公爵家のだんまり令嬢(聖女)は溺愛されておりまして

茶歩

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第25話『好き』

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ここでの暮らしも1週間以上が経過していた。

みんなの動きとしては、変身できるシンドラと、交渉術が得意なネロさんを中心に人里へ降り、キノさんが調合する薬草を売って、新たな物資を手に入れている。

レオ王子の仲間は他にも各地にたくさん潜伏していて、レオ王子は各地からの情報をこまめに手に入れていた。

ユーリさんは日曜大工が得意で、私とシンドラが落ち着いて寝れるように寝室内にパーテーションを作ってくれたり、レオ王子としょっちゅう手合わせをしている。


私はといえば、何も活躍できずに落ち込んでいたけれど、最近はネロさんに教わったお裁縫をマスターするために努力していた。
キノさんやユーリさんやレオ王子は山の中でアクティブに動くことが多くて、よく服を破る。

レオ王子は王子と言っても、今はお忍びで生活している身だ。金銭的余裕があるわけではないので、何着も服を買うわけにはいかない。そのため、お裁縫の技術は、ここの生活ではなくてはならないものだった。






ーーー今日は、朝からシンドラとネロさんは人里に降りている。
2人の代わりに教わった家事を頑張ろうとリビングで洗濯物を干していると、2階からレオ王子が降りてきた。
着替えの途中だったようで、上半身はほば半裸だと言っても過言ではない。

ちなみに、あのキスをした夜からはなかなか2人きりの甘い時間は無く、お互い何事もなかったかのような素振りを見せていた。
キノさんに見られていたという衝撃も大きく、少し気をつけないと‥と意識して行動しているからかもしれない。



2人きりの貴重な時間に喜ぶ暇もなく、私の視線はレオ王子の綺麗な腹筋に釘付けだった。
どうしてこんな格好‥



「ソフィア!
これ腕が通らないぞ!!」


ーーえ?!



急いでレオ王子の元へ駆け寄る。
この服は、一昨日私が縫ったやつだ‥!


破けた袖を縫おうとしていたのに、どうやら貫通させてしまったらしい。


私は、レオ王子が中途半端に来ていた服を全て剥ぎ取った。



「わ、追い剥ぎかよ!」



レオ王子を視界に入れてしまうと、その半裸の姿に爆発してしまいそうになるので、意識を服に集中させた。


キノさんが作ってくれたカードで、『待って』と伝える。


「‥直してくれんの?
じゃあここで待ってるわ」


レオ王子は、そう言ってソファに座った。


裁縫セットを取り出して、急いで縫い直した。
みんな何かしら活躍しているのに、私だけ足手纏いなうえ、こんなに簡単なお裁縫すらできないと思われたくない‥。


少々荒くなってしまったけど、今度はしっかりと腕が通るはずだ。



少々ドヤ顔でレオ王子に服を差し出す。




「お、おう。さんきゅー」



元はと言えば、私の失敗のせいで縫い直したというのに、何故ドヤ顔をしてしまったんだ‥と自分にツッコミを入れる。


レオ王子は服を着て、嬉しそうに微笑んでくれた。



「洗濯物干してくれてたの?」


コクリと首を縦に振る。


「偉いじゃん、俺家事なんてできねーよ」


それはそうだろう。レオ王子は王子様だ。
私もレストール家のご令嬢だから、家事はまるでやったことがなくて、ここでの生活は私にとって本当に学びそのものだった。

それもこれも、レオ王子とシンドラが連れ出してくれて、みんなが迎え入れてくれたからだ。



私は、レオ王子に『ありがとう』のカードを見せた。



「‥そのカード、よかったな」


コクリと頷く。
スムーズに伝えたいカードが見つからなかったり、カードだけでは伝えられないことが多かったりするけれど、今までの私に比べたら大きな進歩だ。


ソファに座るレオ王子。
どうやら山小屋の外には行かないようだ。


沈黙が、ほのかな緊張感を誘う。




キノさんは釣りに出かけたし、ユーリさんは山小屋の前で見張りをしながら何かをまた作っているし‥
これは‥‥チャンスなのでは?




私は、1つのカードを持って、レオ王子の隣に腰掛けた。


「‥ん?洗濯物干さないの?」


首を横に振った。
一時中断というやつだ。


「‥手伝う?」


その問いにも、首を横に振った。



「‥‥‥‥キスしたいの?」



少し戸惑ったような様子を見せるレオ王子に、私は1枚のカードを裏にして差し出した。


「え?あれ?キスじゃなかったの。
恥ずかしー」


照れ笑いをするレオ王子は、カードをめくって文字を読み、見事に固まった。




『好き』



その二文字が書かれたカード。
なんの脈略もなく、唐突に渡すには少々刺激物かもしれない。


レオ王子が私を好いてくれているかはわからない。
だけど私は、私の気持ちを知ってもらいたくて仕方がなかった。

キスをしてくるくらいだから、気持ちを伝えたところで突き放されたり関係が壊れることはないだろう、という憶測もあってのことだった。



レオ王子は、耳を赤く染め、私を見た。
形の良い唇をもぞもぞと歪ませ、何かを堪えているように見える。



ああ、迷惑だったかな?



「反則だよソフィア‥
こんな急に‥」


はー、とため息を吐いたレオ王子は、私の髪をひと束掬い上げ、小さくキスを落とした。



「俺の方が絶対に好き」



ドキッとして肩が跳ねた。
頬はきっと一瞬にして赤く染まってしまっただろう。



嬉しい。
レオ王子も好きでいてくれてたんだ‥。



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