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理由。
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「……ネージュ、ブラン。留守の間、ロティと母さんを頼んだぞ」
「もちろん、任せて!」
「ネージュじゃ頼りないからな、老いぼれなりにおれがしっかりするさ」
「いってらっしゃい、あなた。気を付けてね」
「いってらっしゃい。手紙とお土産、楽しみにしてるわ!」
「ああ、手紙も書くし電話もするさ。それじゃあ、行ってくるな」
ぼくがルミエール家に拾われて少しした頃、お父さんは仕事の出張とやらで長く家を空けることになった。
ぼくは大事なシャルロットたちを任せて貰ったことに嬉しくなって、気合いを入れる。もうすっかり家族の一員だと認めて貰ったような気がした。
「……次にお父さんに会えるのは、春頃ね。それまで、ブランも元気でいなくちゃね?」
すっかりお年寄りのブランは、気丈に振る舞ってはいたけれど確かに日に日に弱っていた。
それでも、お父さんから家族を任されて気合いを入れているのは、ぼくと同じだった。
その瞳に強い意思が煌めいているのを見て、ぼくはシャルロットに声をかける。
「大丈夫だよ、シャルロット。ブランはそう簡単に死ぬようなたまじゃないから」
「はっ、当然だろ。おれはこの十数年間、ルミエール家の地獄の番犬様だぜ」
「この家は地獄じゃなくて天国だから!」
「いや、それはそうだが……そっちのが強そうだろ!?」
「あらあら……ふふっ。ネージュとブランは、いつも本当にお話ししてるみたいね。最初はどうなるかと思ったけど、仲良しになれてよかったわ」
シャルロットには、ブランの言葉がわからない。こんなにおかしなことを言っているのだと話せたら、彼女はどんな顔をするだろうか。
「シャルロット、あなたもそろそろ学校に行かないと遅刻するわよ」
「はぁい……それじゃあ、行ってくるわ。ふたりとも、お留守番お願いね」
「わかった、ぼくに任せて欲しい!」
「いってらっしゃい、ロティ。気を付けるんだぜ」
お母さんに促されて、シャルロットは学校に行く支度をする。長い綺麗な金色の髪に赤いリボンを結んで、少し早い春の花のようにひらひらとしたスカートを揺らして、誰よりも愛らしい女の子は雪の積もった寒い家の外に出て行ってしまう。
温かな家での留守番は、のんびりとした幸せな時間だ。けれどぼくも彼女のように学校というものに行けたなら、家の外でも彼女の傍に居て守ることが出来るのに。ついそんな風に考えてしまう。
「ねえ……ブランはシャルロットが外でどう過ごしてるか知ってる?」
「ああ。少し前まで、おれはロティと一緒に通学路を歩いてたんだぜ」
「えっ、そうなの!?」
「さすがに校舎内には入れなかったけどな。散歩がてらの見送りと、終わる頃に丘の下で出迎えをしてた。……ロティは友達も多いんだが、みんなおれを可愛がってくれたぞ」
「そう、なんだ……友達、多い……」
「あんなに優しくて可愛い子を、周りが好きにならないはずがないだろう」
「……それはそう」
狭く暗い路地裏を抜けたぼくの世界には、この家しかない。その中でも、初めて手を差しのべてくれた彼女は特別で、あの日からぼくの光だった。
あんなにも素敵なシャルロットがみんなから愛されるのは当然で、それはいっそ誇らしくもあった。
なのに、ぼくにとって唯一無二のシャルロットには他にも世界があって、彼女を好きな人も多いのだという事実に、少しだけ胸が締め付けられた。
拾われただけで幸運だったのに、もっと親しくなりたいと感じてしまう。温かな家を覚めて欲しくない夢のように思っていたのに、ぼくの知らない彼女の居る外の世界に憧れてしまう。
与えられた幸福を当たり前に感じて、どんどん欲張りになってしまう自分を自覚して、望むばかりで何も出来ない自分が、なんだかとても嫌になった。
「ロティは勉強も運動も得意で、学校のみんなからも好かれてるみたいだな……よく色んな子から勉強会やら遊びに誘われてるのを見たもんだ」
「勉強……。ねえブラン、ぼく決めた。文字の勉強する」
「は……?」
「ほら、シャルロットがいつも机で勉強してるやつ見てさ、まだ読むのも書くのも出来ないけど……あれを覚えられたら、ぼくも学校に行けるかもしれない!」
「え、いや、それはどうだろうな……そもそもロティだって、次の冬には今の学校を卒業しちまうし……」
「ならまた冬が来る前に、何とかする!」
「ええ……?」
ぼくの宣言にブランはすっかり呆れたようにしてこちらを見てくるけれど、ぼくは本気だった。
「いや、そんなに外が気になるなら、おれの代わりにロティの送り迎えでもしてやりゃいいのに……」
「んん……それはすごく惹かれるけど、まだだめ。ちゃんと勉強して、自分に自信がついてから!」
「なんだそれ……」
こうしてぼくは彼女の隣を歩ける自信をつけるため、彼女が留守の間にこっそりと二階にあるシャルロットの部屋に忍び込み、机に広げられているノートや本を参考にして文字の勉強を始めることにした。
「……、……んん?」
しかしながら、独学では当然のように訳がわからなかった。元々文字に触れる環境に居なかったのだ。
文字の並びが言葉を表していること、言葉にはそれぞれ意味があること、口にする言葉の音にそれぞれ対応する文字があること、文字を組み合わせたものが単語になり、単語が組み合わさって文章になること。
わからないなりに、そんなひとつひとつを確かめながら、ぼくは勉強した。
元々人間の言葉や犬の言葉をそれぞれ聞き分けることは出来るのだ、語学に関してはおそらく得意な方に違いない。そう信じて地道に向き合うしかなかった。
お母さんがテレビを見て何かを話す時、そのテレビ画面に映っていた文字を見て、関連のありそうな単語を学んだ。
ブランがかつて散歩の時に見かけたという店の看板が新聞に広告を出していると、その店名の読み方や何を売っている店なのかを聞いた。
中でもシャルロットが音読をしている時は、一番勉強が捗った。今言葉にしているものが、そのまま開かれている教科書に文字列として書かれているのだから。
音読の宿題の時間に必ず後ろに居るぼくに気付いたシャルロットは、不思議そうに振り返る。
文字の勉強していることはまだ内緒だ。素知らぬふりをしたけれど、彼女は楽しそうに笑った。
「なあに、ネージュもお話が気になるの? 一緒に本でも読む?」
「えっ……いいの!?」
「ふふっ、何がいいかしら。読み聞かせなら絵本とか?」
願ってもない申し出に、ぼくは内緒だなんて忘れてつい食いついてしまう。けれどシャルロットはぼくが文字ではなく物語に興味を持っているのだと勘違いしているのだから、まあよしとしよう。
「どれがいいかしら。絵本、たくさんあるのよね。わたしのお気に入りはね……赤ずきん、白雪姫、シンデレラ、不思議の国のアリス、人魚姫……」
「さかな……!」
「あら、これがいいの? ふふ、ネージュはお魚好きだものね。人魚姫は食べるお魚じゃないけど……そうね、これにしましょうか」
あの夜と同じように久しぶりに一緒のベッドに寝転んで、俯せになる彼女の広げた絵本を隣で覗き込みながら、彼女の愛らしい声で紡がれる物語に耳を傾ける。
勉強なんて本来の目的はすっかり頭から抜け落ちて、その心地好い時間を謳歌したくなった。
「……こうして人魚姫は、王子様を刺すことなく、お姉さんたちの持ってきた短剣を捨てることに決めました。そして短剣と共にその身を海に投げ、そのまま泡となり消えてしまいました……」
けれど、彼女の紡ぐ物語を聞き終えた頃には、ぼくの胸の中にはまた別の気持ちが芽生えていた。
「え……これで、終わり? 王子様は、助けてくれて愛してくれた人魚姫のことを、何にも知らないまま……?」
「……声を失くした人魚姫は、最後まで真実や想いを伝えることも出来ないの……何も残せず消えてしまうなんて、悲しいわよね」
「そんな……」
開かれたままの最後のページの挿し絵は、泡の立ち上る深く冷たい海の中だった。その光の届かない暗い海の底は、かつての路地裏を思い出させる。
そして人魚姫の成れの果てである物言わぬ白い泡は真っ白なブランと重なって、ふと気付く。
彼は最期の時が近付いても、愛するひとたちと同じ言葉を交わせないのだ。そんな残酷な事実を突き付けられて、胸が締め付けられた。
「……」
ぼくが文字を勉強したい理由が、もうひとつ増えた瞬間だった。
次の冬までに、なんて悠長なことは言ってられない。春頃のお父さんとの再会すら危ぶまれるのだ。
彼がこの世界から消えてしまう前に、この冬が終わってしまう前に、成し遂げなくてはならない。
お父さんが出張先から送ってくる手紙を、シャルロットたちはいつも笑顔で読んでいた。手紙という手段なら、離れていても言葉は届くし、いつまでも残すことが出来る。
ルミエール家に来てからの十数年間のブランの想いを、彼の言葉そのままぼくが書き留めて、シャルロットたちに残したいと思った。
ぼくがこの家に来たのは、きっとそのためなのだとすら思った。
*******
「もちろん、任せて!」
「ネージュじゃ頼りないからな、老いぼれなりにおれがしっかりするさ」
「いってらっしゃい、あなた。気を付けてね」
「いってらっしゃい。手紙とお土産、楽しみにしてるわ!」
「ああ、手紙も書くし電話もするさ。それじゃあ、行ってくるな」
ぼくがルミエール家に拾われて少しした頃、お父さんは仕事の出張とやらで長く家を空けることになった。
ぼくは大事なシャルロットたちを任せて貰ったことに嬉しくなって、気合いを入れる。もうすっかり家族の一員だと認めて貰ったような気がした。
「……次にお父さんに会えるのは、春頃ね。それまで、ブランも元気でいなくちゃね?」
すっかりお年寄りのブランは、気丈に振る舞ってはいたけれど確かに日に日に弱っていた。
それでも、お父さんから家族を任されて気合いを入れているのは、ぼくと同じだった。
その瞳に強い意思が煌めいているのを見て、ぼくはシャルロットに声をかける。
「大丈夫だよ、シャルロット。ブランはそう簡単に死ぬようなたまじゃないから」
「はっ、当然だろ。おれはこの十数年間、ルミエール家の地獄の番犬様だぜ」
「この家は地獄じゃなくて天国だから!」
「いや、それはそうだが……そっちのが強そうだろ!?」
「あらあら……ふふっ。ネージュとブランは、いつも本当にお話ししてるみたいね。最初はどうなるかと思ったけど、仲良しになれてよかったわ」
シャルロットには、ブランの言葉がわからない。こんなにおかしなことを言っているのだと話せたら、彼女はどんな顔をするだろうか。
「シャルロット、あなたもそろそろ学校に行かないと遅刻するわよ」
「はぁい……それじゃあ、行ってくるわ。ふたりとも、お留守番お願いね」
「わかった、ぼくに任せて欲しい!」
「いってらっしゃい、ロティ。気を付けるんだぜ」
お母さんに促されて、シャルロットは学校に行く支度をする。長い綺麗な金色の髪に赤いリボンを結んで、少し早い春の花のようにひらひらとしたスカートを揺らして、誰よりも愛らしい女の子は雪の積もった寒い家の外に出て行ってしまう。
温かな家での留守番は、のんびりとした幸せな時間だ。けれどぼくも彼女のように学校というものに行けたなら、家の外でも彼女の傍に居て守ることが出来るのに。ついそんな風に考えてしまう。
「ねえ……ブランはシャルロットが外でどう過ごしてるか知ってる?」
「ああ。少し前まで、おれはロティと一緒に通学路を歩いてたんだぜ」
「えっ、そうなの!?」
「さすがに校舎内には入れなかったけどな。散歩がてらの見送りと、終わる頃に丘の下で出迎えをしてた。……ロティは友達も多いんだが、みんなおれを可愛がってくれたぞ」
「そう、なんだ……友達、多い……」
「あんなに優しくて可愛い子を、周りが好きにならないはずがないだろう」
「……それはそう」
狭く暗い路地裏を抜けたぼくの世界には、この家しかない。その中でも、初めて手を差しのべてくれた彼女は特別で、あの日からぼくの光だった。
あんなにも素敵なシャルロットがみんなから愛されるのは当然で、それはいっそ誇らしくもあった。
なのに、ぼくにとって唯一無二のシャルロットには他にも世界があって、彼女を好きな人も多いのだという事実に、少しだけ胸が締め付けられた。
拾われただけで幸運だったのに、もっと親しくなりたいと感じてしまう。温かな家を覚めて欲しくない夢のように思っていたのに、ぼくの知らない彼女の居る外の世界に憧れてしまう。
与えられた幸福を当たり前に感じて、どんどん欲張りになってしまう自分を自覚して、望むばかりで何も出来ない自分が、なんだかとても嫌になった。
「ロティは勉強も運動も得意で、学校のみんなからも好かれてるみたいだな……よく色んな子から勉強会やら遊びに誘われてるのを見たもんだ」
「勉強……。ねえブラン、ぼく決めた。文字の勉強する」
「は……?」
「ほら、シャルロットがいつも机で勉強してるやつ見てさ、まだ読むのも書くのも出来ないけど……あれを覚えられたら、ぼくも学校に行けるかもしれない!」
「え、いや、それはどうだろうな……そもそもロティだって、次の冬には今の学校を卒業しちまうし……」
「ならまた冬が来る前に、何とかする!」
「ええ……?」
ぼくの宣言にブランはすっかり呆れたようにしてこちらを見てくるけれど、ぼくは本気だった。
「いや、そんなに外が気になるなら、おれの代わりにロティの送り迎えでもしてやりゃいいのに……」
「んん……それはすごく惹かれるけど、まだだめ。ちゃんと勉強して、自分に自信がついてから!」
「なんだそれ……」
こうしてぼくは彼女の隣を歩ける自信をつけるため、彼女が留守の間にこっそりと二階にあるシャルロットの部屋に忍び込み、机に広げられているノートや本を参考にして文字の勉強を始めることにした。
「……、……んん?」
しかしながら、独学では当然のように訳がわからなかった。元々文字に触れる環境に居なかったのだ。
文字の並びが言葉を表していること、言葉にはそれぞれ意味があること、口にする言葉の音にそれぞれ対応する文字があること、文字を組み合わせたものが単語になり、単語が組み合わさって文章になること。
わからないなりに、そんなひとつひとつを確かめながら、ぼくは勉強した。
元々人間の言葉や犬の言葉をそれぞれ聞き分けることは出来るのだ、語学に関してはおそらく得意な方に違いない。そう信じて地道に向き合うしかなかった。
お母さんがテレビを見て何かを話す時、そのテレビ画面に映っていた文字を見て、関連のありそうな単語を学んだ。
ブランがかつて散歩の時に見かけたという店の看板が新聞に広告を出していると、その店名の読み方や何を売っている店なのかを聞いた。
中でもシャルロットが音読をしている時は、一番勉強が捗った。今言葉にしているものが、そのまま開かれている教科書に文字列として書かれているのだから。
音読の宿題の時間に必ず後ろに居るぼくに気付いたシャルロットは、不思議そうに振り返る。
文字の勉強していることはまだ内緒だ。素知らぬふりをしたけれど、彼女は楽しそうに笑った。
「なあに、ネージュもお話が気になるの? 一緒に本でも読む?」
「えっ……いいの!?」
「ふふっ、何がいいかしら。読み聞かせなら絵本とか?」
願ってもない申し出に、ぼくは内緒だなんて忘れてつい食いついてしまう。けれどシャルロットはぼくが文字ではなく物語に興味を持っているのだと勘違いしているのだから、まあよしとしよう。
「どれがいいかしら。絵本、たくさんあるのよね。わたしのお気に入りはね……赤ずきん、白雪姫、シンデレラ、不思議の国のアリス、人魚姫……」
「さかな……!」
「あら、これがいいの? ふふ、ネージュはお魚好きだものね。人魚姫は食べるお魚じゃないけど……そうね、これにしましょうか」
あの夜と同じように久しぶりに一緒のベッドに寝転んで、俯せになる彼女の広げた絵本を隣で覗き込みながら、彼女の愛らしい声で紡がれる物語に耳を傾ける。
勉強なんて本来の目的はすっかり頭から抜け落ちて、その心地好い時間を謳歌したくなった。
「……こうして人魚姫は、王子様を刺すことなく、お姉さんたちの持ってきた短剣を捨てることに決めました。そして短剣と共にその身を海に投げ、そのまま泡となり消えてしまいました……」
けれど、彼女の紡ぐ物語を聞き終えた頃には、ぼくの胸の中にはまた別の気持ちが芽生えていた。
「え……これで、終わり? 王子様は、助けてくれて愛してくれた人魚姫のことを、何にも知らないまま……?」
「……声を失くした人魚姫は、最後まで真実や想いを伝えることも出来ないの……何も残せず消えてしまうなんて、悲しいわよね」
「そんな……」
開かれたままの最後のページの挿し絵は、泡の立ち上る深く冷たい海の中だった。その光の届かない暗い海の底は、かつての路地裏を思い出させる。
そして人魚姫の成れの果てである物言わぬ白い泡は真っ白なブランと重なって、ふと気付く。
彼は最期の時が近付いても、愛するひとたちと同じ言葉を交わせないのだ。そんな残酷な事実を突き付けられて、胸が締め付けられた。
「……」
ぼくが文字を勉強したい理由が、もうひとつ増えた瞬間だった。
次の冬までに、なんて悠長なことは言ってられない。春頃のお父さんとの再会すら危ぶまれるのだ。
彼がこの世界から消えてしまう前に、この冬が終わってしまう前に、成し遂げなくてはならない。
お父さんが出張先から送ってくる手紙を、シャルロットたちはいつも笑顔で読んでいた。手紙という手段なら、離れていても言葉は届くし、いつまでも残すことが出来る。
ルミエール家に来てからの十数年間のブランの想いを、彼の言葉そのままぼくが書き留めて、シャルロットたちに残したいと思った。
ぼくがこの家に来たのは、きっとそのためなのだとすら思った。
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