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3章 依存国ツィーシャ
魔法付与 (リュカオンside)
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「っはぁ~!生き返りましたー!」
満足そうにお茶を飲んでくつろぐ女性と向かい合わせで僕と『シャルア』は座った。
勝手に上がられて勝手にお茶を飲む時点で既に帰ってもらいたい。
「………で、僕を尾けた理由を教えてもらおうか?」
流石に気になって、少しいらだちながら彼女に問うと、「あっ!ご紹介がまだでした!」と言って居住まいを正した。
いや、紹介は求めてないんだけど。
「私、キルナと言います!今は27歳です!世界中の出来事を調べて旅をしてます。それで、今日も今日とてインタビューとかをしていたら、お兄さんのローブに出会ったんです」
「………ローブ?って、いま僕が着てるこれのこと?」
僕がキルナという女性にそうやって聞くと、大きく頷いて身を乗り出してきた。
「はいっ!そのローブ、2つの魔法付与が施されていますが、術者が違うじゃないですか。文字の魔法付与はよく見ますが、線形魔法付与式は久しぶりにお目にかかりました!
とても緻密で高度で解析が難解な素晴らしい出来で本当に感動して……餌みたいに追いかけていたらここに来ていたという次第です」
えへ、と言って照れながらも早口で話すキルナの言葉に、僕と『シャルア』は顔を見合わせた。
多分同じところに引っかかったみたいだ。
『シャルア』が控えめに話しかける。
「あの……いま言ってた線形魔法付与式っていうものは、キルナさんは他で見たことがあるんですか?」
思ったとおり、僕と『シャルア』は同じ疑問を持っていた。
このローブに施された外見変化の付与式は『シャルア』がしてくれたものだ。
僕は、後にも先にも『シャルア』だけの付与式なんだと思っていた。
でも、今キルナは「久しぶりに見た」とはっきり言った。
つまり、どこかで『シャルア』と同じ魔法の使い方をする人がいるということだ。
一体どこで、誰が、どうやって使っていたのか知りたい。
僕と『シャルア』がキルナの返答を待っていると、キルナはまた明るい声で答えた。
「はい!……といっても、かなり昔のことでどこで見たかは忘れてしまいましたが、似たような線形魔法陣を見たことがあります。
結構珍しいことは覚えているんですけどね。どこだったかな~?」
「それ、って!アナスタシア王国とかではない、ですか?」
『シャルア』は相当気になっているみたいで、身を乗り出してキルナに質問した。
確かに、気になる。
『シャルア』は孤児で、魔法適正検査の結果からあの場所に行ったはずだから、親を知らない。
血縁を気にするそぶりは見たことがなかったけど、やっぱり気になるんだろうな。
思わず聞き出す『シャルア』にキルナは最初少し驚いたが、すぐに首を傾げた。
「んー、アナスタシアではないと思います。最近私はアナスタシアについて調べているので、最近のことだったら知ってるはずなんです。
調べている限り、そういったものは見つかってません」
「調べ不足だからわからないだけ、ではないんですか?」
「そうですね。記憶が正しければ、線形魔法自体とても希少で、書物は、私が昔見たそこでしか保管されてなかったと思います。
アナスタシアの王城などの遺構から発見される書物は魔法文字の魔法書しかなかったと聞いています。可能性は低いと思います」
「………そう、ですか」
『シャルア』はさっきまでの勢いを落として座り直した。
アナスタシアで『シャルア』よりは人と関わってきた僕でも知らなかったのだから、秘匿されていない限りわかるはずがない。
でも、王城から出てきたものにもそれらしきものがないならば、アナスタシアは『シャルア』の親がいたところではないということだ。
一体どこで生まれて、どんな経緯であそこに置いていかれたのか。
僕と『シャルア』が押し黙ると、キルナが口を開く。
「それにしても、聞いてくる内容からして……この線形魔法付与式はあなたのものですね!?」
確認するように問われた『シャルア』は僕に大丈夫かどうか判断をあおってきた。
僕は瞬きを一回して許可した。
「まぁ…………はい」
「わー!すごいです!ここでまた出会えるなんて奇跡ですよ!!付与しているところを見せてほしいです!」
空気の温度差のひどい中でキルナは目を輝かせながら『シャルア』に頼みこむ。
空気の読めない人か………。
僕が少し、いやかなり呆れている中で、『シャルア』は自分のお茶の入ったカップを置くソーサーを手に取った。
ソーサーを裏返して真ん中に指を一本乗せた。
『付与』
『シャルア』のたった一言で、ソーサーに乗せた指から広がるように魔法陣が現れて、溶けてなくなるようにソーサーに吸い込まれていった。
なんの付与をしたのか示そうと、『シャルア』は自分の冷えたカップをソーサーに乗せた。
少しして、カップの中から湯気がのぼった。
どうやら、温度調節の付与をしたみたいだ。
結構便利だな、と感心して見ていると、キルナが盛大な拍手をした。
突然大きな拍手が起こって、驚いてキルナのほうを見ると、キルナは嬉し涙を流しながらずっと拍手していた。
「すごい………昔見たときは何が起こったのかわからなくてぼーっと見てたんです。後からすごいことに気づいて、でも見れなくて、結構後悔してたのですが、こうして見ることができるなんて………天国ですか、ここは?最高すぎます………」
「あ………それは、よかったです……?」
キルナの情緒についていけないといった表情で『シャルア』がそう答えると、キルナは僕と『シャルア』の手を取った。
「本当にありがとうございます!あなた方は私の人生の恩人です!今日のことを書き留めたいので、お二人のことも教えてくださいませんか?」
僕と『シャルア』はまた顔を見合わせた。
満足そうにお茶を飲んでくつろぐ女性と向かい合わせで僕と『シャルア』は座った。
勝手に上がられて勝手にお茶を飲む時点で既に帰ってもらいたい。
「………で、僕を尾けた理由を教えてもらおうか?」
流石に気になって、少しいらだちながら彼女に問うと、「あっ!ご紹介がまだでした!」と言って居住まいを正した。
いや、紹介は求めてないんだけど。
「私、キルナと言います!今は27歳です!世界中の出来事を調べて旅をしてます。それで、今日も今日とてインタビューとかをしていたら、お兄さんのローブに出会ったんです」
「………ローブ?って、いま僕が着てるこれのこと?」
僕がキルナという女性にそうやって聞くと、大きく頷いて身を乗り出してきた。
「はいっ!そのローブ、2つの魔法付与が施されていますが、術者が違うじゃないですか。文字の魔法付与はよく見ますが、線形魔法付与式は久しぶりにお目にかかりました!
とても緻密で高度で解析が難解な素晴らしい出来で本当に感動して……餌みたいに追いかけていたらここに来ていたという次第です」
えへ、と言って照れながらも早口で話すキルナの言葉に、僕と『シャルア』は顔を見合わせた。
多分同じところに引っかかったみたいだ。
『シャルア』が控えめに話しかける。
「あの……いま言ってた線形魔法付与式っていうものは、キルナさんは他で見たことがあるんですか?」
思ったとおり、僕と『シャルア』は同じ疑問を持っていた。
このローブに施された外見変化の付与式は『シャルア』がしてくれたものだ。
僕は、後にも先にも『シャルア』だけの付与式なんだと思っていた。
でも、今キルナは「久しぶりに見た」とはっきり言った。
つまり、どこかで『シャルア』と同じ魔法の使い方をする人がいるということだ。
一体どこで、誰が、どうやって使っていたのか知りたい。
僕と『シャルア』がキルナの返答を待っていると、キルナはまた明るい声で答えた。
「はい!……といっても、かなり昔のことでどこで見たかは忘れてしまいましたが、似たような線形魔法陣を見たことがあります。
結構珍しいことは覚えているんですけどね。どこだったかな~?」
「それ、って!アナスタシア王国とかではない、ですか?」
『シャルア』は相当気になっているみたいで、身を乗り出してキルナに質問した。
確かに、気になる。
『シャルア』は孤児で、魔法適正検査の結果からあの場所に行ったはずだから、親を知らない。
血縁を気にするそぶりは見たことがなかったけど、やっぱり気になるんだろうな。
思わず聞き出す『シャルア』にキルナは最初少し驚いたが、すぐに首を傾げた。
「んー、アナスタシアではないと思います。最近私はアナスタシアについて調べているので、最近のことだったら知ってるはずなんです。
調べている限り、そういったものは見つかってません」
「調べ不足だからわからないだけ、ではないんですか?」
「そうですね。記憶が正しければ、線形魔法自体とても希少で、書物は、私が昔見たそこでしか保管されてなかったと思います。
アナスタシアの王城などの遺構から発見される書物は魔法文字の魔法書しかなかったと聞いています。可能性は低いと思います」
「………そう、ですか」
『シャルア』はさっきまでの勢いを落として座り直した。
アナスタシアで『シャルア』よりは人と関わってきた僕でも知らなかったのだから、秘匿されていない限りわかるはずがない。
でも、王城から出てきたものにもそれらしきものがないならば、アナスタシアは『シャルア』の親がいたところではないということだ。
一体どこで生まれて、どんな経緯であそこに置いていかれたのか。
僕と『シャルア』が押し黙ると、キルナが口を開く。
「それにしても、聞いてくる内容からして……この線形魔法付与式はあなたのものですね!?」
確認するように問われた『シャルア』は僕に大丈夫かどうか判断をあおってきた。
僕は瞬きを一回して許可した。
「まぁ…………はい」
「わー!すごいです!ここでまた出会えるなんて奇跡ですよ!!付与しているところを見せてほしいです!」
空気の温度差のひどい中でキルナは目を輝かせながら『シャルア』に頼みこむ。
空気の読めない人か………。
僕が少し、いやかなり呆れている中で、『シャルア』は自分のお茶の入ったカップを置くソーサーを手に取った。
ソーサーを裏返して真ん中に指を一本乗せた。
『付与』
『シャルア』のたった一言で、ソーサーに乗せた指から広がるように魔法陣が現れて、溶けてなくなるようにソーサーに吸い込まれていった。
なんの付与をしたのか示そうと、『シャルア』は自分の冷えたカップをソーサーに乗せた。
少しして、カップの中から湯気がのぼった。
どうやら、温度調節の付与をしたみたいだ。
結構便利だな、と感心して見ていると、キルナが盛大な拍手をした。
突然大きな拍手が起こって、驚いてキルナのほうを見ると、キルナは嬉し涙を流しながらずっと拍手していた。
「すごい………昔見たときは何が起こったのかわからなくてぼーっと見てたんです。後からすごいことに気づいて、でも見れなくて、結構後悔してたのですが、こうして見ることができるなんて………天国ですか、ここは?最高すぎます………」
「あ………それは、よかったです……?」
キルナの情緒についていけないといった表情で『シャルア』がそう答えると、キルナは僕と『シャルア』の手を取った。
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