公爵家のだんまり令嬢(聖女)は溺愛されておりまして

茶歩

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第26話『深すぎる』

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どちらからともなくキスをした。
私自身がこんなに恋に積極的だとは、少し前までの私は想像もできなかった。
ただただジッと心を殺して生活していたことへの反動なのだろうか。



いつから好きでいてくれてたの?
どのぐらい好き?


そんな質問は、カードでは不可能だ。




ちゅっ、ちゅっと触れ合うだけのキスが続く。
ーーーもどかしい。この前みたいにもっと激しいキスがしたいのに‥。


耐えかねた私は、張り裂けそうな胸を抑えて、レオ王子の唇を舌で舐めあげた。



「ちょ‥」


レオ王子は、私の両肩に手を置き、ぐいっと体を引き離した。


ーーーどうして?

先程まで感じていたレオ王子の熱から解放され、途端に寂しさに襲われてしまう。




私の恋は、どうやら気性が荒すぎる。
レオ王子は、いるはずのないと思っていた理解者であり、カチコチに固まっていた私の心を解きほぐしてくれた人。
未来に希望を持たせてくれる人。


堰を切ったように、とめどなく溢れてくる思いを、どう制御して良いのかわからない。



でも、こんな私の気持ちは、レオ王子にとって重荷だったのかもしれない。
こうして拒否されると、まるでナイフを刺されてしまったかのように、心は酷く痛んだ。



「ソフィア、ごめん。
これ以上すると抑えられないから」


レオ王子が、視線を落として申し訳なさそうに言う。


そういえば、この前キスをした時もそんなことを言っていた。抑えられない?それはどういう意味なんだろう。


抑えなくていいのに。
私自身がこうして抑えられていないのに、どうしてレオ王子が抑える必要があるんだろう‥。


恐る恐るレオ王子に手を伸ばす。
レオ王子の唇を這わす指は、拒否されることなくその弾力のある唇に添って動いた。




私は、もっと触れたいのに。
時間が許す限りキスしたいのに。



「お前‥さ、キスの先、知ってんの?」


ーーーキスの先?
それは‥‥



経験はもちろんないけれど、ぼんやりとした薄っぺらい知識だけはある。
レストール家の閉鎖的な空間の中、私には無縁の知識すぎて、誰かにまじまじと教えてもらうことは今までなかった。


あまりにも私が生きてきた現実とかけ離れすぎていて、キスの延長としてすぐにその行為が思い浮かばなかった。


そうか、そういうことか。
頬は一瞬で火照った。きっと耳まで赤いはずだ。


その行為を我慢できなくなるから、とレオ王子は言っているんだろう。

ああ‥でも、辛そうに我慢する表情も‥見てみたいかもしれない。
‥って私、なんてことを思ってしまっているのかしら。



「‥知らないわけねーよな」



困ったように言葉を落としたレオ王子に対し、首を縦に振った。
思いつかなかっただけで、知らないわけではなかった。


「‥‥」



首を縦に振ってから気付いたけれど、これはレオ王子に対する大いなる挑発と言っても過言ではない。
その先にその行為があると知っていて、『我慢できないからやめて』と言われているにも関わらず、指先でレオ王子の唇の感触を楽しんでいるのだから。




レオ王子は、少しムッとした表情で、私の髪を五指に絡めて、深く呼吸をした。



「なんだか余裕そうじゃんかよ」



突然ヒョイっと体が宙に浮いた。
お姫様抱っこというやつだ。



ーーー?!




「真っ昼間からここですんのもムードがないからな。
ベッドでしよう」


え‥?
え、え、えええ?!





そんなぁ!私心の準備もなにもできてないよ‥!



レオ王子の腕に揺られながら、考え直してもらえないかと必死に肩付近を叩いた。



ごめん。調子に乗って唇触ってすいませんでした!許して!



いくら肩を叩いてもレオ王子は私を見ることはなく、あっという間に寝室まで辿り着いてしまった。


私のベッドに寝転ばせられる。
パーテーションがあるから、私のベッドを選んだのかな‥。

ああ、どうしよう。
まさかレオ王子を本気モードにさせてしまうなんて。



ああああああ。



覆い被さるようにして私を見下ろすレオ王子。
じっと熱い視線を感じるけど、私はそれに答えることができなかった。
ただただ周囲を見渡したり、レオ王子の鎖骨あたりを無駄に凝視して、けして目を合わせないように努めた。



「そんなにしたいなら、たんまりとしてやるよ」


レオ王子の唇が落ちてきた。
ゆっくりと時間をかけて柔らかなキスをしたあとに、舌をねじ込むような激しいキスに襲われる。

全身の力が抜け、指先まで痺れるような感覚に陥った。


甘いキスに飲み込まれ、どうにも息が続かない。
私は、思わずレオ王子の顔を掴んで引き離した。

荒れた呼吸を繰り返して、なんとか新鮮な空気を体内に取り込もうとすると、それを遮るように再びレオ王子の唇が私の唇を塞いだ。

レオ王子は澄ました表情を浮かべているというのに、私ときたらまるで死にものぐるいだ。


ようやく、キスをしながら上手いこと鼻で呼吸ができるようになった頃には、私の体力は0に等しかった。
お互いの唾液が、全て入れ替わってしまったんじゃないかとまで本気で思えてしまうほどの長いキス。


やっと唇が離れると、レオ王子はまるで悪戯っ子のような笑みを浮かべて、随分と満足げな表情をしている。



「満足したか?」



ゆっくり体を起こしながらそう言うレオ王子に、想像以上の長く激しいキスをお見舞いされた私は、力なく首を縦に振った。


「じゃあ良かった。
下じゃこんなキスできないからな」


瀕死状態の私とは違い、レオ王子はまだピンピンしている。困った‥これからアレをするのだろうか。


「‥襲ってやりたいところだけど、そろそろウルセェ奴ら帰ってくるから、今日はこれでおしまいな」


‥ホッ。


「俺、スイッチ入ったら今日みたいなのお見舞いしちゃうから、あんま煽んないでくれよ」


コクコク、と激しく頷いた。
蕩けて、痺れて、壊れてしまうんじゃないかと思った。


深いキスはしたかったけど、今日のはちょっと深すぎだ。
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