43 / 119
2章 魔法の国ルクレイシア
北かぶれの国
しおりを挟む
「………うん、そう。あんまり波風立てないつもりだけど、何かあったら連絡するからちゃんと応じてね」
『はぁ?なんで俺がお前に、』
ブツッ。
連絡用の水晶玉の中で相手が面倒そうにしたのを見て、彼女は連絡を一方的に切った。
鳥のようにすいすいと飛んでいるのは、銀髪を高いところでひとつにまとめ、冬の寒空のような淡い水色の瞳を持つ人物───クレアだった。
クレアは目的地であるルクレイシアの隣の国まで商人に送ってもらい、残りの道をひとっ飛びで向かっている。
予定よりも遅れてしまっているため、時短をしようと思った結果だ。
功を奏してか、クレアが飛んで数時間でルクレイシアの結界が見えてきた。
クレアはゆっくりと地上に降り立ち、フードを被った。
検閲の列は二手分かれていた。
「観光客はコチラ」 「魔法使いはコチラ」
しかし、魔法使いの列に並ぶ者は驚くほど少ない。
観光客の列を見てみると、相当な数の魔法使いが並んでいるのがわかる。
クレアは道中でルクレイシアについて聞いたことを思い出した。
ルクレイシアは『魔法の国』と言われるくらいには魔法が栄えているが、その魔法は『一般的に大陸に普及している魔法』じゃない限り、あまりいい反応をされないという。
簡単に言えば魔法陣や詠唱が独自のものであると馬鹿にされるみたいだ。
きっと観光客側の列に並んだ魔法使いたちはプライド故か、自分の魔法にいい反応がもらえないことを恐れたのだろう。
クレアは先ほどの連絡で「波風を立てない」と言った矢先、あまり目立つのもよくないと考えて観光客側の列に並んだ。
観光客なのは確かだからだ。
「お名前は?」
「クレア=モルダナティスです」
「ご職業は?」
「魔法使いです」
「…………わかりました。ではこちらのスタンプを押させていただきます」
検閲官はクレアが職業を言った途端睨んできたが、すぐに自分の職務を全うする。
手の甲にスタンプを押されるが、スタンプの跡は見えなかった。
「あの、これを押すと何が起きるんですか?」
「あれ、わからないんですか?このスタンプは『魔法文字』が読める人は何も聞いてこないのですが……魔法使いのくせに『魔法文字』も読めないんですね」
明らかに馬鹿にされている。
クレアを見下す検閲官は、さも当然のように自分を上だと思ったらしい。
普通、誰だってこんな馬鹿にされれば苛立つものだ。
しかし、クレアは何も感じていなかった。
ただただ、スタンプを押された自分の手の甲を見ていた。
そして、検閲官に向かって笑顔を向けた。
「すみません、まだまだ未熟なもので。それで、どんな効果があるんですか?」
馬鹿にした言動がまったく効いていないことが気に食わなかったのか、検閲官は小さく舌打ちして教えてくれた。
「このスタンプは結界に受容される魔法がかけられていて、これを押されることでルクレイシア内に入ることができます」
「へぇ~、便利なんですね。ありがとうございます」
クレアはそのまま笑顔で結界を通過した。
「……………うわあ」
結界を通ってクレアは感嘆の声を上げた。
結界の外からだと擦りガラスみたいなフィルターがかかって見えなかったが、中に入った途端に視界が明瞭になった。
さすがは魔法の国と言ったところか。
魔法で飛んでいる人がたくさんいる。
魔法関連の本や道具が売られている。
店や配達など仕事に就いているルクレイシアの国民は、皆魔法を使って仕事を行っている。
右を見ても魔法、左を見ても魔法。
どこを見ても魔法だらけで、魔法を全面に出して売り込んでいることがよくわかる。
恥ずかしいくらいに、だ。
クレアは最初こそ感動したものの、あたりを見回して魔法ばかりだったことに、ひどく冷めた表情を見せた。
国民の中に魔法が使えない人がいない。
魔力はほぼ遺伝だと言われているが、正しいことはわかっておらず当てはまらない人は結構な数がいる。
だというのに、この国に入ってから一度も魔法が使えない国民を見ないのはおかしいのだ。
よく見てみれば、クレア以外にもルクレイシアを残念そうな目で見る者がしばしば見られる。
北方特有の服を着ていることから、北方から来た人間だとわかった。
北方を見てしまうと、この国が『北かぶれ』していることがよくわかる。
北方は、大陸一魔法に長けた地方だ。
寒さに耐えるための強靭な体力と魔法を幼い頃から叩き込まれる。
それ故に魔法を極める民がほとんどで、『杖なしの魔法使い』の輩出率が高い。
そして北方にある魔法使いの学校はエリートしか入れないと言われるほどの難関校で、卒業した実績だけで大陸中から引っ張りだこになる。
クレアが所属していると言った「大陸魔法使い協会本部」も北方にある。
北方とはいえ、2国しかなく、ほとんどはグラント公国にある。
グラント公国で世話になっていた時期があるクレアは、そこまで交流はなかったものの、大陸一魔法に長けた国の様子をこの目で見てきたのだ。
どうも劣って見えてしまうのはルクレイシアにも原因があるが、グラント公国が発達しすぎているのもあるかもしれない。
(いつのまにか、目が肥えていたみたい)
クレアはため息をついた。
一旦宿を取ることにしたようだ。
『はぁ?なんで俺がお前に、』
ブツッ。
連絡用の水晶玉の中で相手が面倒そうにしたのを見て、彼女は連絡を一方的に切った。
鳥のようにすいすいと飛んでいるのは、銀髪を高いところでひとつにまとめ、冬の寒空のような淡い水色の瞳を持つ人物───クレアだった。
クレアは目的地であるルクレイシアの隣の国まで商人に送ってもらい、残りの道をひとっ飛びで向かっている。
予定よりも遅れてしまっているため、時短をしようと思った結果だ。
功を奏してか、クレアが飛んで数時間でルクレイシアの結界が見えてきた。
クレアはゆっくりと地上に降り立ち、フードを被った。
検閲の列は二手分かれていた。
「観光客はコチラ」 「魔法使いはコチラ」
しかし、魔法使いの列に並ぶ者は驚くほど少ない。
観光客の列を見てみると、相当な数の魔法使いが並んでいるのがわかる。
クレアは道中でルクレイシアについて聞いたことを思い出した。
ルクレイシアは『魔法の国』と言われるくらいには魔法が栄えているが、その魔法は『一般的に大陸に普及している魔法』じゃない限り、あまりいい反応をされないという。
簡単に言えば魔法陣や詠唱が独自のものであると馬鹿にされるみたいだ。
きっと観光客側の列に並んだ魔法使いたちはプライド故か、自分の魔法にいい反応がもらえないことを恐れたのだろう。
クレアは先ほどの連絡で「波風を立てない」と言った矢先、あまり目立つのもよくないと考えて観光客側の列に並んだ。
観光客なのは確かだからだ。
「お名前は?」
「クレア=モルダナティスです」
「ご職業は?」
「魔法使いです」
「…………わかりました。ではこちらのスタンプを押させていただきます」
検閲官はクレアが職業を言った途端睨んできたが、すぐに自分の職務を全うする。
手の甲にスタンプを押されるが、スタンプの跡は見えなかった。
「あの、これを押すと何が起きるんですか?」
「あれ、わからないんですか?このスタンプは『魔法文字』が読める人は何も聞いてこないのですが……魔法使いのくせに『魔法文字』も読めないんですね」
明らかに馬鹿にされている。
クレアを見下す検閲官は、さも当然のように自分を上だと思ったらしい。
普通、誰だってこんな馬鹿にされれば苛立つものだ。
しかし、クレアは何も感じていなかった。
ただただ、スタンプを押された自分の手の甲を見ていた。
そして、検閲官に向かって笑顔を向けた。
「すみません、まだまだ未熟なもので。それで、どんな効果があるんですか?」
馬鹿にした言動がまったく効いていないことが気に食わなかったのか、検閲官は小さく舌打ちして教えてくれた。
「このスタンプは結界に受容される魔法がかけられていて、これを押されることでルクレイシア内に入ることができます」
「へぇ~、便利なんですね。ありがとうございます」
クレアはそのまま笑顔で結界を通過した。
「……………うわあ」
結界を通ってクレアは感嘆の声を上げた。
結界の外からだと擦りガラスみたいなフィルターがかかって見えなかったが、中に入った途端に視界が明瞭になった。
さすがは魔法の国と言ったところか。
魔法で飛んでいる人がたくさんいる。
魔法関連の本や道具が売られている。
店や配達など仕事に就いているルクレイシアの国民は、皆魔法を使って仕事を行っている。
右を見ても魔法、左を見ても魔法。
どこを見ても魔法だらけで、魔法を全面に出して売り込んでいることがよくわかる。
恥ずかしいくらいに、だ。
クレアは最初こそ感動したものの、あたりを見回して魔法ばかりだったことに、ひどく冷めた表情を見せた。
国民の中に魔法が使えない人がいない。
魔力はほぼ遺伝だと言われているが、正しいことはわかっておらず当てはまらない人は結構な数がいる。
だというのに、この国に入ってから一度も魔法が使えない国民を見ないのはおかしいのだ。
よく見てみれば、クレア以外にもルクレイシアを残念そうな目で見る者がしばしば見られる。
北方特有の服を着ていることから、北方から来た人間だとわかった。
北方を見てしまうと、この国が『北かぶれ』していることがよくわかる。
北方は、大陸一魔法に長けた地方だ。
寒さに耐えるための強靭な体力と魔法を幼い頃から叩き込まれる。
それ故に魔法を極める民がほとんどで、『杖なしの魔法使い』の輩出率が高い。
そして北方にある魔法使いの学校はエリートしか入れないと言われるほどの難関校で、卒業した実績だけで大陸中から引っ張りだこになる。
クレアが所属していると言った「大陸魔法使い協会本部」も北方にある。
北方とはいえ、2国しかなく、ほとんどはグラント公国にある。
グラント公国で世話になっていた時期があるクレアは、そこまで交流はなかったものの、大陸一魔法に長けた国の様子をこの目で見てきたのだ。
どうも劣って見えてしまうのはルクレイシアにも原因があるが、グラント公国が発達しすぎているのもあるかもしれない。
(いつのまにか、目が肥えていたみたい)
クレアはため息をついた。
一旦宿を取ることにしたようだ。
11
あなたにおすすめの小説
職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります
チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます!
ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。
この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。
戦闘力ゼロ。
「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」
親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。
「感謝するぜ、囮として」
嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。
そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。
「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」
情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。
かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。
見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる