公爵家のだんまり令嬢(聖女)は溺愛されておりまして

茶歩

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第18話『仲間たち』

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シンドラが魔法で乾かしてくれていた服を着て、私たちは早朝宿を出た。
まだ顔を出したばかりの朝日を見ながら、二頭の馬で旅路を行く。馬に乗れない私はレオ王子の後ろだった。


時折休憩を混ぜながらも、すっかり人里離れた森の中へたどり着いたのは、もう月が顔を出した頃だった。



「ーーーついたぞ」


レオ王子が馬から降りて、私に手を差し出しながら呟いた。
森の茂みの中、ログハウスのような山小屋があった。


レオ王子の手を取り、馬から降りて周囲を見渡す。
今はまだ薄っすらとあたりが明るいからいいけど、完全に日が落ちたら、外は一切出歩けないんじゃないか‥。
街灯も何もなく、生い茂る草木によって月明かりすら遮断してしまいそうだ。



「遅かったじゃねーか!」


突然、ザシュッという音がして、目の前に小さな男の子が現れた。
驚きのあまり後ろへ数歩後退りしてしまったほどだ。

今‥この子、木から飛び降りてこなかった‥?


「レオ様、この子がそうかい?」


「ああ、ソフィアだ。
‥ソフィア、このちっこいのはキノ。主に見張りや用心棒だ。森での暮らしに慣れてる」


キノと呼ばれた男の子は、ニカッと笑った。
全体的に茶色や深緑色の服装で、この森によく溶け込んでいる。相当身軽なようで、二度ほどバク転をして私たちから離れると、「とっとと入れよ!」と玄関の扉を開けてくれた。


キノさんに促されてみんなで山小屋に入る。
こんなに山奥にあっても、中は意外と清潔で生活感があった。
しばらく隠れて生活する場所としては、文句なしの場所だ。

シンドラもここに来るのは初めてのようで、私とシンドラはレオ王子に山小屋の内部を一通り案内してもらった。


一階にはリビングと小さなキッチン、シャワーやトイレがあって、二階はハンモックや簡易的なベッドなどが置かれていた。

シャワーやトイレ、食事用の水や洗濯は近くの湧き水を利用するらしい。
経験したことのない環境に身を置くのは、こんな状況の時であっても胸が昂ぶってしまうものだ。

少なくとも、私は本来‥ただ室内でじっと遊ぶよりも、レオ王子やガブリエルと外で遊ぶことが大好きだった。探究心や好奇心旺盛だったはずの、封印されていた心。


逃げている、
裏切っている、


そんな状況であっても、封印されていたはずの心が解放されて、どこか浮き足立ってしまっている気がする。




山小屋を案内されている最中、リビングには2人の男性がいた。
1人はユーリさんという30代半ばくらいの、渋めの男性。もう1人は、ネロさんという私とそう年の変わらない線の細い男性だった。

レオ王子曰く、ユーリさんは剣術がとても強い、元騎士らしい。
ネロさんは、家事全般が得意な弓使い。
キノさんも、身軽さを武器に、剣術のみならず飛び道具も使うらしい。

かくいうレオ王子も、剣術の腕が凄いという噂を耳にしたことがある。



つまり、今ここに揃っているのは私以外はみんな戦闘力のある人たちだ。
シンドラは、変装系に特化しているといっても、立派な魔法使いだ。もちろん攻撃魔法も扱えるはず。


敵に襲われるとか、そういう場面に出くわしたことがないからなんとも言えないけど‥私も何か武術を身につけた方がいいのかな‥でも絶対足手纏いだし、とりあえず頼もしい人たちに囲まれていることに感謝しておこう‥。



今までの屋敷での生活では、外での刺激がない生活だったから、ほぼ毎日顔を合わせる人たちは同じだった。
こうして新しい出会いが急に押し寄せると、もちろん新鮮で嬉しい!とも思うけど、コミュニケーションを取りづらい私にとって緊張や不安の方が断然大きくなってしまったりする。


どういう人なんだろう。
でもきっと、レオ王子がいう「仲間」なんだから、信用していい人たちなんだろう。



「レオ様、コーヒーでいいですか?」


ソファに腰を掛ける私たちに、ネロさんが問い掛ける。


「おう、さんきゅー」


「かしこまりました。
さて、麗しきレディー方、お紅茶や薬膳茶、レモネードもございますがどうなされますか?」


「おい!ネロ!どういうことだ!」


「レオ様コーヒーしか飲まないじゃないですか」


「いつもコーヒーでいいですか?しか言われねぇからだよ!おまえのそのエセ紳士やめろよ気持ち悪い」


「ひどい!僕はこう見えて貴族の息子ですよ?」


「隣国の没落な」


「まぁそうとも言います!」



しばらくして2人の小さな口喧嘩が終わった頃に、私とシンドラもコーヒーを頂いた。


いつも屋敷では、甘い紅茶だった。
まだ幼かった頃から、私は甘い紅茶が好きなんだと周囲がずっと認識し続けていたからだった。


レオ王子とシンドラの真似をして無糖のコーヒーを飲んだ。
口の中に広がる苦味は、未だかつて経験したことのないものだった。


それでも、不思議と美味しく感じて、こんな小さなことでも今までのガチガチの枠組みからはみ出せたことが嬉しかった。


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