叩きつけた絶縁状!!  真実の幸せは何処にある!?

雪乃

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第二章  ただ今契約履行中

9  宰相とのファーストコンダクト  Ⅱ

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 ヴァルが即位して五年後――――。
 ラディラス大神官長が申していた通り、ヴァレンタインは一人の聖女を召喚する。
 その聖女の名は茉莉花、佐倉 茉莉花と名乗った。
 漆黒の髪と瞳を持つ特別美しい訳でもなく、また何かに秀でた所も余り見られない。
 そう、はっきり言って目の前にいるのは何処にでもいる凡庸な娘。
 それが初めて茉莉花と対面したデンホルムの持つ印象。
 まぁはっきり言って茉莉花からしてみれば何とも失礼極まりない印象である。
 だが自身の事を過小評価しがちの茉莉花からすれば、デンホルムの抱く第一印章等瑣末さまつなものかもしれない。

「不敬ぞ宰相!! 茉莉花は、彼女は王であるこの私と同位の身分を戴く存在。いやそれ以上かもしれぬと言うのにお前はっっ!?」
「別に宜しいではありませんか陛下。私は何も気にしてはおりません。身分の上位にある者が最初に下位の者へ声を掛けると言う決まり事でありましても、私にとっては些事に御座いますわ」
「茉莉花……」
「それにその様な些事より、私は沢山の人々と知り合いたいと思いますの。身分と言う垣根を払い分け隔てなくこの世界の方々とお話しがしたいですわ。そう思いませんか宰相様」
「ふふ娘エロイーズより聞いていた話とはまた随分と印象の違う聖女様ですな。まあこちらの比例は詫びましょう。それにしても随分と頑張られたモノですな。訊き及んだ情報によれば聖女様は庶民の出とか」
「それがなんだと言うのだ宰相っ、そもそも茉莉花の世界には貴族制度と言うものは存在せぬ。身分の格差のない素晴らしい世界に茉莉花は誕生したのだ。従って茉莉花を侮辱する発言は一切認めぬ、善いな宰相!!」

 皮を被っている筈のヴァルは声を荒らげ、眼光鋭く無感情の宰相へ反論した。
 その様子に茉莉花は胸がじんわりと熱くなる半面、一切感情を見せない宰相へ言いようのない不安を抱く。

「女を前にしいきがるな若造が……」
「なっ……」
「確かに私は何処にでもいる一般庶民ですわ。ですがっ、聖女としてこの世界へ来た以上私は自身の務めとこれより先陛下の傍で微力ながら精一杯お支え致しますわ。それで宜しいかしら宰相様?」

 宰相がこ声で言い放った言葉へヴァルが声を再び荒らげる間を与えずに、茉莉花は艶然を微笑みながら一切目を逸らさずに宰相へ言葉を放つ。
 
 ――――となる。

 誰が言った言葉なんて茉莉花にはわからない。
 ただ、そう笑う事は様々な感情の頂点なのだと常に茉莉花はそう捉えている。 
 茉莉花は宰相と争う心算つもり等ない。
 ヴァル達より聞かされた話はあくまでもヴァル側の言い分に過ぎない。
 宰相側の話も十分聞かなければ茉莉花自身これからどう動くのかさえも決まらない。
 
 確かに娘のエロイーズとは仲良くなんてなれそうにもないだろう。
 でも宰相は……わからない。
 そうヴァルの言う通り古狸なのは間違いないだろうでも――――。

「貴族令嬢として合格ですな。十日後の舞踏会を愉しみに致しましょう聖女様」
「ええ私も楽しみにしておりますわ宰相様」

 そうして長い様で短い謁見は終了した。
 茉莉花とヴァルが退室しようとする時にはもうデンホルムの視線の先に彼らはいない。
 権力を欲しい儘にしているとは言ってもデンホルムは決して遊んで等いないのだ。
 ヴァル達へ一礼をした後彼もまた謁見の間を後にし、自身の執務室へと仕事を行う為戻って行った。


 余談だが謁見を終えた茉莉花は緊張の糸が切れたのだろう。
 謁見の間を後にし、自身の部屋へと戻ると同時にベッドへダイブしそのまま朝まで爆睡したとか。
 翌朝ジョージー達より――――。

「「「淑女としてあるまじき事ですわ!!」」」

 と怒られたのは言うまでもない。 
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