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小話 子供の宮が出来た理由
1 狙われた子供達
しおりを挟む何故ブランカフォルトの後宮では母子が離れて暮らさねばならなかったのか。
その答えは簡単明瞭。
後宮で子供達の命が何度も危機に晒されたから……。
そうこれは子供の宮が如何にして誕生したかの小話。
またその裏で例の者達に操られ、悲しい末路を行く1人の女性がいたお話。
あれはもう今から五年と半年弱くらい前の事。
最初は事故、はたまた偶然ではないのかと思われた。
そう、第一王子ぺリグレス・オレストが誕生した頃はまだ子供の宮と言うものは存在しておらず、母親であるカッサンドラと共に後宮で暮らしていた。
その頃はまだ後宮にはカッサンドラ親子と愛妾1号のアデイラードしかいなかった。
クリスは初めての子供と言う事もあり、カッサンドラの許へ足繁く通い詰めていた。
まぁカッサンドラの許へと言うよりは、生まれたばかりのぺリグレスの許へと言った方が正しいのかもしれない。
難産の上、予想よりも身体が小さく生まれてしまったぺリグレスへ、クリス自身愛情が増したのかもしれない。
後宮内でぺリグレスを愛おしそうに抱くクリスと、それを微笑ましそうに見つめるカッサンドラの姿がよく見られた。
そうして後宮内だけでなく、王宮いや、王子誕生に沸いたブランカフォルト国内でも今いちばんクリスの正妃に近い女性はカッサンドラと一時噂になったくらいなのだ。
そんな頃だった。
生後半年を迎えたぺリグレスが死線を彷徨うような出来事が起こった。
「これは如何いう事だっっ!?」
深夜遅くに政務を終えたクリスが自身の寝室で休んでいた所へ、その一報が知らされる。
第一王子ぺリグレスが危篤!?
俄かには信じられないとクリスは夜着のまま、取るものも取り敢えず急ぎ王宮の奥にある後宮へと転移した。
「ぺリグレス――――!?」
「あ、陛……下」
「陛下、王子様は今お眠りになられておられますれば、その様な大きな声でお部屋に入られまするな。ここには幼き病人が休まれておられるのですぞ」
「あぁ済まぬ侍医、だがぺリグレスの容体はっっ!?」
「今は何とも、今夜、明日一杯が山かと……」
「ぺリ……グレスぅぅ……あ、あたしが代わってやれるもんならどんなにかっっ!!」
クリスがカッサンドラの寝室へ姿を現すと最初に彼の視界が捉えたのは、寝室の中央にある寝台に横たわっている赤子にあるまじき生気のない、土気色をした顔と手。
昨日元気な姿で会ったばかりだと言うのにっ、別人としか思えないくらいぺリグレスの羸痩著明な様子には、流石のクリスも驚愕の色が隠せない!!
あんなに血色も良く柔らかなぷにぷにの肌が、今はもう何処にもそれが見当たらない。
力なくぐったりと、また苦しいのだろう。
そして速くて浅い呼吸が辛いのだろうか。
幼いぺリグレスは時折泣きたい様な表情を見せるが、その泣く力さえない様にも窺えた。
苦悶に満ちた表情と偶に『あ、えぇん、んぅ』と幾度となくくぐもった声を漏らすのみ。
そうして苦しんでいるぺリグレスの母親であるカッサンドラは、ただ息子の傍に張り付き啜り泣く事しか出来ない。
それもその筈。
母親であるカッサンドラはまだ17歳。
幾ら成人を迎えていようとも、その心はまだ大人になりきれてはいない。
それでも彼女は母親として何も出来なくとも、せめて苦しむ我が子の傍にいる事を選んだ。
またそんなカッサンドラを責める者はいない。
いないのだが……何故?
病にしてはあまりにも進行が早すぎる!!
幾ら小さな存在だとしてもだっっ。
目の前で苦悶の表情を浮かべる幼いぺリグレスを見る度に、クリスは何とも言えない遣り切れなさと心の中より幾つかの疑問が芽生えてくる。
如何してこんなに――――っっ!!
一体何が原因なのかっっ。
これは本当に病によるものなのか!?
もしかして……だがっっ!!
「陛下、ぺリグレス様はただ今身の内で戦っておられまするぞ。ブランケル王家の者として幼いながらもご立派に戦っておられますので……」
「侍医……済まない、つい取り乱してしまったな。こんな小さな存在が立派に戦っていると言うのに俺は……失格だな」
侍医長に諭され落ち着きを戻したクリスはそう呟く様に言うと、まだまだ苦しみの中にいるぺリグレスの頬をそっと撫でた。
そうして侍医達と王宮魔導師団付き聖魔導師達の治療によって、翌日の昼頃よりぺリグレスの状態は快方へと向かう。
しかしその快方へ向かう中実しやかに囁かれたのは、此度の病?の原因が不明である事。
いやいやいやいや原因が分かったからこそっ、ぺリグレスは快方へと向かっているのは事実。
だがその原因が公に公開されていないのもまた事実。
それからも何度となく原因不肖でぺリグレスは寝込んだり、はたまた怪我も多くなっていく中で第二の被害者、そうぺリグレスが誕生した翌年の事。
後宮には更に愛妾が入宮しそんな中で誕生した、サラサラの水色の髪にぱっちりと開いた金色の瞳を持つ第一王女アンティア・ダマラである。
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