サイハテの召喚士

茶歩

文字の大きさ
3 / 24
第1章 幕開け

3 それぞれの価値

しおりを挟む


 アキがブラウンに対してクライテリアを翳した。
 ピピピ、という音を鳴らしながら、クライテリアがブラウンのステータスを読み込んでいく。

 数秒経つと、ピーーという長い音が響いた。


「すごい!!すごいよ君!!!」


 アキの目はキラキラと煌めいていた。
その表情を見る限り、ブラウンのステータスはよほど高かったらしい。


「俺のクライテリアでは7分野それぞれのステータスはでなくて、トータル数値だけしか出てくれないんだ。だけど、ブラウン君!君のトータル数値はPだよ!!」


 P。それだけ聞いてもピンとは来ないけど、単純にZYXWVUTSRQと来てのPだ。
 こんな時、やっぱりブラウンはZ地区にいていい人間じゃないなぁとしみじみ思う。


「P‥ですか」


 ブラウンもいまいちパッとしてない様子だ。


「わかりやすく説明すれば、P‥P地区で換算すると通行金は3000コインなんだ!すごいでしょう?!」


 アキがとてつもなく興奮している。そしてその勢いは止まらないまま、更に言葉を続けた。


「みんな、ステータスを高める為に努力するんだ。勉強したり、経験を積んだり、体を鍛えたり、美を磨いたり‥!
君は、謂わば原石の状態でのPなんだよ!!磨けばどれほどまでに高まるか‥!本当にすごいよ!!」


 7分野のステータス。
それは《身体能力・頭脳・財力・経験・器用さ・魅力・魔力》のことだ。
 オッドさんから情報を得たブラウンが、嬉しそうに教えてくれたことを覚えている。

 ブラウンのステータスは、きっと頭脳がかなり秀でているんだろうなぁと思う。
 身体能力は、このZ地区で生き延びていれば自ずと身につくものだし、ブラウンは手先がとても器用だ。

 ブラウンの凄さを毎日一番近くで見ていたからこそ、私は然程驚きはしなかった。


 更なる驚きの声をあげたのはアキだった。


「カラー!!君も凄いじゃないか!!」


 ピーーという音が聞こえるなぁとは思っていたけど、アキはいつのまにか私のステータスも測定してくれていたらしい。


「君のトータル数値はSだよ!
そりゃあ簡単に魔物を追い払えるわけだよ!」


 S‥。ブラウンの反応がよくわかった。
聞いてもやはり、ピンと来ないんだよね。


「ちなみに俺のトータル数値はV!
W地区に住んでいた俺でさえVなんだよ?!
君たちは本当に凄いよ!Z地区にいるのが勿体無い!!」


 ‥トータル数値がVなアキでさえ、住んでいたランクの低いW地区を追われてしまうんだ。

 つまり、個人のステータスが居住区にそっくりそのまま反映されるわけではない。
 通行金や毎年の税金、そして親がどこで子を産み落としたか。
 個人のステータスだけではなく、そんな要因が居住区を決めるんだろう。

 ステータス測定で分析される7分野以外の要因‥世渡り術であったり、運だったり。きっとそんなものが、かなり重要なのだ。


「私たちだってそりゃあから出たいよ。ねぇブラウン?」


「‥あぁ。ここではチャンスがないからな」


 Z地区は金銭のやり取りは全くない。
狩をして、野菜を育てている人と物々交換をする。狩をして、服を分けてもらう。

 そんな生活だから、上の地区に上がるためのコインは必要ない。というか、ここZ地区にコインは存在しない。

 どんなに働いても、努力しても、上には上がれない。

 ここで私は、とある疑問が頭を過った。
ブラウンももしかしたら同じことを考えていたかもしれない。


ーーーオッドさんは?
 私たちや、アキのように。生まれ育った場所がその地だったというわけでなく、ステータスによって強制的にその地に送り込まれた人は?
本当にステータスがその地区同等のものだったんだろうか。

 少なくともオッドさんは、ガサツで汚かったけど‥強かったし知識もあったし、経験も豊富だった。オッドさんがトータル数値Zだとは、どうしても思えないんだけど‥


 そんな心の中の疑問を遮るかのように、アキが言葉を落とした。


「Y地区にギルド登録会場があるかわからないけど‥‥一緒にY地区に行く?」


 平然とそんなことを言い放つ。


「「え?」」


「あ、えーっと。
有り金は全部持ってきたからさ。さすがに5年分の税金は払えないんだけど、3人でY地区に行くくらいのコインはあるよ」


「え?!いいの?!?!」


「そ、そのかわり‥!
俺を守ってほしい。ずるいかもしれないけど‥
君たちといれば、俺生きていけると思うから」


 アキは私たちより明らかに年上だった。
15~16才くらいだろうか。

 だけどそんなアキが私たちに頼るほど、この世はきっと住み辛いところなんだろうなぁと思う。
 これは、私たちにとっては又とない機会だった。


「‥アキさん。貴方は追われてるんですよね?
関所を通るときにバレないんですか?」


「あー、税金徴収所と関所の兵士は管轄がまるっきり違うんだ。それに、精度のいいクライテリアでは人物特定までできるらしいけど、さすがにここら周辺の関所にそんなクライテリアは配備してないと思うよ」


 私には正直さっぱりよくわからない会話だったけど、ブラウンは納得したように頷いた。

 ブラウンは私と目を合わせて互いに頷くと、アキに頭を下げた。


 どうやら、私たちはやっとZ地区から解放されるらしい。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やりません。やれないんです。

朝山みどり
恋愛
国の制度変更により、薬の調合・販売には免許が必要となり、長年村で薬師をしてきた祖母は年齢制限のため資格を取得できず、薬師を名乗れなくなった。経験や評判は評価されず、「紙(免許)」がすべてになった。 ダイアナは祖母の店を再開するため、講習と試験を受け、町のポイード薬局で半年間の住み込み見習いを始める。講習では祖母の経験が理論として体系化されていることを学び、学問と実践の両立を実感する。 同室となったマリアと協力しながら、厳格な規格・衛生管理のもとで調薬を学ぶ日々。祖母の知恵と新しい制度の知識を胸に、半年後に胸を張って帰ることを楽しみ過ごしていたが…… 他のサイトでも公開しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

処理中です...