51 / 76
第49話
しおりを挟む
解放されたおじさんは地面に倒れ込みながら、ゼェゼェと息を荒げた。おじさんは「痛ぇじゃねぇか!!」と大声をあげたものの、ルーン村の人々が睨みをきかせているもんだからグッと唇を横に結んだ。
ルーン村の人々のあまりの信仰心の強さを見て、おじさんは少しずつ異物のアイナに魔力があることを信じ始めたようだった。
それどころか、もう一方の異物と照らし合わせ始めたようだ。
「あのメリッサの子供だもんなぁ」
メリッサという言葉に、ギルさんに抱きついたままの私の腕がピクリと反応した。いつまでも抱きついたままでも恥ずかしいのでソッとギルさんから離れてみる。
王都の人は特に、私のお母さんのことをよく知っているのかな。
柵越しに「メリッサの娘だ」と言われることはよくあったけど、私はその「メリッサ」についてよく知らない。
でも‥チャーリーさんは石になる寸前に、お母さんの魔力のことを「規格外な魔力」と言っていたなぁ、そういえば。
「‥‥信じて頂けます?」
「‥‥実際、雨を降らせたのも俺らを何百人と移動させたのも、メリッサと同じような力を持ってるなら納得できる。だがなぁ、アイナ‥」
おじさんの唇の形が嫌に歪んだ。私を刺すような視線が痛い。
「人ってのは、自分と異なるものを否定する愚かで賢い生き物なのさぁ!あんたがどれだけ魔力があって、どれだけスゲェと言われようと、異世界の血が流れてる異物にはかわらねぇのさ!!」
自分と異なる人は怖い。何を考えて何を行うのか分からないから。知るのも関わるのも怖いから、こうして遮断するんだろうな。
「どうする?殺すか?」
ギルさんが当然の如く尋ねてくる。
ギルさんって普段は冷静なのに、たまにこうして荒っぽくなる時があるんだよね。まぁ表情は特に変わらないし綺麗な顔のままなんだけど、声色で不機嫌なのが分かる。
「いや、殺さないでください」
「「ですが!!」」
ルーン村の人々も殺す気満々だったらしく、私の言葉に不本意そうだ。
「自分と異なる考えを持つ人を遮断したり排除することは、結局この人たちと同じですよね。そういう人たちをみんな遮断して出来上がった国が、腐っていないかと言ったらそうじゃないと思うんです」
私がそう言うと、ルーン村の人たちは黙り込んだ。
「博愛主義ってかぁ?!気持ち悪ぃなぁ、おい。
俺はここでお前らに恩を売られた気になるのは御免だ!出てってやる!!」
博愛主義ってわけじゃない。
だって、団長にもチャーリーさんにもしっかり復讐してるもの。
自分とは異なる考えや思考を遮断したくないというだけ。
危害が加えられるならば、相応の仕返しはする。
「余計なお世話をしてしまったようですみませんでした。
魔法で王都にお送りしますか?」
「王都はあの狼だらけだろ!あんなところに戻れるか!!」
「‥‥」
わがままなおじさんだなぁ‥。
「勝手に出てくから放っておけ!」
そう言っておじさんは南の開拓地から姿を消した。
まぁ翌日、意気揚々とプラスト領を飛び出したはずのおじさんが、「助けてくれぇ」と泣き叫びながら砦に駆け込んできたんだけど。
ルーン村の人々のあまりの信仰心の強さを見て、おじさんは少しずつ異物のアイナに魔力があることを信じ始めたようだった。
それどころか、もう一方の異物と照らし合わせ始めたようだ。
「あのメリッサの子供だもんなぁ」
メリッサという言葉に、ギルさんに抱きついたままの私の腕がピクリと反応した。いつまでも抱きついたままでも恥ずかしいのでソッとギルさんから離れてみる。
王都の人は特に、私のお母さんのことをよく知っているのかな。
柵越しに「メリッサの娘だ」と言われることはよくあったけど、私はその「メリッサ」についてよく知らない。
でも‥チャーリーさんは石になる寸前に、お母さんの魔力のことを「規格外な魔力」と言っていたなぁ、そういえば。
「‥‥信じて頂けます?」
「‥‥実際、雨を降らせたのも俺らを何百人と移動させたのも、メリッサと同じような力を持ってるなら納得できる。だがなぁ、アイナ‥」
おじさんの唇の形が嫌に歪んだ。私を刺すような視線が痛い。
「人ってのは、自分と異なるものを否定する愚かで賢い生き物なのさぁ!あんたがどれだけ魔力があって、どれだけスゲェと言われようと、異世界の血が流れてる異物にはかわらねぇのさ!!」
自分と異なる人は怖い。何を考えて何を行うのか分からないから。知るのも関わるのも怖いから、こうして遮断するんだろうな。
「どうする?殺すか?」
ギルさんが当然の如く尋ねてくる。
ギルさんって普段は冷静なのに、たまにこうして荒っぽくなる時があるんだよね。まぁ表情は特に変わらないし綺麗な顔のままなんだけど、声色で不機嫌なのが分かる。
「いや、殺さないでください」
「「ですが!!」」
ルーン村の人々も殺す気満々だったらしく、私の言葉に不本意そうだ。
「自分と異なる考えを持つ人を遮断したり排除することは、結局この人たちと同じですよね。そういう人たちをみんな遮断して出来上がった国が、腐っていないかと言ったらそうじゃないと思うんです」
私がそう言うと、ルーン村の人たちは黙り込んだ。
「博愛主義ってかぁ?!気持ち悪ぃなぁ、おい。
俺はここでお前らに恩を売られた気になるのは御免だ!出てってやる!!」
博愛主義ってわけじゃない。
だって、団長にもチャーリーさんにもしっかり復讐してるもの。
自分とは異なる考えや思考を遮断したくないというだけ。
危害が加えられるならば、相応の仕返しはする。
「余計なお世話をしてしまったようですみませんでした。
魔法で王都にお送りしますか?」
「王都はあの狼だらけだろ!あんなところに戻れるか!!」
「‥‥」
わがままなおじさんだなぁ‥。
「勝手に出てくから放っておけ!」
そう言っておじさんは南の開拓地から姿を消した。
まぁ翌日、意気揚々とプラスト領を飛び出したはずのおじさんが、「助けてくれぇ」と泣き叫びながら砦に駆け込んできたんだけど。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる