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第二章 ただ今契約履行中
18 感情の変化と不可解な想い *割り込みです
しおりを挟むヴァルと茉莉花は最初のファーストダンスこそ国王とその婚約者である立場故、また舞踏会の主役として二人して仲良く踊る事が出来た。
だが、言い換えれば契約上の婚約者同士に許されたささやかな逢瀬でもあった。
その短過ぎる逢瀬が終われば、何かと理由をつけて茉莉花とヴァルはあっという間に引き離されてしまう。
思わず茉莉花がヴァルへと伸ばし掛けた手は決して再度彼に揺れる事等許されず、そうしてヴァルを捕まえるのは勿論エロイーズ。
ヴァルの王妃然として何時も堂々と彼の隣に、自身のしなやかな腕を蔦の様に絡ませ、また豊満な胸を彼の腕へと恥ずかしげもなく押し付け、宴が終わりを迎える時までべったりと侍っているのだ。
そしてそれに対して誰も否やを問わない。
当のヴァル自身も……。
そんな様子に茉莉花は何故か回を増す毎に心情は穏やかではいられない。
近頃では胸焼けの様な何とも言えない苦々しいものが胸の辺りでずんと感じてしまう。
胸の上に大きな漬物石が乗っかっている様な、重苦しく呼吸をするのさえ辛いと思ってしまう。
そしてつい気を許していると――――。
『ヴァルは私の婚約者なのだから気易く触れ――――』
いやいやいやいや今何を言おうとした???
茉莉花は咄嗟に口許を両手で覆い隠す。
何故なら今自分が一瞬何を口走ろうとしたのかを思えば、至極当然過ぎる防衛処置でもあった。
気の緩みとは恐ろしい……ものだと茉莉花は背に嫌な汗を掻いてしまうと同時に、どうしてその様な言葉?
いや自身の心の中は一体どうなっているのだろうか
茉莉花はヴァルに対して仲間、そして元の世界へ帰る方法を見つけ出す為に必要な伝手であって、彼に必要以上の想いを抱くべき相手でないと言う事を十分に理解している。
第一この馬鹿げた婚約もヴァルより宰相から王権を奪い返す為のもので、そこには一切の想いはない……筈?え
変……ね、凄く変な感じだ。
ヴァルと私はこれ以上ないくらい清い関係で、そこには何の感情……仲間と言う思いはあってもそれ以上の者がないと再確認するだけで、なんでこんなに辛くて悲しい気持ちになるの?
それに出来る事なら今直ぐにでも本当は声を大にして叫び、エロイーズがヴァルの腕へしな垂れかかる厭らしい手を、引っぺがしたいと思ってしまう。
どうしてなのかな。
こんな気持ちなんて今まで感じた事なんてなかったのに、何時でも男の人なんて皆同じに見えていたのに、よりにもよってどうして違う世界の人なんか、こんな子供みたいな独占欲が湧くなんて本当にどうかしているよ。
おまけにこんな場所で悲しみに浸る事も出来ないし、馬鹿みたいに本当に行動する訳にもいかない。
そう、茉莉花には絶対に出来ない。
感情に任せて自分勝手な行動は大人げなく、そしてとても非常識だと捉えていたのだから……。
確かにエロイーズの行動はどう考えても淑女云々の前に、一般的な常識では考えられないもの。
でもだからと言って茉莉花が同じ様な態度を取れば、エロイーズと同じ土俵に立ってしまうのだ。
当然ながら茉莉花はもう子供ではない。
23歳の成人した大人である。
それでも態度こそ表には出さないが、決して見ていて気持ちいいものではない。
それにだ。
ヴァルにはエロイーズが絡みついている様に、今茉莉花にとっても大きな問題が立ち塞がっていると言ってもいい。
そう、娘が娘なら父親も父親なのだ。
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