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序章
お生憎様っ、こっちから進んで絶縁状を叩きつけてやるわ!! (改)
しおりを挟む「妃よ、此度新しく妃を娶る事となった。その妃は私の第一王妃として遇する事となるだろう。そしてそなたはこれより第二妃へ降格となる」
ある晴れた日の午後、何時もの様に夫婦仲良く?サロンでお茶を楽しんでいた彼女は、同じくお茶を楽しんでいた?であろう彼女の愛する夫より、豪奢な王宮より庭を挟んだ少し離れた所にある長閑な、落ち着きのあるガーデンハウス風の離宮に合う趣味の良い小ぶりのテーブルを挟み、彼女の夫は面と向かって妻である彼女へそれを一方的に告げた……ではなく、一方的に突きつけた!!
その物言いに一片の感情もなく、また甘い要素は何もない。
結婚して半年にはなるが初めて見せられた夫の能面そのもの、いやいや本当に精密な能面を一部の隙間なく張り付けているのだろうか。
思わず明後日の方向を考えさせられる程見事な無表情ぶりに、彼女は一瞬躊躇い、あり得ない言葉を放たれた筈なのに夫の放つ覇気に押されてしまい一言も言葉を発せられないでいたし、また俄かには信じられなかった。
そして正妃だった妻へ冷たく告げ終えた夫はそのまま席を中座し、呆然とその場でただ座っている彼女を残したまま一度も振り返る事無く彼は護衛騎士と侍従を従えその場を後にした。
サロンに残っているのは彼女付きの侍女と護衛騎士数名と、妻である彼女だけ。
夫の新しい妃となるのはこの国の現宰相の娘であり、また彼女とは違い由緒正しい公爵令嬢。
つまりは後から来たその公爵家の娘に、彼女はまんまと正妃の座を追われてしまったと言う訳である。
理由はわからない?
いや心当たりは無きにしも非ずと言ったところだが、しかしそれを理解したくないと言う方が正しいのかもしれない。
だがこうもあっさりと告げられてしまうといっそ清々しいものさえ感じてしまう。
清々しい?
本当に清々しいだけ?
いいえ違うっっ!!
余りの事で怒りや悔しさ、悲しみに愛……あんなに、初めて逢った時からずっと毎日っ、そうこちらが若干鬱陶しいと思うくらいの愛を囁いていた癖にっ、そんな彼より揺るがない真実の愛を感じたからこそ二人で愛を育み愛し愛される夫婦となったと言うのにっ、まして結婚した途端彼の重過ぎる愛に翻弄されまともに起き上がる事の出来なかった日々のなんと多かった事か、それに対して日々恥ずかしさを何度も感じ、それもこれも全て彼との愛があったからこそ!!
慣れない貴族社会……それもその最上位でもある国王の伴侶、唯一の正妃として要求される雁字搦めな生活。
厳しいマナーや礼儀作法、踊った事もないダンスや身に纏った事のない豪華なドレスや今までお目に掛かった事のないキラキラと輝く見事な装飾品達に埋もれる毎日。
何処までが公務で何処までがプライベートなんてわからない窮屈な生活だけれどっ、失敗の多い中で少しでも王妃として彼をサポートしたい、国民に必要とされる仕事がしたいと頑張ってこられたのは偏に私を想ってくれる彼の愛――――だけだった。
愛し愛される事だけを信じていたからこそっ、私はこれまで必死に頑張ってこられたのに……。
今更よね、ここが私の常識でもある一夫一妻制でないなんて……。
一人の夫を複数の妻や女達で共有するなんて、私には耐えられないし到底受け入れられない。
本当に愛していたのに……こんなにも貴方を愛していたなんて自覚すると同時に夫を共有?
うわぁ駄目だ。
私には出来ない。
無理。
本当に無理なのに如何して!!
あぁこれから如何すればいいの?
私の身体の内側より突然突き付けられた現実に、少しずつ色々な感情がごちゃ混ぜ状態となり、消化しきれない様々な想いが轟々と凄まじい轟音と共に身体の外へと、噴き出すべく出口を求め制御の出来ない感情が荒れ狂うけれど、今の私にそれを止める事が出来ない。
ううん、止められないんじゃあないわ。
止めたくない。
この訳のわからない感情に身を任せた方が、ほんの少しだけでもいい。
この心の痛みがほんの少しだけマシになる様な気がする。
ねぇ……、貴方の愛は今何処にあるの?
本当に少しでも私を愛しいと想っていてくれたの?
あの言葉はまちがいだったの!?
ねぇお願いっ、本当に今の私は一体何を信じればいいの――――!?
* * *
「……様」
あれから暫くして彼女はある意味落ち着きを取り戻す。
落ち着きを戻した彼女は、この世界における数多いる物も言えない深窓の令嬢ではない。
ちゃんと自身の意思を告げる事が出来る立派な口、そして思った事を成し遂げる行動力を人並みに持ち合わせている。
だから彼女は暫し時間が流れた後――――決意した。
いや、決意しなければやっていけないのだっっ。
ふ、第二の妃……ですってっっ!!
冗談じゃないっっ!!
ふん、そんなものになり下がるくらいなら、こちらから先にサヨナラするまでよ!!
そうよっ、大体誰が好き好んでここへ来たと思っているのよっっ!!
冗談じゃないわっっ。
ここではそれが常識でもっ、私の心の中、いいえ私の世界ではこれはとーっても非常識なのよっっ!!
だ・か・ら別れてあげるわ。
もう二度と貴方の顔なんて見たくもない!!
さようなら旦那様、そしてもう二度と会う事もないでしょう!!
彼女は残ったティーカップに注がれていた紅茶をぐいっと一口で飲み干し、そして自信に満ちた笑みを湛えて私室へと戻っていく。
しかしその笑みを湛える頬に一筋の涙が静かに流れていく。
まるで心の中に残っていた想いを涙となって彼女の心より押し出したようにも見えた。
そうしてその夜の内に仕度を済ませ、『さようなら』と一言だけ書き記した絶縁状を、夫の私室にあるテーブルの上へ勢い良く叩きつける!!
本当は夫の顔面にしっかりと叩きつけたい衝動が沸き起こって仕方なかったのだが、それをすればこの後直ぐにでも王宮より姿を消す事が困難となってしまう為、彼女は心の中で荒れ狂う怒りを必死に抑えて我慢をする事にした。
それから彼女は自身を慕う侍女を伴い、後にした王宮を振り返る事もなく、夜陰に乗じてそっと消息を絶った。
*大雨の中皆様いかがお過ごしでしょうか。
災害に遭われていないよう祈るばかりです。
さて、暫く更新出来なかったのは母の介護と我が身の不調は何時もの事ですが、少しばかり?
いやいやちょーっと内容がしっくりこなくて悶々としていた故に御座います。
な・の・で、少しばかり本日より加筆修正をしていきますね。
何時も拙作を読んでいただき誠にありがとうございます。
そしてこれからもどうぞ宜しくお願いします。
雪乃
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