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第48話
しおりを挟む翌朝、魔力切れの症状は見事に収まっていた。
ギルさんと共にルーン村の南側にある開拓地の様子を見にいくと、野宿をしていた人が数多くいた。簡易的なテントをいくつも張ったけど、もちろんテントの数は足りなかった。
食べ物は穀物や果物など用意できる分は用意したものの、現状に不満を持って悪態を吐く人もちらほらと現れ出した。
「女神様っつーならまともな食い物出せよ!!!」
中年の男性がそう言って暴れている。
私が見境なく連れてきちゃったから、現場はこんなにも混乱してしまった‥。かといって、連れてこなければ今頃このおじさんも獣人になってた可能性が高いと思うんだけど‥。
「おい!!女神様よぉ!顔見せてみろよ!!」
私が手を挙げようとすると、ギルさんがそれを制した。
「あんなやつに構わなくていいよ」
「でも‥」
余計なお世話だったなら、現地にお返ししてあげようと思う。昨日の時点でプテラス領から出ていった人たちも何人かいたけど、このおじさんは昨日は出ていかなかった。でも一晩経って冷静になって思い直したのかもしれない。私が勝手に連れてきちゃったけど、自分の身を守る術をこのおじさんは持っているのかもしれない。
そう思っておじさんの方をジッと見ると、おじさんと目が合った。
おじさんは何かに気付いたように目をカッと丸く見開くと、ズカズカと私の元へと近寄ってくる。
スッと私を隠すように、ギルさんが私の前に立った。
異変を察知したルーン村の人々も続々と私の元に近付いてくる。
「なぁ!嬢ちゃん!!!
異物のアイナだよなぁ?!」
興奮したようにおじさんが声を上げると、周囲の人々もざわつき始めた。
流石は王都の人たち。異物のアイナのことを皆さんよく知ってるらしい。
「俺ぁよくサーカス行ってたんだよ!!
いつもは柵越しだったからなぁ!こんな近くで見れるとは!!」
「おい、ズカズカ近寄んな」
どうやらおじさんは私を覗き込もうとしている。それをギルさんが遮ってくれているようだった。
「邪魔だよアンタ!退けろっ!!
ここで見世物が見れるんだ!むしろラッキーじゃねぇか!」
げらげらと嫌な笑い声が響く。
あぁ、ルーン村で過ごしてたから忘れてたなぁ‥こういう悪意。
ギルさんからカチャっという音が聞こえた。どうやら刀を抜こうとしているらしい。私は咄嗟にギルさんの背中に抱きついてギルさんの動きを制した。
「うぎゃあっ!」
それなのに何故かおじさんの叫び声が聞こえたもんだから、私はギルさんの腕と背中の間から顔を出して何が起こったのか確認した。
そこには、私の魔法石を使っておじさんをツタでぐるぐる巻きにしているルーン村の人々の姿が‥。
「アイナ様を侮辱することは我々が許さない!!」
「アイナ様のおかげで生かして貰ったということを知れ、愚か者!」
「ま、まさか、異物のアイナが女神様だなんて言うんじゃないだろうなぁ?!」
ツタで拘束されていても、おじさんの勢いは止まらなかった。
というか、まぁおじさんの反応が正解だと思う。だって私に魔力があると知っているのはルーン村の人たちだけだもん。
「‥‥私、実は魔力があるんです。
私もつい最近知ったんですけど」
私がそう言うと、おじさんは信じられないといった様子で笑い声をあげた。セブラ公国公認の嘲笑われる対象だった私が、今は嘘のように信仰されている。おじさんの嫌な笑い声は、ツタが更に強く巻きつく事で消えた。
「その汚い笑い声をやめろ!!」
そう言って私の代わりに憤ってくれているルーン村の人々に、私は頭を下げた後に解放してあげてくださいとお願いをした。
ルーン村の人々は不服そうにしながらも、おじさんを解放してくれた。
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