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第一章・美麺を制する者、世界を制す
休暇
しおりを挟むその日、カルメンとアデリナは別荘地を訪れた。
お忍びの休暇である。一年ぶりだった。
「おお!」
その別荘は、ログハウスで、アットホームな雰囲気を醸し出していた。
「あの…よろしいのですか。せっかくの休暇なのに、私を呼んでも」
「お主がいないとつまらん」
アデリナは、そう断言すると別荘のソファーに座った。
長くストレートなシルバー・ブロンドがさらさら…と揺れた。
つり目がちな赤い瞳が燃えている。
彼女は、いつものボロボロなドレスでなく、簡素な黒いワンピース姿であった。
カルメンは、白いワンピース姿だ。
「さて、貯まっていた雑誌でも読むかな」
俺はごろごろしながら、情報誌やファッション雑誌を取り出した。
「お、これなんかカルメンに似合うんじゃないのか!?」
うきうきするアデリナ。
「アデリナ様…自分の服装は選ばないのですか」
呆れるカルメン。
「いや…男の私が自分の女装を選んでも、意味なんかないだろ?」
けらけら笑うアデリナの無邪気な姿に、カルメンは思わず微笑んだ。
「ふう、しかしだな。私もこの4年間、いくどとなく政治活動をやめ、ほかのティブルシオのような聡明な方に席を譲ろうと考えていたが、結局続いているな……」
「さようですね」
頷くカルメン。
「結局わたしは今の立場が好きなんだな…誰になにを言われようと結局舞い戻ってくるんだから……」
「ええ。あなたはこの国がお好きなのでございますよ」
カルメンは深く頷いた。
「よしこれからは国の立て直しに集中するぞ。われはがんばる」
「はい」
微笑むカルメン。
ふたりはカップヌードルを食べた。
「うむ。なかなか美味だな」
アデリナは言う。
「そうですね」
カルメン。
「やはり気合いが入るな、カップヌードルは」
アデリナは麺を啜った。
「ええ、これからもお仕事、がんばりましょう」
「ああ」
頷くアデリナであった。
ふたりは自由奔放に思い思いの時を過ごした。
アデリナはソファでごろごろ。カルメンは部屋の掃除。
「あーしかしだな、この世界も住めば都だな」
アデリナがいう。
「もう帰る気はないんですか?」
「まだ少しくらいなら、あるが……」
アデリナ。
「帰ってしまわれるのですか?」
「そうは言ってない」
アデリナは膨れる。
「ただ、帰る方法がわからないので、どうしようもない」
「さようですか………」
カルメン。
□
□
□
夜。
カルメンとアデリナは外のブランコに乗っていた。
「はあ…いい眺めですね」
外からは夜景が見える。
「そうだな」
頷くアデリナ。
「………」
アデリナに擦り寄るカルメン。
「ちょ………それは反則だぞ!?」
驚くアデリナ。
「え、だって姫は、男なのでしょう?」
「それってどういう………」
「…………」
「…………」
お互い、頬を朱に染めて見つめあう。
豪華絢爛な夜景を背景に、美少女ふたりは緊迫した空気に包まれる。
「アデリナ様………」
「………」
なんか。
変な雰囲気になってしまった。
「と、とりあえず、部屋に戻ろう」
顔を背けるアデリナ。
「は、はい」
頷くカルメン。
(あ………やばかった)
俺は思う。
今は、女の体なのに………。
□
□
□
湯船に浸かっていると、声がした。
「アデリナ様」
「なんだ?」
「あの…ご一緒してよろしいでしょうか?」
体が崩折れた。
「ダメだ」
俺は言う。
「だめですか」
「私は男。お前は女だし……」
「じゃあ…その、濡れますか?」
さらに体が崩折れた。
「げ、下品な事を言うなっ!!」
「いや、お風呂がです」
くすくす、と笑うカルメン。
「い、意地悪な奴め!!!!」
怒るアデリナ。
「ごめんなさい………」
謝るカルメン。
「あの、さ」
「なんですか」
「その、女体化してるとはいえ、殿方の風呂に入るとは、それはつまり………」
「………」
「据え膳食わぬは男の恥、というならなぁ」
「私、そんな軽い女じゃないです」
カルメン。
「では、やめときなさい」
「………でも、なんかやだ………」
「おい………」
しばらく無言なふたり。
「いや、お前は、その………」
「はい?」
「誘ってるのか?」
「それだと軽いです」
「じゃあ……」
なんて言えばいいんだ。
「結婚、したいとか……」
「それも、軽いです」
「じゃあ、なんて」
「すき………」
ぶくぶく。
湯に沈んだ。
「?アデリナ様?」
あわてて扉を開けるカルメン。
「まあ、大丈夫ですか?」
パニックを起こすカルメン。
(どうしよう……)
アデリナは困惑した。
「わっぷ!!」
アデリナは救出される。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫って……」
カルメンと同じ湯船に浸かっているのに気づき、俺は慌てる。
「カルメン……お前………」
「は、はい……」
「胸、でかいな……」
「こらっ」
俺の頭を小突くカルメン。
「変な気分になるぞ………」
「なってください」
「破廉恥」
「うふふ」
カルメンがアデリナの手を掴む。
「ほら、触ってもいいですよ?」
「おまえ……酔ってるのか……?」
「酔ってません」
「本気か」
「本気です」
カルメンが俺にのしかかる。
さら…と赤い髪が揺れた。
水気を含んで湿ってはいるが。
「お、おい」
照れる俺。
「ん」
耳元にキスしてくる。
息を吹きかけられる。
「は……はぁ……」
体がほてる。
「今日の休暇に誘ってくれたのは、あなたじゃないですか」
カルメンが俺の胸に手を伸ばす。
「つまり、最初に誘ったのはあなたの方です」
つまり、これは男女の一夜と言う事で……。
「カ、カルメン。そこだめ、そこだめ」
「かわいい耳朶……」
突然肉食系になったカルメンに、困惑する俺。
「からだ、あつい……」
「んふふ」
そのまま、胸に手を伸ばす。
「はにゃ……」
「かわいい」
「カルメン、だめにゃ……」
「こわい?」
「こわいよう……」
「やめておきます」
「それもいやぁ……」
「どっちなんですか」
「ふぐぅ」
すっかりカルメンのペースに飲まれる俺。
「まて、俺たち女の子どうし……」
「アデリナちゃん、かわいいから、いいの」
「んっ」
唇を奪われる。
俺の初キス………。
こんな美少女としてもらえるのは嬉しいが、まさか百合プレイだなんて……。
「やだあ、カルメン、俺、壊れちゃうっ」
「壊れませんって」
「やだぁ」
「ほら、おっぱいですよ~」
柔らかいふにふにした触感にメロメロになる俺。
ああ……もうだめだ………。
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