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第一章 召喚された聖女のあれやこれ
8 聖女様は慌てる 茉莉花Side
しおりを挟むえーっとこの超がつく程のイケメンの顔は確かに覚えているけれど、名前……ど忘れしたわ。
珍しいな、看護師と言う仕事柄名前を覚えるのは得意だった筈なのに、何故かこのイケメンの名前を1mmも覚えてはいない。
普通ならば新しい名前を聞くと直ぐに覚えるのは当たり前だけれど、やはりこの異常な状態が私に現実逃避と言う選択を与えたのかもしれない。
そしてイケメンはと言うと流れる様な美しい所作で、お付きの女性が入れたであろう紅茶、うんこの鮮やかな赤みを帯びた色のお茶は紅茶だ。
茶葉の芳しい香りが私にそう教えてくれているって、この世界にも紅茶があるとはっ、ちょっと感動したかも!!
虫とか怪獣料理を出されるリスクは多少減ったと思うから……。
ひょんな事からこの世界へ来たとは言えっ、衣・食・住これは絶対に大事!!
どんな形で生きて元の世界へ戻る為にもっ、生き抜く為に最低限の環境は整えないとね。
さて、目の前のイケメンは一体私に何の用があるのかな。
出来る事なら今直ぐにでも元の世界へ戻して欲しいのだけれど……。
あれが昨日の出来事ならば私は凄く迷惑な事をやらかしてしまったと思う。
生まれて初めてやらかしたのは――――職場放棄!!
然もですよ、夜勤!!
それも深夜帯!!
普通にあり得ないし考えられない。
元々ぎりぎりの人数で多くの患さんを見ているのにっ、そう助手さん入れて三人で何十人もの患者さんに対応している。
なのに不可抗力とは言えっ、私は職場から離れてしまった――――いえいえ正確には離されたんだけれどね。
でも相手にはそんなの関係ない。
先輩吃驚しているだろうな。
いやいや怒っている?
それともちょっとは心配してくれている?
でも看護師が一人突然いなくなったのだから、きっと病棟だけじゃあない。
病院中もしかしなくとも警察沙汰なんてなっていないかな。
実家にも連絡されているかもしれない。
それよりももっと迷惑を掛けたのは患者さんだよ。
大丈夫かな、急変とかない……よね。
あ゛あ゛〰〰〰〰何か考えるだけで胃がキリキリと痛むわ。
と、兎に角何とか無事である事を伝えたいと言うか、さっさと元の世界へ戻りたい。
ちゃんと目の前のイケメンと交渉しなければ、でなきゃ冬のボーナスに響いちゃうよぉ。
そうちゃんと交渉しよう。
昨日もう元の世界へ帰れないなんてものすっごく物騒な事を言われたし聞いてしまったのだけれど、何とかそれを撤回して貰わないと私の明日と言う未来はないっっ。
それに私を召喚したと言うのならば、きっと元へ戻す方法もあるってものよ。
出なければ可笑しいじゃない。
そうと決まればイケメンさんと交渉だ。
「あのぉ昨日は色々と済みませんでした」
「色々? 何についての事だ」
「あ、そうですね、色々貴方に八つ当たりをしてしまったと言うか……」
「ああその様な些事等如何でもよい。そなたさえ私と共にいてくれるのであれば問題等ないのだ」
「いやそのですね、出来ればそこの所を変更して頂けると凄く嬉しいんだけれど……」
「何を以って変更せよと申すのだ愛しき聖女よ」
何やらそのですね、何故か解らない。
いや正確には解りたくもないのだよ。
先程より目の前のイケメンさん、元々壮絶な色気を垂れ流しているのにも拘らずっ、そこへねっとりとした蜂蜜の様な甘さを加えているっっ。
一度付いたら簡単には落ちてくれなさそうなくらい粘度が有りそう。
幾ら恋愛経験値のない私でもわかるって。
そうこれはヤバいっ、非常にヤバいって!!
そしてそんなに熱っぽく私を見つめるなって言うのっっ。
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