Aくま組のおふたりさん

茶歩

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第3話『所有権』

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授業が始まるのは明日かららしいーーー。

私とノラはグラドラさんに、人間界で生活する為のルールを教え込まれていた。

*人間と共に人間の食べ物を食べることは社会勉強として必要なことだけど、それだけでは悪魔に必要な栄養素が足りない。そこで、Aくま組のロビーで、血や生肉やヤモリなどの食料は配布される。(注:ドラキュラは人間食に含まれるニンニクは食べてはならない。


*悪魔としての魔力は魔界の扉をくぐった時点でほぼほぼ無くなっているものの、それでも通常の人間よりも遥かに身体能力は優れている。人間の命を奪ったり、許可なく生き血を吸うことは重罪なので、絶対にしてはいけない。尚、重罪を犯した場合、グラドラさんが責任を持って即処刑を行う。(注:悪魔としての魔力は、魔界に戻ることで元に戻る


*Aくま組は、1年~3年まである。Aくま組は悪魔だけで構成されているが、課外活動や休み時間、部活動や交友活動などでは自由に人間と関わりを持つことができる。尚、人間に正体がバレてしまった時点で、魔界へ強制送還される。(注:強制送還された悪魔の記憶は、人間は綺麗さっぱり忘れる


*3年間を通して人間社会を学ぶと共に、その後の魔界社会で役に立つスキルを身につけることになる。3年をもって卒業となるものの、必要単位数が足りない場合は、留年扱いとなり、最大9年間在籍できる。尚、時間軸が違うので、途中で魔界に帰ることは許されない。



グラドラさんが、低く渋い、抑揚のない声で淡々と説明書類を読み上げていく。優秀な人ならすぐにその場で話を理解し、適宜質問して情報の把握漏れのないように努めるんだろうけど、生憎私にはその能力は皆無だ。

グラドラさんから支給されたメモ帳に、ペンでなんとか書き記すので精一杯だった。

ノラなんて、せっかく貰ったメモ帳に一切書き込むこともなく窓の外を見ている。恐らく私よりもアホなくせに、努力もしようとしない正真正銘のアホなんだなぁと横目で睨んだ。



「とりあえず私からの説明したは以上になります‥。尚、私は基本的に8時から17時まではこのロビーにおりますので‥分からないことがあればその都度質問してください」


「は、はい」


「あー、伝えそびれていましたが‥
悪魔としての魔力はほぼなくなっているものの‥悪魔としての生理的現象はなくなってはいません。
例えば‥狼男ならば月を見れば変身してしまうし、ドラキュラならば血を見れば興奮してしまう。サキュバスならば無意識のうちに異性を魅了してしまいます」


「えっ!」


正直私は、今までほとんど家から離れることもなく、人間界に来たのも今回が初めてだ。
ハーフと言えどもサキュバスの血が流れているものの、誰かを魅了した経験はない。

でも、グラドラさんの言う通りならば‥
サキュドラだけど、それでも少なからずモテモテうふふの薔薇色生活が‥


「‥しかし不思議ですねぇ。マーベルさん、ハーフだからでしょうか?貴女からは一切、異性を魅了するサキュバス特有の香りがありませんね」


「ふぁ?!」


「くくっ」


「笑ってんじゃないよこの冷徹男!」


「まぁマーベルさん、貴女は魔界でも恵れた環境で育っています。悪魔としての力が必要なかったからこそ、その力がまだ芽生えていないのかもしれませんね」


「はぁ‥」


「明日からの学校生活の流れなどは、先ほど渡した資料に書かれております。持ち物などの最低限のものは既に部屋に準備されております‥
18時に配給として血などを配りますので、18時にまたロビーにいらしてください」


「‥わかりました」


グラドラさんは、深々と頭を下げた。
私も慌てて頭を下げる。


ノラは軽く頭を下げて早速部屋に入っていった。



重罪を犯した場合は、グラドラさんが責任を持って即処刑と言っていた。
ノラは、本当に重罪を犯す気なんだろうか。
大昔の魔界に戻すというのは、本気で言ってるんだろうか。


‥まぁ、グラドラさんが即処刑してくれるのであれば、人間界に送り込んだお父さんまで罪に問われることはないかもしれない。

見張りは続けるけど‥お父さんが罪に問われないのであれば、ノラがどうなろうと私には関係ない。




‥はぁ。
自分自身がグウタラで、イヤイヤこの生活が始まるというのに‥
ノラのせいで、真面目に勉強しなきゃいけないような気持ちになってしまうのがまず気に食わない。



遅れて910号室に入る。



入ってすぐにシューズケースがあり、新品のローファーが二足置かれていた。
玄関はそこまで広くはないけれど、タイル張りで小綺麗な感じだ。


右手には脱衣所とシャワールームがあり、左手にはトイレ。
‥脱衣所に洗濯機まで置いてある。人間文化が好きなお父さんとお母さんのおかげで、実家は人間の家電ばかりだ。操作方法はかろうじて知ってるけど‥
やったことはほぼない。


廊下の突き当たりはリビングとキッチン、ダイニングがある。広さで言ったら10畳ほど。家具家電付きで無償なんだから、贅沢な話だ。

リビングの奥にはもうひとつ扉があった。
そっと開けると、そこは6畳程のスペース。シングルベッドがすでに置かれていて、ここは寝室だということがわかった。



「‥ねぇ」


「‥‥なに?」


「なんで勝手にベッドで寝てるわけ?!」


「ここは俺とお前の家だ。俺がどこで寝ようと勝手だろ」


「いや‥いやいやいやいや、元々は私1人のスペースのはずなの。そこにあんたが急に来たの。仮にも私は女の子なんだから、私にベッド譲るのが普通でしょ?!」


「え‥」


「え、ってなによ!」


「お前‥女だったの?」


「はぁ?!」


「色気なさすぎて気付かなかったわ」


「はあああ?!」



むかつく!!むかつくむかつくむかつく!!
馬鹿にしやがって!!


ドンドンと大きな足音を鳴らして、ノラに近づいた。
ノラはぼーっとやる気のなさそうな顔で私を見たまま。



口で優しく言っているうちに言うこと聞けないんだから、もうやることは決まっている。




実力行使だ‥!!
この世は弱肉強食。あばよ、ノラ。




ノラの襟首を両手でグイッと掴み上げる。
ノラは変わらず、無気力のままだ。


ふと、ノラが私の後頭部に手を当てた。
そして、思いっきりーーー



グイッと頭を押されたのである。
簡単に言えば、ベッドの上でとりあえず超至近距離なのだ。私の首筋に、ノラの息が当たるほどの。



「な、な、なにするのよ!」


「‥‥ほんっと」


「?!?!」


「何の香りもしねーな」


「はあ?!」



両腕に力を入れて、無理矢理ノラから体を引き剥がした。とりあえず鳩尾に思いっきり拳を振り下ろし、私は寝室を後にしたのであった。




ーーーどうにかして、ベッドの所有権を奪い返さなければ‥。
私の思考は、明日からの学校生活への不安などではなく、ノラに対する敵意で埋め尽くされていたのである。

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