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第二章 ただ今契約履行中
13 危機はまだまだ続く Ⅱ
しおりを挟む夕刻過ぎ王宮に、茉莉花の許へ戻ってきたジョージーは事のあらましを訊くと同時に何時もの笑顔は消え、見る間に表情が青褪めていく。
それもその筈……ジョージーは実家の者より祖母が危篤状態だと連絡を受けたのだ。
今にして思えばその使いの者は彼女の見知った顔ではなかったのだが、その者曰く『お嬢様がこちらへ来られてより新しく雇い入れられた者です』と一片の感情すら見られない表情で告げたのだ。
何時ものジョージーならばそう報告を受けたとしても訝しみ、先ず実家へ確認し安全と齎された情報が正しいものかを確かめてからの行動となっただろう。
ある意味それは貴族社会に身を置く者にとって確実に自身の身を守る初期の防犯対策なのである。
何時の世も身分の高い者、或いは裕福なる家に住まう者達は何処で妬みや恨みを買っているのかわからない。
こちらが買う心算等なくとも、ほんの些細な言動一つで相手は簡単にそう思うもの。
ジョージー自身が常に狙われているのではない。
これはあくまでも貴族社会での一般論なのである。
しかしこの時のジョージーには何時もの冷静さを欠いてしまっていた。
使用人だと告げる見知らぬ者の前でさえ、気にせず涙を薄っすらと滲ませたった一人の祖母を大切に思う18歳の孫娘だったのだ。
一刻も早く大好きな祖母の許へ飛んで行きたいっっ!!
だがそう思いはすれど現実問題として常に狙われているだろう茉莉花の事が心配なのだ。
そう、一度は諦めようと思った。
ジョージーは心の中で涙を流し、祖母へ手を合わせ謝っていたのだ。
ごめんなさいお祖母様……ジョルジーナは大好きなお祖母様の許へ今参る訳にはいかないのです。
何故ならジョージーにとって祖母や家族も大切だが、それ以上に聖女である茉莉花はもっと大切な存在。
それはヴァルより命じられたと言うだけではなく、彼女自身今心から茉莉花の為に仕えたいと思っている証し。
そうして心が裂ける様な痛みに耐えながら、誰にも告げず淡々と仕事をこなしていたジョージーへ、茉莉花はそっと近づき囁いた。
「お祖母様の所へ行って、私なら大丈夫だから……」
「で、ですが茉莉花様に何かあればっっ!?」
「約束するわ。この前みたいに庭園へも行かず、ちゃんとこの部屋で大人しくしているから。だから今直ぐお祖母様の許へ行って頂戴」
「ですがどうして……」
「何時も元気で怖い貴女を見ているとわかったの」
「左様に御座いますか、流石は聖女様ですわね」
「ああもうそんな事なんてどうでもいいじゃないっっ。ん〰〰〰〰だったら命令よっっ。ジョルジーナ・アイラ・メイヤール伯爵令嬢、今直ぐ王宮を出なさい。これは聖女としての命令です!!」
「せ、茉莉花様……」
「さあ早く行って、そしてお祖母様に顔を見せてあげて」
「は、はい、有難う御座います」
そうして笑顔で背中を押され、ジョージーは心優しい茉莉花に感謝をしつつ彼女へ優雅にカーテシーをすると急いで馬車へ乗り込み、実家より少し離れた郊外にある祖母の屋敷へと赴いた。
幼い頃より孫の中でも取分けジョージーを可愛がってくれた祖母をとても愛しているからこそ、せめて最期には傍にいたいと思ったと言うのにそんな彼女を待っていたのは、彼女の想像したものと全く異なるものであった。
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