85 / 87
第83話『ポスラ到着』
しおりを挟む本来、デール経由でポスラに向かうルートは船に乗る必要があったけど、湖の家からポスラに向かうルートでは陸路で進むことができた。
レオにほんの少しだけの血を与え、白魔法で回復しながら進むこと5日間。
簡易的な激安宿に寝泊まりしながら、私たちはなんとかポスラに辿り着くことができた。
「圧巻だな」
「わー、小舟でいちいち移動しなきゃいけないレベルですね」
「先生を見つけ出すのが難しそうです」
水の都ポスラというだけあって、運河が街の至る所を通っている。
それなりに街の規模は大きく、色とりどりの屋根が芸術的だ。
「奴らはこっちの動き掴んでんのかな」
レオの言葉に、ネロさんが口を開く。
「レオ様が情報買った情報屋の女って、ハロルド公爵と繋がってるんでしょ?」
え、そうなの‥?
それじゃあシーグリットさんに会うためにポスラに向かったっていうのも筒抜けなんじゃ‥
「あの情報屋は、対価さえ渡せば信頼できる。
客の情報は極秘だからな。まぁ、ハロルドから対価を貰って俺の悪い噂は散々流してたらしいけど」
「ふふっ、まぁ割り切ってるってことだね。
まぁそれなら一安心ですね」
「でも追っ手がどの街にどれだけ潜んでるかは分かりません。慎重に行動していかなくては」
運河を渡る小舟の中、3人がヒソヒソと会話を続けている。
私はその話を聞きながら、ふと運河の水面を見た。
小さな葉っぱが、浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返している。
ーーー?
この小舟のスピードに合わせて葉っぱが付いてきてる‥?
3人の方をバッと見るけど、3人は込み入った話を続けたまま。
偶然かもしれないし、話を遮ってまでこの光景を教える必要はないかな‥
そう思って、もう一度水面に視線を移した。
浮遊している瓶にぶつかった葉っぱ。
瓶に引っかかったまま、停滞している。
やっぱり気の所為だよね。
葉っぱが追いかけてくるなんて‥。
ーーー!!!
葉っぱはその大きさを変えないまま、形を変えて人型になった。
トテトテトテ、と水面を猛ダッシュで懸命に走っている。
お、追いかけてる!
やっぱり追いかけてる!
これ、魔法だよね‥
‥追っ手?
私はレオの腕を引いた。
「ん?どうしたソフィア」
水面を指差して、その存在を伝えてみる。
「なっ」
驚いたレオは目をまん丸にして声を上げた。
そんなレオと私の様子に気が付いたシンドラとネロさん。
「うわぁ、もう追っ手なの?」
うんざり気味にネロさんがそう言うと、シンドラが目を見開いたまま首を横に振った。
あ、ちなみに、シンドラは茶色の髪のショートヘアの女性に扮している。
「これは、先生の魔法‥」
シンドラの口元が嬉しそうに弧を描いた。
ひゅんっと上下にシンドラが人差し指を宙で動かした。
キラキラと光る星屑のようなものがその人型の葉っぱに触れると、葉っぱは突如空高く跳ね上がった。
「うわ、飛んだ」
レオが驚きの声を上げる。
「あっちですね。
北東の方角‥あの一際目立つ大樹の方向‥ですか‥」
まるでキノコ雲。
そのくらい、連なる屋根の中で突然大樹が空に飛び出ている。
シンドラの眉根が険しい。
どうしたんだろう。
「シンドラさん、どうしたの?」
異変に気付いたネロさんが首を傾げる。
「‥いや、あの‥。
先生は‥大樹の魔女なんです。あからさますぎて‥」
「あはは」
ネロさんが愉快そうに笑った。
「笑わないでくださいよ、一大事なんですから‥」
「まぁ先生は変わらずここにいたってことじゃないですか。
よかったよかった」
‥やっぱり。
2人の間に以前のような壁は見えない。
仲間が減ってしまったからこそ、団結力が高まっている‥とか?
「お前らどうしたの。
目ェ覚めてからずっと言おうと思ってたけど」
レオもぽりぽりとこめかみを掻きながらそんなことを言う。
「いやぁね、俺の初恋が実ったってこと。
相思相愛なんだよねー、シンドラさん♡」
物凄く軽い勢いで、ネロさんがウフフと笑った。
途端にカァーッと顔を真っ赤にしたシンドラは、首を全力で横に振る。
「わ、わた、私がいつ!
私がいつ貴方を好きって言いましたか?!」
咎めるようにそう否定しているけど、今までのツンドラな雰囲気は無い。その上わなわなと震え上がるその様子を見れば、ネロさんに恋をしているということは一目瞭然だった。
「えー?好きじゃないの?ショック~」
「す、好きじゃないとは一言も!!って!!
ち、違いますよ!レオ王子、ソフィア様!好きとかそういうんじゃありませんから!!」
「お前ら‥
ユーリが死んだってのに‥俺が眠っている間に青春してたのかよ‥」
「ち、違うんです!!話を聞いてくださいっ!!」
「あー、まぁ簡単に言うと?俺が幼い頃に恋した女性が、過去に飛んだシンドラさんだったっていう話」
「え、すご‥」
レオも私も目を見開いて驚いている。
なにそれ、なにそれ!すごい‥
「まぁ俺たちのことは置いといて!
とりあえず大樹目指しましょうか~」
ネロさんがそう笑った。
俺たちという表現に、シンドラはそっぽを向きながらも少し照れ臭そうだ。
ユーリさんが亡くなった悲しみ、キノさんが離れてしまった悲しみ。
それは心の中にすっぽりと穴を開けて、心を凍りつかせてしまうものだけど‥シンドラとネロさんの出来事は前を向いて歩くための力。私たちの心に寄り添い‥温かさを感じさせてくれるものだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる