追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

文字の大きさ
122 / 125
3章 依存国ツィーシャ

打開策

しおりを挟む
泣いている大体は5歳かそれより下かといったくらいの子で、歳の高い子どもがそれをあやしているが効果がないようだ。
小さな年頃では暗くて狭く寒い牢屋は堪えるだろう。泣くのも当然だ。
あやしていたほうも、気を強く保とうとしているが、その手は震え今にも泣きそうになっている。

クレアはまた放っておけなかった。
子どもたちに近づくと、指を鳴らした。
すると、アルンに見せたときよりは二回りほど小さな氷のうさぎがあらわれた。
子どもたちは唐突の魔法に驚いて、泣くのも忘れてうさぎに見入っていた。

「「「わぁ~………」」」

そして、クレアは首輪をつけていても魔法は使えることに安堵した。
最悪首輪が取れなくても、出力は落ちているが魔法を使って脱出できるとわかったからだ。
子どもたちが泣き止んだ姿にも安心していると、アルンがクレアの服の袖を引っ張った。
子どもたちとは反対方向に座っていたアルンを振り返ると、アルンはまだ心配そうにクレアを見ていた。
先ほど何かを言いかけていたことを思い出したクレアはアルンのほうをしっかりと向いた。

「……さっき、何か言おうとしていたよね。教えてほしいな」

クレアの問いかけに、アルンはいっそうクレアの服の袖を強く握った。
震えるアルンの手を優しく包んで、アルンが話してくれるのを待つ。
アルンは涙をためながら口を開いた。

「おねえちゃん……その……くび、のっやつで、しんじゃう……っから、こわく、なって………!」
「………これで死ぬ?」

耐えきれなくなったようで、アルンは泣きながら強く何度も頷いた。
まともに喋れないくらいぐずぐずに泣くアルンに理由を聞けない。
クレアがアルンを落ち着かせようと何かないか考えていると、後ろから声が上がった。

「あ、の………それ、本当に死んじゃいます」
「……どうしてか教えてほしいな」

見ると、先ほど小さな子をあやしていた年上の子どもの一人だった。
10歳くらいの見た目の女の子は、クレアのことは完全に信じきってはいないようだが、子どもをあやしたことが功を奏したのか少しだけ信頼を寄せているようだった。
クレアは怖がらせないように、できるだけ微笑んで距離を縮めずにその場から問いかけた。
女の子は怯えていたが、クレアが優しく問いかけたおかげか少しだけ肩の力を抜いた。

「それ……少し前に向こうの部屋で、同じものをつけた人が、しわしわになって死んじゃったんです。そのとき初めて取れて…………『全部吸い取った!』って、さっき来た人が喜んでいたんです」
「………なるほど。ありがとう」

クレアは女の子の答えで理解したようで、また笑ってお礼を言った。
女の子は過剰なくらいまで首を振って子どもたちの面倒を見るのに専念しだした。
アルンが泣き止まない理由もわかった。

どうやら、この首輪は魔力をすべて吸い取る性質があるようだ。
すべて吸い取るまで取れない。
それはつまり死を意味する。
魔力を持つものは魔力が枯渇すると体調が悪くなるときがある。枯渇して生命力にまで干渉しだすと、それさえ枯渇したときに待つのは死のみだ。
目の前でその惨状でも見たのかもしれない。
子どもには酷な光景だ。

クレアは理解したら早かった。
この首輪を外す術を持っていたからだ。

アルンの頭をまた撫でると、クレアは懐からついさっき買ったばかりの魔導具を取り出した。
一定時間魔力を消す魔導具。
これがすぐ役に立つとは思わなかった。
この魔導具自体は使用者の魔力が流れないと使えないが、この首輪は魔法が使えるため魔力も流すことができる。
クレアは魔法石の中の棒が倒れるための最小の魔力をこめた。



ガチャン



そして次の瞬間、音を立てて首輪が外れて地面に落ちた。
首の閉塞感がなくなり、吸われていた感覚もなくなり、クレアは一安心した。
すすり泣いていたアルンの泣き声が聞こえなくなり横を向くと、アルンは落ちてしまいそうなほど大きく目を見開いていた。

「ね、大丈夫でしょ」
「おねえちゃん、ほんとにすごいまほうつかいさんだ………!」

クレアが得意げに言ってみせると、アルンは初めて会ったときのように目を輝かせていた。
どうやら、後ろにいる他の子どもたちの心もつかんだようで、口々に「すごいすごい!」と騒ぎだしてしまったため、クレアは指を立てて静かにしてもらった。

もう一度氷のうさぎをつくってみると、いつもと同じ大きさのうさぎがあらわれたため、大丈夫だろう。
ひとまず、首輪が取れたことで魔法は存分に使えるようになった。

あとはここから出る方法を考えるだけだ。
だが、現状クレアの半分の魔力は十分あるほうだとは思うが、それで突破できるかは未知数だ。
相手の数、建物の構造、今いる場所などがわからない上で動くのはよくない。
それに子どもたちがいるため、ひとりで抜け出すこととはわけが違う。

(外と中からで撹乱すればなんとかなるかな………)

クレアが策を考えて浮かんだのはリュカオンの協力だった。
リュカオンが外から、クレアが中からかき乱せば、お互いの動きを理解し合っている二人でなら脱出も不可能ではない気がした。
それができればいいのだが。

問題なのはどうやって伝えるかだった。

伝達用の水晶はいつもトランクに入れており、そのトランクはリュカオンのいるあの家に置いてきていた。
魔法で伝えることもできるが、自分がどこにいるかがわからないため、遠かった場合の魔力の消費は考えたくなかった。
しかし、魔法で伝える以外に方法はない。


一体どうすればいいのだろうか。


「おねえちゃん………?」

八方塞がりの状態に焦りだしていたクレアの手を握ったのは、アルンだった。
アルンはこちらを心配そうに見て様子をうかがっている。

クレアはアルンを安心させようと思って笑いかけたとき、ふと思い出した。




『うん!銀のおねえちゃんありがとう!』
『すごい………………あっ!おねえちゃん水いろだ!』
『………おねえちゃん、ぼくのいうことほんとだとおもってくれるの?』


『えへへ、ぼくおなじ人はじめて!』




クレアは真剣な顔つきでアルンを見た。

「アルンくん、お願いしたいことがあるの。
君にしかできないことなんだけど……」
「……?」

クレアの言葉にアルンは首を傾げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】 https://ncode.syosetu.com/n9071il/ 異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。 貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。 イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。 このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん? 別にいっか! 聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね! 重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!

ソロキャンする武装系女子ですが婚約破棄されたので傷心の旅に出たら——?

ルーシャオ
恋愛
ソロキャンする武装系女子ですが婚約破棄されたので傷心の旅に出たら——? モーリン子爵家令嬢イグレーヌは、双子の姉アヴリーヌにおねだりされて婚約者を譲り渡す羽目に。すっかり姉と婚約者、それに父親に呆れてイグレーヌは別荘で静養中の母のもとへ一人旅をすることにした。ところが途中、武器を受け取りに立ち寄った騎士領で騎士ブルックナーから騎士見習い二人を同行させて欲しいと頼まれる。 そのころ、イグレーヌの従姉妹であり友人のド・ベレト公女マリアンはイグレーヌの扱いに憤慨し、アヴリーヌと婚約者へとある謀略を仕掛ける。そして、宮廷舞踏会でしっかりと謀略の種は花開くことに——。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
女主人公です(主人公は恋愛しません)。18歳。ダンジョンのある現代社会で、探索者としてデビューしたルミは、ダンジョン配信を始めることにした。近くの町に初級ダンジョンがあると聞いてやってきたが、ルミが発見したのは超難関ダンジョンだった。しかしそうとは知らずに、ルミはダンジョン攻略を開始し、ハイランクの魔物たちを相手に無双する。その様子は全て生配信でネットに流され、SNSでバズりまくり、同接とチャンネル登録数は青天井に伸び続けるのだった。

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

処理中です...