妖器伝

茶歩

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第6話 条件

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立ち上がった小春に対し、陽はその身を捉えるべく大蛇の力をその手に宿した。

禍々しい黒い鱗が生えた右腕。この鋭い爪でもう何百匹もの妖を葬ってきた。


「その女がお前を制御できるとは思えない。
大人しく死ね」

そう言って小春に飛びかかった陽。
小春はといえば、扇で口元を隠して上品に笑い続けている。


小春を切り裂いたはずの陽の爪が宙を切った。


「?!」


「儂は乱暴な男は好かん。
血気盛んなのはいい事じゃがの。その方が床でも盛り上がる」


陽の攻撃を避けるかのように姿を消した小春は、再びフッと姿を現して長屋内をゆっくりと歩き始めた。


「‥大人しくやられる気はないんだな」


「当たり前じゃ。もう何百年もこの時を待ってた。
ずっとこの島を張ってたんじゃが、なかなか儂の条件に合うやつが来なくてな」


大きな器且つ、若い女。


「女としての悦びを感じたいからの。
この娘くらいの歳がまたちょうど良い。ここから熟れていくのをまざまざと体感できるからな」


「‥お前は九尾なんだから人に化ければいいだけだろ」


「この娘はまだ深い快感を知らん。
儂も新鮮さが欲しいのじゃ」


つまり、九尾の体は熟れすぎている。
随分と痴女なんだなと嘲笑う陽に対し、小春は扇で口元を隠しながら照れたように笑った。


その途端、大きい音がして襖が開いた。
血相を変えた八重と、二千翔が顔を出す。


「‥‥玉藻前か!」


小春を見るなり、八重がそう声を上げる。
小春は満足気に頷いた。


「そうじゃ。
巫女よ、この大蛇の男を落ち着かせてくれ。
儂は敵意はないのじゃ」


「条件はなんだ」


八重の言葉に、小春は微笑む。


「この娘が眠っている間で構わぬ。
儂に男を感じさせるのじゃ。それだけで儂の力が手に入る。いい話じゃろ?」


「なっ‥」









目を覚ました私の周りには、八重様と二千翔さんと陽さん。
他にも巫女の姿の人たちや、着物を着た人たちがずらりと囲んでいる。


「‥おはようございます?」


なんて重苦しい空気!
どういう状況なのよこれ。


あ、そういえば玉さんは‥?


「目が覚めたか小春」


私の様子を見て、八重様が安堵の息を吐く。


「あの、これは一体‥?」


どういう騒ぎですか。なんで囲まれてるの??
私寝てる時なんかした?イビキうるさかった?


「小春、お前は今
玉藻前という大妖怪にな」


玉藻前‥?


「‥玉さん?!
あ、そうそう!そうなんです!
昨日そういえば玉さんが‥!」


「ふっ、玉さんか‥
その玉さんに憑依されてるのだ」


憑依‥されてしまったのか、昨夜。
なんかそんなこと玉さんも言ってたもんな‥


「‥‥私、今化け物ですか‥?」


一気に自分が青ざめた気がする。
自分自身ではわからないけど、もしかしたら側から見たら化け物なのかも。だからこんなに集まってるのかもしれない。


「‥玉藻前はあくまでも善意的だ。
お前の全てを乗っ取ろうとはしていない」


八重さんの漆黒の双眼が私を捉えている。
透き通るような黒。なんでこんなに黒目が大きいんだろう‥

って、それは置いておいて。


「‥私は乗っ取られてはいないってことですか?」


「ああ。
条件があるものの、お前に玉藻前の力を貸してくれるそうだ。
正直なところ、それに歯向かえばお前の自我はなくなり、その身が完全に玉藻前の物となってしまう恐れもある」


「‥条件、ですか」


「私の巫女の力を持ってしても‥
玉藻前をお前の体から引きずり剥がすのは難しい。
つまり、小春は条件を飲む以外‥助かる方法はない」


なんて厄介な‥
この島に来て速攻こんな目に合うなんて‥


「条件って‥?」


そんな大妖怪が出す条件ってなに?!
目玉をくれとか、そんなもんじゃ済まなかったりして‥


「小春が眠っている間、玉藻前がお前の体を支配する。
その状況で‥男に抱かれるのだ」


「だか?!」


思わず声が上擦った。
嘘でしょ?!と周囲の人たちを見るけど、みんな目を合わせようとしてくれない。


「あ、安心しろ。二千翔から聞いたが‥婚約者も該当者だったんだろう?ほら、なんと言ったか‥あ、そう。千郷だ」


あ、そうだ‥千郷、千郷がいる。
厳密に言えば私ではなく玉藻前が支配している体。
その状態で千郷に抱かれるのは抵抗ありまくりだけど、使われるのは私の体な訳で‥知らない男に知らないうちに抱かれるよりは100倍マシだ。


「千郷はどこに‥?」


「千郷は抵抗が凄くて暴れまくってるからな。
今は北区で説得中だ。安心しろ、今日の夜までにはここに連れてくるからの」


※北区‥通常の本土と然程変わらない街並み。現代社会が反映されている場所。


「そう‥ですか」


早く会いたかったけど、仕方ない。
昨日の朝の取り乱しぶりを見れば、ここに来てからも暴れまくっていることは予想できてしまう。

でも、まぁ‥よかった‥
寝ている間に千郷に抱かれることで、玉藻前をことができるんだもんね‥。


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