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第17話『第1プロセス』
しおりを挟む3人ともシャワーを浴び終わり、私とシンドラは椅子に、レオ王子はベッドに腰を掛けている。
先程取り乱した余韻がまだ続いている私は、濡れたレオ王子の髪を見るだけでもドキドキが止まらない。
一生懸命レオ王子を視界から外し、なんとか平静を保つ。
屋敷から離れる度に、レオ王子とアダムがかけ離れていく。
馬車の中では、恋をしたアダムが実はレオ王子で、ずっと私と結婚していたがっていたって話と結び付けて、とても嬉しく思っていたんだけど‥。
いや、もちろん身にあまり過ぎる光栄というか、もうとんでもなく幸せな話なんだけど‥
その、アダムの要素はどこへ‥
シンドラ同様、レオ王子も姿を隠して水面下での行動をすることが多かったようだから、色々な人になりきる術を持っているのかもしれない‥。
そう思うと、アダムが消えてしまったようで切なくなる。
私が恋をしたのは、レオ王子が演じた顔の1つだったのかもしれない、と。
「‥漠然と俺らについてきても不安だと思うから、とりあえずこれからの動きを説明するよ」
レオ王子が静かに言葉を落とした。
確かに、現状は私にとって何が何だかよくわからないまま遠くへ来たという感じだ。
声を戻すために、そしてレストール家を信じていいのかを確かめるために。
そこまでのプロセスはわからない。
「‥まずは、森の中にある隠れ家で数人の仲間と落ち合う予定だ。
しばらくそこに潜伏したあと、俺の仲間が‥ガブリエルが白魔法を使わなくてはならない場面を作る」
きっと、私はきょとんとした表情をしているはずだ。
ガブリエルに白魔法を使わせる‥それは何のためなんだろう?
「俺は幼い頃からガブリエルとよく遊んでたけど‥
あいつが白魔法を使えるようになったのは、ソフィアと暮らし始めてからだ」
ーーー!
「俺がガブリエルやハロルド公爵に、なぜ急に白魔法を使えるようになったのか尋ねてもはぐらかされるだけだった」
つまりーーー
私が近くにいたことでガブリエルは突然白魔法を使えるようになったの‥?
でも‥もし、私が近くにいることで周囲の人も白魔法を使えるようになるのであれば、
ハロルド公爵やシンドラをはじめとする屋敷の人たちも白魔法が使えるはず。
「魔法を使えるのは、元々魔力を持っている人だけじゃない。魔女の血を飲むことで‥その魔女が得意とする魔力を手に入れることができる」
‥‥‥まさか、
ガブリエルが私の血を飲んでいた‥?
ゾワっと全身に寒気が走る。
そんな‥それがもし本当ならば、いつの間に‥
「魔女の血を飲んだからと言って、その効力がいつまでも続くわけじゃない。飲む量に応じて、それは変わるんだ。
ガブリエルは、ソフィアと出会ってから今日まで、常に怪我人や病人を見かけてはその力を使ってきた。
まぁ魔力が限られてるから、全ての人を治せるわけではないけど。
つまり、俺の読みがもし本当に当たっていれば‥
ソフィアの血によって、ガブリエルは白魔法の力を手に入れ‥何らかの方法でこまめにソフィアの血を飲み続けていたってことだ」
ーーーーもしこの仮説が当たってたら‥
レストール家は私を逃がしたくないだろう。
ガブリエルの人気の秘密は、公爵家の息子であり、見た目も中身も素晴らしい‥というだけではない。
希少価値の高い『白魔法の使い手』という要素も相俟ってのことだ。
「ソフィアの反応を見る限り、ソフィアは同意の上で血を提供していたわけじゃない。
となると、こんな長年の間‥怪しまれずにソフィアの血を手に入れる方法は1つしかない」
「‥ソフィア様。
ハロルド公爵があなた方のために、と毎月行っていた健診ですよ」
ああ、そっか‥‥‥
月に一度の‥健診‥。
ハロルド公爵に、大事にされているのだと‥そう思っていた健診。
そうじゃ、なかったんだ‥
怪しまれずに私の血を‥手に入れるため。
「‥ただ、まだ確定じゃない。あくまでも仮説だ。
公表していなかっただけで、本当にガブリエルが生まれつき白魔法の使い手だったという可能性もある」
そうか。
だからこのタイミングで屋敷を出れば‥
数日後に行うはずだった健診を行わなければ‥
ガブリエルの白魔法が、私の血によるものなのか、本人の元々の素質なのかがわかるんだ。
「それに、ガブリエル自身も気付かずに『摂取させられてる』可能性だってある」
「ガブリエル様のソフィア様への愛情深さは、利己的なものではありませんでしたからね。純粋に貴女を愛しているように私の目には見えていましたから」
‥確かに、そうかもしれない。
ガブリエルの愛は重たすぎて、私には到底受け入れられるものではなかった。
私を手に入れたいがために、相当重い愛をぶつけてきていた。
でも、それは白魔法の力を手に入れたいが為かと聞かれたら、そうではない気がする。
ガブリエルは、私には一方的に愛を主張していたけれど、本来周囲の自分への評価を気にするような人ではなかったから。
「‥とにかく、まずはそれを確かめれば、次のステージに進めるんだ」
ーーー不思議だ。
つい最近までは、一生屋敷にいるんだと自分自身信じ込んでいたのに。
私の声を取り戻すために、ここまで考えて、ここまで協力してくれる人たちがいるなんて。
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