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第8話『幼き日(1)』
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草花が咲く小さな丘の上で、天使のような子供達が2人、無邪気に笑い転げていた。
木をよじ登るヤンチャな少年はその様子を不満げに見下ろしている。
ーーーーーーー幼き日のソフィア達だ。
「木登りする約束だっただろ!」
ムスーッと頬を膨らますレオ。
綺麗に手入れをされているはずの明るい茶色の髪には、木の枝や葉っぱ、そして泥がついている。
まん丸の大きな瞳の下には、木の枝でできたであろう切り傷まであった。
泥だらけになって帰ってくるのを想定された、庶民的なチェックのシャツとデニムジーンズは想定通り泥だらけだ。
「いまソフィアと遊んでるの!」
そう言って、ねー!とソフィアに相槌を求めるガブリエル。サラサラな金色の髪、品のある白いシャツと短パン。どちらかと言えば、レオよりもガブリエルの方が王子様に見えてしまう。
「兄たんはソフィアと遊んでるの」
そう言って、レオにニッコリと幸せそうな笑顔を向けるソフィア。白銀の髪、フリルのついた白いワンピース。幼いながらに聖女と認定された、天使のような女の子だ。
満面の笑みを向けられたレオは、すっかり戦意喪失し、大きなため息を吐いたあとに木から飛び降りた。
ちなみに、ここは城の敷地内にある裏山のような場所で、レオやレストール家の子どもたち御用達の遊び場である。
使用人やメイド、執事達が見守っているものの、暴れん坊の王子は何が何でも全力で遊び尽くし、必ず傷を作る子どもだった。
国王はそんなレオの様子について『死ななければなんでもいい』と随分とワイルドに考えており、使用人たちもそのおかげで、ハラハラしすぎない程度に見守ることができていたのである。
この日も、やや離れた木陰から3人を見守っていたが‥この日は少々深刻だった。
「わぁっ!」
珍しく木から飛び降りる際にバランスを崩したレオが、派手に転がりながら着地をした。
「大丈夫?!」
ガブリエルが駆け寄ろうとすると、レオはなんとか立ち上がり、足を痛そうに引きずりながら数歩踏み出す‥と。
「ぎゃー!!」
レオは突然、土の中に消えていった。
目を丸くしたガブリエルとソフィアがレオの元へ走った。
「レオ?!」
「レオたーん?!」
ぽっかり空いた穴の底。
レオが半泣きだ。
「落ちたーーー!!!」
レオが叫ぶ。
「なんで穴あるの?!レオ、上がってこれる?!」
「せっかく掘ったのに!!」
「‥え?」
「せっかく落とし穴掘ってたのに落ちちゃった!!」
半泣きで悔しがるレオ。
身体中泥だらけで、擦り傷だらけなその体は、見ている方が痛々しい。木から転げ落ちた上に落とし穴に落ち、全身痛いに決まっているのに、自分で掘った穴に落ちたことで泣いている。
「‥ねぇレオ、上がってこれるの?」
ガブリエルが呆れたように尋ねる。
レオは悔し泣きをしながら、頬を膨らませたままよじ登ろうとする‥が。
「‥上がれないんですけどっ!」
レオが更にむつける。
まだ幼いにも関わらず、簡単に上がってこれないような穴を黙々と掘ったことを考えれば、悔し泣きをするのもやや理解できてしまう。
「レオたーん」
ソフィアが一生懸命レオに手を伸ばす。
ソフィアの白いワンピースの袖が、土で汚れていく。レオはなんだかいたたまれなくなった。
「手伸ばさないで!!」
そうソフィアを怒鳴った。
ソフィアの袖が汚れてしまうのが嫌だったから、という台詞は思っていても出てこない。
ソフィアは一瞬悲しそうな顔をするが、それでもまた手を伸ばした。
「レオたん、助けてあげる!」
そう言って、小さな手を一生懸命伸ばした。
ガブリエルも、腕を極限まで伸ばしてレオを助けようとするが、ガブリエルの腕さえレオには届かない。
穴に身を乗り出しすぎたソフィア。
「わぁ!」
ソフィアはコロン、と穴に転がってしまった。
不思議とソフィアに痛みはない。目をパチクリさせると、レオが自分を抱きとめたのだと気付いた。
「なんでソフィアまで落ちるの!」
ソフィアを抱き抱えながらレオが怒る。
酷い痛みの中でも、咄嗟にソフィアを抱きとめたレオは、ソフィアの表情を見て怒ったことを後悔するものの、まだ8歳の少年だ。痛みやら悔しさやらで、変に興奮する気持ちを簡単に抑えることはできなかった。
「ソフィアも落ちたった‥」
「もう!!いま持ちあげるから待って!」
レオがそう言うと、ソフィアはまん丸な目を瞬きさせながらこくりと頷いた。
膝を立てて座った状態でソフィアを抱きとめていたレオは、立ち上がってソフィアを持ち上げようとしたが‥
「腕痛くてダメだーっ!」
そう言ってソフィアの持ち上げも断念する。
肘や腕も、その体を支える膝も、打撲での青アザや、擦り傷による出血で、なんとも痛々しい状態だった。
「レオ!なんとか頑張ってソフィア持ち上げてよ!」
「無茶言うなよな~」
「がーんばれっ!レーオたんっ!」
「もう!俺全身痛いんだからなぁ!」
すっかり他人事状態で呑気な様子のソフィアに、レオは更に憤っていた。
木をよじ登るヤンチャな少年はその様子を不満げに見下ろしている。
ーーーーーーー幼き日のソフィア達だ。
「木登りする約束だっただろ!」
ムスーッと頬を膨らますレオ。
綺麗に手入れをされているはずの明るい茶色の髪には、木の枝や葉っぱ、そして泥がついている。
まん丸の大きな瞳の下には、木の枝でできたであろう切り傷まであった。
泥だらけになって帰ってくるのを想定された、庶民的なチェックのシャツとデニムジーンズは想定通り泥だらけだ。
「いまソフィアと遊んでるの!」
そう言って、ねー!とソフィアに相槌を求めるガブリエル。サラサラな金色の髪、品のある白いシャツと短パン。どちらかと言えば、レオよりもガブリエルの方が王子様に見えてしまう。
「兄たんはソフィアと遊んでるの」
そう言って、レオにニッコリと幸せそうな笑顔を向けるソフィア。白銀の髪、フリルのついた白いワンピース。幼いながらに聖女と認定された、天使のような女の子だ。
満面の笑みを向けられたレオは、すっかり戦意喪失し、大きなため息を吐いたあとに木から飛び降りた。
ちなみに、ここは城の敷地内にある裏山のような場所で、レオやレストール家の子どもたち御用達の遊び場である。
使用人やメイド、執事達が見守っているものの、暴れん坊の王子は何が何でも全力で遊び尽くし、必ず傷を作る子どもだった。
国王はそんなレオの様子について『死ななければなんでもいい』と随分とワイルドに考えており、使用人たちもそのおかげで、ハラハラしすぎない程度に見守ることができていたのである。
この日も、やや離れた木陰から3人を見守っていたが‥この日は少々深刻だった。
「わぁっ!」
珍しく木から飛び降りる際にバランスを崩したレオが、派手に転がりながら着地をした。
「大丈夫?!」
ガブリエルが駆け寄ろうとすると、レオはなんとか立ち上がり、足を痛そうに引きずりながら数歩踏み出す‥と。
「ぎゃー!!」
レオは突然、土の中に消えていった。
目を丸くしたガブリエルとソフィアがレオの元へ走った。
「レオ?!」
「レオたーん?!」
ぽっかり空いた穴の底。
レオが半泣きだ。
「落ちたーーー!!!」
レオが叫ぶ。
「なんで穴あるの?!レオ、上がってこれる?!」
「せっかく掘ったのに!!」
「‥え?」
「せっかく落とし穴掘ってたのに落ちちゃった!!」
半泣きで悔しがるレオ。
身体中泥だらけで、擦り傷だらけなその体は、見ている方が痛々しい。木から転げ落ちた上に落とし穴に落ち、全身痛いに決まっているのに、自分で掘った穴に落ちたことで泣いている。
「‥ねぇレオ、上がってこれるの?」
ガブリエルが呆れたように尋ねる。
レオは悔し泣きをしながら、頬を膨らませたままよじ登ろうとする‥が。
「‥上がれないんですけどっ!」
レオが更にむつける。
まだ幼いにも関わらず、簡単に上がってこれないような穴を黙々と掘ったことを考えれば、悔し泣きをするのもやや理解できてしまう。
「レオたーん」
ソフィアが一生懸命レオに手を伸ばす。
ソフィアの白いワンピースの袖が、土で汚れていく。レオはなんだかいたたまれなくなった。
「手伸ばさないで!!」
そうソフィアを怒鳴った。
ソフィアの袖が汚れてしまうのが嫌だったから、という台詞は思っていても出てこない。
ソフィアは一瞬悲しそうな顔をするが、それでもまた手を伸ばした。
「レオたん、助けてあげる!」
そう言って、小さな手を一生懸命伸ばした。
ガブリエルも、腕を極限まで伸ばしてレオを助けようとするが、ガブリエルの腕さえレオには届かない。
穴に身を乗り出しすぎたソフィア。
「わぁ!」
ソフィアはコロン、と穴に転がってしまった。
不思議とソフィアに痛みはない。目をパチクリさせると、レオが自分を抱きとめたのだと気付いた。
「なんでソフィアまで落ちるの!」
ソフィアを抱き抱えながらレオが怒る。
酷い痛みの中でも、咄嗟にソフィアを抱きとめたレオは、ソフィアの表情を見て怒ったことを後悔するものの、まだ8歳の少年だ。痛みやら悔しさやらで、変に興奮する気持ちを簡単に抑えることはできなかった。
「ソフィアも落ちたった‥」
「もう!!いま持ちあげるから待って!」
レオがそう言うと、ソフィアはまん丸な目を瞬きさせながらこくりと頷いた。
膝を立てて座った状態でソフィアを抱きとめていたレオは、立ち上がってソフィアを持ち上げようとしたが‥
「腕痛くてダメだーっ!」
そう言ってソフィアの持ち上げも断念する。
肘や腕も、その体を支える膝も、打撲での青アザや、擦り傷による出血で、なんとも痛々しい状態だった。
「レオ!なんとか頑張ってソフィア持ち上げてよ!」
「無茶言うなよな~」
「がーんばれっ!レーオたんっ!」
「もう!俺全身痛いんだからなぁ!」
すっかり他人事状態で呑気な様子のソフィアに、レオは更に憤っていた。
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