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2章 魔法の国ルクレイシア
魔物討伐 8 :できること (セイルクside)
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【魔力暴走】
感情の昂りや体内の魔力に異常があった際に起こることが多い。
魔力のコントロールが自分でできなくなり、体内にある魔力が外部に放出される。
威力は普段使用するときよりも格段に強く、強力な魔力を持つ者が起こした魔力暴走に巻き込まれて命を落とした者もいる。
魔力暴走は自分で止められる者は稀で、誰かが止めない限り続き、最後には魔力暴走を起こした者の命に関わることがある。
そのため、大陸魔法使い協会は以下の治療法を公開し、すべての魔法使いが対処できるように教育を行っている。
治すにはあらゆる方法が証明されている。
一番に推奨されているのはやはり、感情を落ち着かせるように言い聞かせることだ。
上手くいけばスイッチが切れたように気絶して収まる。
その次に推奨されるのは、暴走した者と同じ属性の者が魔力を支配することだ。
しかし、これは支配する側が暴走する魔力を支配できるだけの実力者である必要がある。
最後に荒療治と呼ばれる、同じ属性ではない他者の魔力で圧倒することは、やむを得ない場合にはやってもよいとされている。
しかし、暴走した者と相反する属性の者が魔力を支配することは、危険なことで、絶対にやってはいけないとされている。
クレアが魔力暴走を起こした可能性が出てきた。
クレアが魔法で維持していたうさぎが目の前で消えたことがそれを暗示している。
術者が使った魔法は、攻撃ならどこかに当たらない限り、その他は大体術者が魔法を解除(あらかじめ決めていたものも含む)または術者が死なない限り消えない。
魔力暴走は攻撃魔法もその他の魔法もすべて、術者が魔力を不安定にすることで消してしまう。
このうさぎは、クレアが『導け』と言って出した魔法で、その他に分類されるだろう。
クレアの言う崖まで案内をするためのうさぎが、洞窟の途中で役割を全うすることはほとんどあり得ない。
だからこそ、クレアは今魔力暴走になっている可能性が高い。
『魔石で連絡しようとしたんだけど……魔力が残ってなくて、魔石が壊せなかったんだ』
クレアが洞窟で言っていたのを思い出した。
そうだ、あのときクレアは魔力がほぼなかった。
それなら、ミュゼを温めたり俺たちを逃したり、あの男を足止めしたりして残りの魔力だってなくなっていたら─────?
その状態で魔力暴走なんて起こしたら、救助よりも先に死んでしまう。
(………いやだ)
俺が洞窟を戻ろうとしたところを、ミュゼに腕をつかまれて止められる。
「離せ、ミュゼ!」
「待ってよ!セイルクが行ったところで無理!魔力量はクレアさんの方が上なんでしょ?
そしたら私たちが巻き込まれて終わりだよ!」
「じゃあこのまま見殺しにするってことか!?」
余裕がない俺を諭そうとするミュゼが嫌になる。
そんなことわかってる。
ここまで振動が伝わっているのに、何もできないのが悔しい。
俺がミュゼの手を振り解こうと強く振り払うと、ミュゼはその場に尻もちをついてしまった。
ミュゼが痛そうに顔を顰める。
その顔を見て、俺は少し落ち着きを取り戻した。
「悪い………ほら、手……」
俺が軽く謝ってミュゼに手を伸ばすと、ミュゼは手を取って立ち上がり、ウエストポーチから何か取り出した。
手の中を覗き込んで、すぐにわかった。
「青の魔石…………」
俺がミュゼを見ると、ミュゼはひとつ大きく頷いた。
「私たちができる最善はこれしかない。討伐終了時間を経ってる今じゃあ、緑は意味がないだろうけど、青ならまだ望みがあると思う」
俺は荷物から自分の青の魔石を取り出した。
この魔石は、生徒の受付が予め情報を入れて作った魔法陣でつくったものだ。
この魔石を壊すか魔力を流すかをすれば、緊急連絡先に届く。
俺とクレアの緊急連絡先は同じだ。
クレアが信頼している人なら、すぐに助けてくれるかもしれない。
俺はミュゼを信じることにした。
俺とミュゼは手に乗った自分たちの青の魔石に魔力を込めた。
魔石はじんわりと光りだしているが、まだ足りないのか何も反応がない。
少しでいいと思ったがそうでもないようだ。
魔力を送り続けて一分としないあたりで、魔石はまばゆく光り、花火のように障害物をすり抜けて空へ飛んでいった。
初めて使ったが、誰かと連絡を取るというより居場所を伝えるために使うもののようだ。
気づいてもらえるだろうか。
俺たちは顔を見合わせて、前へ進んだ。
「……………………あった」
やっとの思いで見つけた喜びか、ミュゼが小さくつぶやいて、俺も実感した。
魔石で信号を送ってからしばらく歩いた。
足はもうほとんど奮い立たせているようなもので、腰を下ろしたらもう最後な気がして仕方がない。
そんな中で俺たちはやっとクレアが言っていた崖を見つけた。
開けた場所に出たと思ったらすぐだった。
2、3メートルくらいの高さの崖だ。
途中坂がきつかったところがあったのは、洞窟に高低差があったからなのだろう。
息を切らしながら崖を見上げて、ここで助けを待とうかと考えた。
雪さえ降っていなければ、なんとか登れただろう。
でも今、雪というより吹雪となって降っている状況で、登ることは到底無理だ。
どうしたものかと思案していると、横にいたミュゼが俺の手を握った。
「セイルク」
「………?」
わかるでしょ?と言わんばかりの顔で俺を見るミュゼは、早くしろと体を小さく跳ねさせる。
が、俺にはさっぱり何を言っているのかわからず、ミュゼに大して首を傾げた。
何をしたいんだ?
俺がミュゼの答えを待っていると、ミュゼが痺れを切らしたように口を開いた。
「『浮遊』だよ!できるでしょ?」
「……………あぁ!」
俺はそれでやっと理解した。
そうか、『浮遊』でミュゼを崖の上に移動させればいいのか。
『арызгклм』
俺は言われるがまま、ミュゼに『浮遊』をかけて崖の上まで移動させることに成功した。
ただ、問題はここからだった。
ミュゼは崖の上に着地すると、俺の方を見て声を上げる。
「次は『飛行』でセイルクが上がってきて!」
そこで俺は固まった。
自分も崖の上に行けると錯覚していた。
固まって動かない俺にミュゼが声をかけてくる。
「セイルク!『飛行』!!!」
聞こえていないと思ったのか、さっきよりも大きな声でそういうミュゼに対して、俺は手を挙げて聞こえていることをアピールした。
「ミュゼ、悪い!」
「え?」
「俺まだ『飛行』できないんだ!!」
「…………えぇ!?」
驚くミュゼに本当に申し訳ないと手を合わせた。
そうだ、俺は『浮遊』ができるようになったばかりで、クレアと目標にしていた『飛行』はまだできていない。
掴めそうになったときもあったが、これまでに成功したことはない。
本当にここで助けを待つことになりそうだ。
ミュゼも慌てているあたり、解決策はないのだろう。
どうしようか。
俺がミュゼを見上げて解決策を考えていると、ミュゼが急に緊迫した顔で俺を見て叫んだ。
「セイルク後ろ!!」
その言葉と衝撃は同時だったかもしれない。
グジュッ
俺の右腕に何か鋭利なものが刺さった感覚がした。
自分の体が嫌な音を立てたのも聞こえた。
『хугыей』
俺が咄嗟に『風刃』を右腕の少し上に出すと、命中したのか、腕の痛みが少しひいた。
『суситрпокпмп мб кож ой с』
視界をよくするために風の膜を周囲につくる『風檻』を出すと、吹雪で見えなかった正体が明らかになった。
洞窟に続く道から現れたのは、巣を荒らされると集団で襲ってくる、狼型の魔物だった。
「……………詰んだ」
俺は噛まれた右腕を押さえながら小さくつぶやいた。
感情の昂りや体内の魔力に異常があった際に起こることが多い。
魔力のコントロールが自分でできなくなり、体内にある魔力が外部に放出される。
威力は普段使用するときよりも格段に強く、強力な魔力を持つ者が起こした魔力暴走に巻き込まれて命を落とした者もいる。
魔力暴走は自分で止められる者は稀で、誰かが止めない限り続き、最後には魔力暴走を起こした者の命に関わることがある。
そのため、大陸魔法使い協会は以下の治療法を公開し、すべての魔法使いが対処できるように教育を行っている。
治すにはあらゆる方法が証明されている。
一番に推奨されているのはやはり、感情を落ち着かせるように言い聞かせることだ。
上手くいけばスイッチが切れたように気絶して収まる。
その次に推奨されるのは、暴走した者と同じ属性の者が魔力を支配することだ。
しかし、これは支配する側が暴走する魔力を支配できるだけの実力者である必要がある。
最後に荒療治と呼ばれる、同じ属性ではない他者の魔力で圧倒することは、やむを得ない場合にはやってもよいとされている。
しかし、暴走した者と相反する属性の者が魔力を支配することは、危険なことで、絶対にやってはいけないとされている。
クレアが魔力暴走を起こした可能性が出てきた。
クレアが魔法で維持していたうさぎが目の前で消えたことがそれを暗示している。
術者が使った魔法は、攻撃ならどこかに当たらない限り、その他は大体術者が魔法を解除(あらかじめ決めていたものも含む)または術者が死なない限り消えない。
魔力暴走は攻撃魔法もその他の魔法もすべて、術者が魔力を不安定にすることで消してしまう。
このうさぎは、クレアが『導け』と言って出した魔法で、その他に分類されるだろう。
クレアの言う崖まで案内をするためのうさぎが、洞窟の途中で役割を全うすることはほとんどあり得ない。
だからこそ、クレアは今魔力暴走になっている可能性が高い。
『魔石で連絡しようとしたんだけど……魔力が残ってなくて、魔石が壊せなかったんだ』
クレアが洞窟で言っていたのを思い出した。
そうだ、あのときクレアは魔力がほぼなかった。
それなら、ミュゼを温めたり俺たちを逃したり、あの男を足止めしたりして残りの魔力だってなくなっていたら─────?
その状態で魔力暴走なんて起こしたら、救助よりも先に死んでしまう。
(………いやだ)
俺が洞窟を戻ろうとしたところを、ミュゼに腕をつかまれて止められる。
「離せ、ミュゼ!」
「待ってよ!セイルクが行ったところで無理!魔力量はクレアさんの方が上なんでしょ?
そしたら私たちが巻き込まれて終わりだよ!」
「じゃあこのまま見殺しにするってことか!?」
余裕がない俺を諭そうとするミュゼが嫌になる。
そんなことわかってる。
ここまで振動が伝わっているのに、何もできないのが悔しい。
俺がミュゼの手を振り解こうと強く振り払うと、ミュゼはその場に尻もちをついてしまった。
ミュゼが痛そうに顔を顰める。
その顔を見て、俺は少し落ち着きを取り戻した。
「悪い………ほら、手……」
俺が軽く謝ってミュゼに手を伸ばすと、ミュゼは手を取って立ち上がり、ウエストポーチから何か取り出した。
手の中を覗き込んで、すぐにわかった。
「青の魔石…………」
俺がミュゼを見ると、ミュゼはひとつ大きく頷いた。
「私たちができる最善はこれしかない。討伐終了時間を経ってる今じゃあ、緑は意味がないだろうけど、青ならまだ望みがあると思う」
俺は荷物から自分の青の魔石を取り出した。
この魔石は、生徒の受付が予め情報を入れて作った魔法陣でつくったものだ。
この魔石を壊すか魔力を流すかをすれば、緊急連絡先に届く。
俺とクレアの緊急連絡先は同じだ。
クレアが信頼している人なら、すぐに助けてくれるかもしれない。
俺はミュゼを信じることにした。
俺とミュゼは手に乗った自分たちの青の魔石に魔力を込めた。
魔石はじんわりと光りだしているが、まだ足りないのか何も反応がない。
少しでいいと思ったがそうでもないようだ。
魔力を送り続けて一分としないあたりで、魔石はまばゆく光り、花火のように障害物をすり抜けて空へ飛んでいった。
初めて使ったが、誰かと連絡を取るというより居場所を伝えるために使うもののようだ。
気づいてもらえるだろうか。
俺たちは顔を見合わせて、前へ進んだ。
「……………………あった」
やっとの思いで見つけた喜びか、ミュゼが小さくつぶやいて、俺も実感した。
魔石で信号を送ってからしばらく歩いた。
足はもうほとんど奮い立たせているようなもので、腰を下ろしたらもう最後な気がして仕方がない。
そんな中で俺たちはやっとクレアが言っていた崖を見つけた。
開けた場所に出たと思ったらすぐだった。
2、3メートルくらいの高さの崖だ。
途中坂がきつかったところがあったのは、洞窟に高低差があったからなのだろう。
息を切らしながら崖を見上げて、ここで助けを待とうかと考えた。
雪さえ降っていなければ、なんとか登れただろう。
でも今、雪というより吹雪となって降っている状況で、登ることは到底無理だ。
どうしたものかと思案していると、横にいたミュゼが俺の手を握った。
「セイルク」
「………?」
わかるでしょ?と言わんばかりの顔で俺を見るミュゼは、早くしろと体を小さく跳ねさせる。
が、俺にはさっぱり何を言っているのかわからず、ミュゼに大して首を傾げた。
何をしたいんだ?
俺がミュゼの答えを待っていると、ミュゼが痺れを切らしたように口を開いた。
「『浮遊』だよ!できるでしょ?」
「……………あぁ!」
俺はそれでやっと理解した。
そうか、『浮遊』でミュゼを崖の上に移動させればいいのか。
『арызгклм』
俺は言われるがまま、ミュゼに『浮遊』をかけて崖の上まで移動させることに成功した。
ただ、問題はここからだった。
ミュゼは崖の上に着地すると、俺の方を見て声を上げる。
「次は『飛行』でセイルクが上がってきて!」
そこで俺は固まった。
自分も崖の上に行けると錯覚していた。
固まって動かない俺にミュゼが声をかけてくる。
「セイルク!『飛行』!!!」
聞こえていないと思ったのか、さっきよりも大きな声でそういうミュゼに対して、俺は手を挙げて聞こえていることをアピールした。
「ミュゼ、悪い!」
「え?」
「俺まだ『飛行』できないんだ!!」
「…………えぇ!?」
驚くミュゼに本当に申し訳ないと手を合わせた。
そうだ、俺は『浮遊』ができるようになったばかりで、クレアと目標にしていた『飛行』はまだできていない。
掴めそうになったときもあったが、これまでに成功したことはない。
本当にここで助けを待つことになりそうだ。
ミュゼも慌てているあたり、解決策はないのだろう。
どうしようか。
俺がミュゼを見上げて解決策を考えていると、ミュゼが急に緊迫した顔で俺を見て叫んだ。
「セイルク後ろ!!」
その言葉と衝撃は同時だったかもしれない。
グジュッ
俺の右腕に何か鋭利なものが刺さった感覚がした。
自分の体が嫌な音を立てたのも聞こえた。
『хугыей』
俺が咄嗟に『風刃』を右腕の少し上に出すと、命中したのか、腕の痛みが少しひいた。
『суситрпокпмп мб кож ой с』
視界をよくするために風の膜を周囲につくる『風檻』を出すと、吹雪で見えなかった正体が明らかになった。
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