、あの、アデリナ様にはそっちの気が…」
「いや…こんな話をすると馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないが、私はこの世界に来る前は男だったのだ」
「へ??…この世界…?」
俺はこの世界にきて、はじめて自分の事情をカルメンに話した。
なぜそんな話をしようと思ったのかわからないが、もしかしたらカップヌードルを食べて、少し気が緩んだからかもしれない。
「そうだったのですか…」
変な目でみられるかと思ったが、意外とあっさり俺の話を受け入れるカルメン。
「ん?拒絶しないのか?」
引かれるか嗤われると思っていたので、驚く俺。
「いえ、100億の資産から異世界へ…なるほど、ようやくわかりました」
カルメンは言う。
「なにをだ?」
「こっちの話です」
カルメンはそれ以上話そうとしなかった。
嫌な沈黙が流れたが、やはり俺はそれに従うより他なかった。
□
それから一ヶ月後。
アスワドの城では各国の首脳を招いての、夜の舞踏会が開かれていた。
「カルメン!」
俺は黒いふわふわしたドレスを着ていた。いつもの情熱と強さに満ちたボロボロは、さすがに舞踏会の場では着れない。
「アデリナ様!」
カルメンは赤いドレスだ。やはりこちらも上品で、優雅だった。
対峙する12歳のカルメンと10歳の俺。
「今夜は、踊っていただけませんこと?」
カルメンが言う。
「ええ」
アデリナは会釈する。
ふたりは王国の美少女吸血鬼らが奏でる楽団と、美少年吸血鬼が歌うボーイソプラノの聖歌隊の演ずるクラシックの音楽を背景に、美しく踊った。
その黒百合の花と赤薔薇の花が同時に咲いたような華やかな姿に、他の美少年や美少女らは、見惚れていた。
「きゃっ」
途中でカルメンの体勢が崩れる。
観客達は一瞬ひやりとした。
「大丈夫か?」
さっと、敏捷な動きでアデリナがカルメンの体勢を立て直した。
「あっ…ありがとうございます」
頬を薔薇色に染めるカルメン。
「ふふ」
微笑むアデリナの勇敢な姿は、御伽話の王子そのものであった。
宝玉のように豪華な料理が、次々と白無垢のテーブルの上に並べられる。
四国の王達が高価なワインに喉を潤していた。
「はい、カルメン。高級トリュフのソース添え」
アデリナが言う。
「アデリナ様…ありがとうございます」
会場の熱気に火照らせた体のカルメンの瞳は、きらきらと輝く黄金色であった。彼女の情熱的な赤い髪のツインテールとよく合っている。力強く繊細なカルメンは、黒き闇を帯びた王子様の一挙手一投足に心臓を高鳴らせていた。
「やっぱりこういう料理もいいけど、私はカルメンが発明したラーメンの方が好きだわ」
アデリナはカルメンを褒めた。
「うう…アデリナ様…」
すると、カルメンはしくしく泣きはじめてしまった。彼女の美しい頬を雫が伝う。
「どうしたの?カルメン」
アデリナは突然のカルメンの情緒不安定な振る舞いを不思議に思う。
だが、決してそれを嗤うような真似はしない。
「なんでもないの…」
カルメンの不安を、アデリナは予知夢で感じ取っていたからである…。
アデリナはそっとカルメンに黒のレースのハンカチを渡し、泣き止むまで静かに待ったのであった…。
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