27 / 87
第26話『深すぎる』
しおりを挟むどちらからともなくキスをした。
私自身がこんなに恋に積極的だとは、少し前までの私は想像もできなかった。
ただただジッと心を殺して生活していたことへの反動なのだろうか。
いつから好きでいてくれてたの?
どのぐらい好き?
そんな質問は、カードでは不可能だ。
ちゅっ、ちゅっと触れ合うだけのキスが続く。
ーーーもどかしい。この前みたいにもっと激しいキスがしたいのに‥。
耐えかねた私は、張り裂けそうな胸を抑えて、レオ王子の唇を舌で舐めあげた。
「ちょ‥」
レオ王子は、私の両肩に手を置き、ぐいっと体を引き離した。
ーーーどうして?
先程まで感じていたレオ王子の熱から解放され、途端に寂しさに襲われてしまう。
私の恋は、どうやら気性が荒すぎる。
レオ王子は、いるはずのないと思っていた理解者であり、カチコチに固まっていた私の心を解きほぐしてくれた人。
未来に希望を持たせてくれる人。
堰を切ったように、とめどなく溢れてくる思いを、どう制御して良いのかわからない。
でも、こんな私の気持ちは、レオ王子にとって重荷だったのかもしれない。
こうして拒否されると、まるでナイフを刺されてしまったかのように、心は酷く痛んだ。
「ソフィア、ごめん。
これ以上すると抑えられないから」
レオ王子が、視線を落として申し訳なさそうに言う。
そういえば、この前キスをした時もそんなことを言っていた。抑えられない?それはどういう意味なんだろう。
抑えなくていいのに。
私自身がこうして抑えられていないのに、どうしてレオ王子が抑える必要があるんだろう‥。
恐る恐るレオ王子に手を伸ばす。
レオ王子の唇を這わす指は、拒否されることなくその弾力のある唇に添って動いた。
私は、もっと触れたいのに。
時間が許す限りキスしたいのに。
「お前‥さ、キスの先、知ってんの?」
ーーーキスの先?
それは‥‥
経験はもちろんないけれど、ぼんやりとした薄っぺらい知識だけはある。
レストール家の閉鎖的な空間の中、私には無縁の知識すぎて、誰かにまじまじと教えてもらうことは今までなかった。
あまりにも私が生きてきた現実とかけ離れすぎていて、キスの延長としてすぐにその行為が思い浮かばなかった。
そうか、そういうことか。
頬は一瞬で火照った。きっと耳まで赤いはずだ。
その行為を我慢できなくなるから、とレオ王子は言っているんだろう。
ああ‥でも、辛そうに我慢する表情も‥見てみたいかもしれない。
‥って私、なんてことを思ってしまっているのかしら。
「‥知らないわけねーよな」
困ったように言葉を落としたレオ王子に対し、首を縦に振った。
思いつかなかっただけで、知らないわけではなかった。
「‥‥」
首を縦に振ってから気付いたけれど、これはレオ王子に対する大いなる挑発と言っても過言ではない。
その先にその行為があると知っていて、『我慢できないからやめて』と言われているにも関わらず、指先でレオ王子の唇の感触を楽しんでいるのだから。
レオ王子は、少しムッとした表情で、私の髪を五指に絡めて、深く呼吸をした。
「なんだか余裕そうじゃんかよ」
突然ヒョイっと体が宙に浮いた。
お姫様抱っこというやつだ。
ーーー?!
「真っ昼間からここですんのもムードがないからな。
ベッドでしよう」
え‥?
え、え、えええ?!
そんなぁ!私心の準備もなにもできてないよ‥!
レオ王子の腕に揺られながら、考え直してもらえないかと必死に肩付近を叩いた。
ごめん。調子に乗って唇触ってすいませんでした!許して!
いくら肩を叩いてもレオ王子は私を見ることはなく、あっという間に寝室まで辿り着いてしまった。
私のベッドに寝転ばせられる。
パーテーションがあるから、私のベッドを選んだのかな‥。
ああ、どうしよう。
まさかレオ王子を本気モードにさせてしまうなんて。
ああああああ。
覆い被さるようにして私を見下ろすレオ王子。
じっと熱い視線を感じるけど、私はそれに答えることができなかった。
ただただ周囲を見渡したり、レオ王子の鎖骨あたりを無駄に凝視して、けして目を合わせないように努めた。
「そんなにしたいなら、たんまりとしてやるよ」
レオ王子の唇が落ちてきた。
ゆっくりと時間をかけて柔らかなキスをしたあとに、舌をねじ込むような激しいキスに襲われる。
全身の力が抜け、指先まで痺れるような感覚に陥った。
甘いキスに飲み込まれ、どうにも息が続かない。
私は、思わずレオ王子の顔を掴んで引き離した。
荒れた呼吸を繰り返して、なんとか新鮮な空気を体内に取り込もうとすると、それを遮るように再びレオ王子の唇が私の唇を塞いだ。
レオ王子は澄ました表情を浮かべているというのに、私ときたらまるで死にものぐるいだ。
ようやく、キスをしながら上手いこと鼻で呼吸ができるようになった頃には、私の体力は0に等しかった。
お互いの唾液が、全て入れ替わってしまったんじゃないかとまで本気で思えてしまうほどの長いキス。
やっと唇が離れると、レオ王子はまるで悪戯っ子のような笑みを浮かべて、随分と満足げな表情をしている。
「満足したか?」
ゆっくり体を起こしながらそう言うレオ王子に、想像以上の長く激しいキスをお見舞いされた私は、力なく首を縦に振った。
「じゃあ良かった。
下じゃこんなキスできないからな」
瀕死状態の私とは違い、レオ王子はまだピンピンしている。困った‥これからアレをするのだろうか。
「‥襲ってやりたいところだけど、そろそろウルセェ奴ら帰ってくるから、今日はこれでおしまいな」
‥ホッ。
「俺、スイッチ入ったら今日みたいなのお見舞いしちゃうから、あんま煽んないでくれよ」
コクコク、と激しく頷いた。
蕩けて、痺れて、壊れてしまうんじゃないかと思った。
深いキスはしたかったけど、今日のはちょっと深すぎだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる