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第66話
しおりを挟むギルさんはいつまで私と一緒にいてくれるんだろう。
出来ればずっと一緒にいたい。こんなにも近くじゃなくてもいいから、離れたくないよ。
最近はそんなことばっかり考えてた。
でもギルさんはどんな時でも私をすぐ近くに置いてくれてて、文字通りずっとそばにいた。ギルさんの目の下には毎日クマができていて、朝になると私はそのクマを取るためにも回復魔法を使う。
もしかして眠れてないのかな‥?でもそんなこと一言も言ってないし‥
*
とある昼下がりのことだった。
この日はギルさんが大臣たちと会合があるのが決まっていた。いつもは基本的に会合の時も付いて行ってたんだけど、今日は私にも大臣補佐から別な仕事あると言われて部屋で待機することになっていた。
大臣補佐が扉をノックした。私は右の眼帯をグッと直して部屋を出た。
呼び出されて連れて行かれたのは何やら重々しい空気の部屋だった。重厚な扉が締まると鍵がかけられた。
「重要機密ですので」
そう言って大臣補佐が笑ったので、納得したように頷いた瞬間‥私の体はうつ伏せ状態で床に叩きつけられた。
背後から誰かに押されたみたいだ。そのまま私の体が動かないように押さえつけられている。大臣補佐と私の他に、もう1人この部屋に潜んでいたらしい。
「‥‥なにを?」
立ったまま私を見下ろす大臣補佐に問うと、大臣補佐は笑った。
「この状態では魔法は使えませんよね。貴女にはここで死んでもらいます」
確かにこの状況では魔法陣を手に持つ事はできない。
それよりも‥
「何故わざわざ私を‥?」
「貴女の馬鹿みたいな魔力ですよ!それしかないでしょう。貴女の魔力があれば、ギル大公はまさに敵無し。無双状態です。でもそれでは私たちは少々都合が悪い。弱い王でないと、操りにくいのでね」
「“私たち“ってことは‥貴方の一存ではないんですね」
「当たり前じゃないですか。私はあくまでも補佐ですからね」
「王宮の人たちみんなグルなんですか?」
「ふっ。気になりますか?いいでしょう。死ににいく貴女への土産話を1つ。まさに今、大公と会談されている重要人物達はみんな、貴女が殺されることを知っていますよ。今か今かと待ち望んでいることでしょう」
「そんな‥」
「愛する女性が殺されているのに気付かずに、ギル大公は会合を続けているわけです。あんなにも貴女を守っていたのにねぇ?」
「痛っ!」
私の上に乗って私を押さえつけていた人が、刃物を突き付けてきた。首に刃物の切っ先が食い込んでいる。
「ギル大公は貴女を全く1人にしてくれないから、困ってたんですよ」
大臣補佐はそう言うと、「やれ」と言った。
私の首に突き付けられたナイフはそのまま私の首を突き刺した。
こうして、私はいとも簡単に殺されたのだ。
*
一方その頃、会談中のギルの肩に赤い蝶が止まった。
ギルはその蝶を見るなり、ふんっと鼻で笑う。
「ど、どうされました‥?」
ギルの様子を不思議そうに眺める大臣らは、どこかそわそわしていた。
ギルはそんな大臣らを見てから、馬鹿みたいに高い天井を仰いだ。
ーーーそして一言。
「謀ったな?貴様ら」
ギルの言葉に場が途端に凍りつき、そして次第に騒つき始めた。
「な、何のことです?」
ギルが音を立てて刀を抜くと、同じタイミングで王宮騎士達がぞろぞろと姿を表す。元プテラス兵士の彼らは、皆怒りに顔を歪ませていた。
「ま、待ってください!何のことだか分かりません!」
「煩い。死ね」
逃げる為に立ち上がった大臣の首を、ギルは容赦なく刎ねた。
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