叩きつけた絶縁状!!  真実の幸せは何処にある!?

雪乃

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第二章  ただ今契約履行中

12 危機はまだまだ続く

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「はあぁぁぁ……」

 茉莉花深夜にも拘らず目が覚めた。
 しかしそれは何も偶然ではない。
 最近の茉莉花は淑女としての講義やレッスンに加え未来の王妃教育云々等(本人いわいまだなる心算つもりはない!!)で、夕方になる頃にはもう身体はくたくた、精神はガリガリと限界まで削られてしまい、最早完膚なきまでに疲労困憊となっていると言うのに、まるで軽度の不眠症患者と思わせるその眠りはとても浅いくて短い。
 そしてその原因を茉莉花は十分過ぎる程理解している。
 そう、こちらが理解していたとしてもあちらが勝手に仕向けてくるのだ。
 茉莉花が拒否しようにも生憎ながら災難は向こうからやってくる故に避けられない。
 その結果あらゆるストレスがかさんだ末に茉莉花の眠りは浅くなる。
 その原因となるもとは、先日の花瓶事件以降より何度か続く不可思議な事件。
 ただ流石にあれから花瓶は空から降ってはこない。
 だが花瓶の代わりに!?


 最初は偶然かと茉莉花はそう捉えていた。
 小振りな鷹の様に鋭い爪とくちばしを持つ、ビアントと呼ばれるこの世界に生息する鳥獣ちょうじゅう
 この鳥獣は色彩豊かな羽を持ち、この世界ではペットしくは軍用鳥ぐんようちょうとする者が多い。
 そのビアント飼育する上で必ず守らなければいけない決まり事は、専用のプロテクターを装着しなければいけないというもの。
 理由はビアントの持つ鋭い爪である事もその一つ。
 だが問題はそこではない。
 万が一プロテクターなしで腕をビアントの爪に掴まれれば、鋭い爪に含まれる毒の影響で身体が軽く痺れてしまうのだ。
 何故なら鳥獣にしては小振りな身体と知られるビアントは他の鳥獣よりも力が弱い故確実に食事へありつく為自ら進化を遂げたのだ。

 殺傷能力としては低い毒。
 しかし確実に掴んだ対象へ鋭い詰め寄り毒をみ込ませ、対象が毒により痺れて動けない間に生きたままビアントは命を得るのだ。
 またその姿は赤やピンクと言った奇抜な色もあるが、軍用鳥となるビアントは皆一様に迷彩柄の羽をを有している。

 そして何時の間にか開け放たれた窓より茉莉花へ向かって突進してきたのは!!

 軍用鳥として飼われている可能性が高いモノ!!
 突進してきたビアントは鋭い爪で茉莉花の左肩をしっかり掴み、肩を覆う布地を突き抜け彼女の柔肌へじくりと食い込ませ徐々に彼女の身体へ毒を流し込む。
 茉莉花は一瞬驚きはしたものの動物は好きなのだ。
 熊や蛇出なければ茉莉花的にはOKな訳で、然も小振りな鳥である。
 確かに肩に食い込む爪は多少痛みは感じるものの嫌悪感を抱く事はない。
 そう暫くは何もなかったのだ。
 鳥も大人しく茉莉花の肩に止まっているし、この世界で初めての動物との触れ合いで茉莉花も上機嫌だった。
 だが徐々に茉莉花の身体に変化がもたらされたのだった。

 何時もは必ず茉莉花の傍にはジョージーまたはドロシー、数名の侍女がいたのだがっ、この日に限ってジョージーは偶々たまたま実家へ行く用事があり、傍を辞していた。
 いや勿論護衛の騎士のリアやドロシー達侍女は常に傍近くで茉莉花を護ってはいた。
 だが現実に茉莉花を危機より救う者はいなかった。
 その頃騎士達は扉の外で厳重に警備をしていた。
 やがてビアントの毒が全身へまわった茉莉花が床に崩れ落ちた音を聞きつけただろうドロシー達侍女の悲鳴を聞きつけ、騎士達が奥の部屋へ入った時には、毒に侵され床へ倒れ込む茉莉花の姿と彼女の肩を未だ掴み獲物を捕らえた喜びに浸るビアント。
 
 直ちに騎士達によってビアントの爪より解放された茉莉花は、王宮付きの侍医が来る前には無自覚ではあるものの自身で解毒を行っていた。
 それも聖女の応力の一つだったのだろう。
 しかし治療を終え目覚めた時には既に茉莉花を傷つけたビアントは殺されていた。
 確かに未来の王妃であり聖女を傷つけたのだから、当然と言われればそうだったのかもしれない。

 だが相手は小さな生き物なのだ。

 それに万が一殺処分対象だとしてもだっ、これが偶然なのかはたまた故意なのかを調べる必要があった筈!!
 後で茉莉花が聞いた話では、野生のビアントはまず人家には入らないと言う。
 それは乱獲する人間をビアンカは本能的に恐れている……それとも小動物故に自身の身を護る為のものなのか。
 どちらにしてもビアントは、自身より小さな生き物を襲う事はあっても人間を襲わない。

 おまけにこのビアントの羽は迷彩柄。

 誰かが仕組んだ可能性があるかもしれないと言うのに、床で転がる小さなむくろと化したビアントへ全ての罪を押し付けつけたかの様にその命を安易に奪われてしまった。
 茉莉花はそっと小さく冷たくなったビアントを哀れに思い、皆が止めるのも聞かず先日花瓶が落ちてきたあの薔薇の庭園の隅にその痛々しい身体をそっと葬った。
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