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04 お茶会にて
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ヘリオと仲良く(?)なってから三十分程経っただろう頃にラチア様は屋敷に到着した。
これがもう見計らっていたかのように予定時間ピッタリに。
「今回もお招きいただきありがとうございますラブラ様。……お待たせさせてしまいましたね、すみません」
「いいえ。時間ぴったりですわ、ラチア様」
「ああ、私が少しラブラ様に少しお話しする事があって予定より早く押し掛けてしまっただけですので…お気になさらないで下さい」
さっきのあどけなさの残る口調とは打って変わって気品のある雰囲気を纏ったヘリオにここまで変わるものなのかと感心する。
というか素の一人称がボクなのが私としてはギャップを感じるところなのだろう。
「そろったところですしお茶にいたしましょう?」
私がそう言うと使用人達は椅子を引き、二人に椅子を勧める。
勧められるままに二人は座ると彼らと私の前にお菓子と共に紅茶が準備される。
今日も今日とてハウと料理長によって厳選されたお茶菓子と茶葉が使用されている事だろう。
「わぁ…これはいい茶葉ですね、うちの紅茶には無い香りがします」
口をつける前に紅茶の香りを楽しんでいたヘリオがふわりと微笑んだ。
すると側で控えていたハウが嬉しそうに口を開く。
「お褒めいただき大変光栄にございます、ヘリオ様。こちらの紅茶の茶葉は紅茶専門の商会から取り寄せておりまして滅多に手に入らない茶葉なんだそうです」
紅茶にはどの使用人達もハウの右に出る者はいないだけあって流石過ぎる熱意だ。
そんな彼女の紅茶をいつも飲んでいる所為なのか私も最近、香りで茶葉の違いが分かるようになってきていた。
確かにこれは今までの中で一番美味しい気がしている。
「紅茶専門の商会なんてあるのですね…奥が深い。」
ふむ…とヘリオはハウと紅茶談義に入り始めてしまってお茶会開始早々、置いてけぼりを食らったラチア様と私はクスリと笑い合う。
なんだか初めてのメンバーにしては妙に馴染んで少し楽しいと思える。
あんなに緊張していたのに不思議なものだ。
「ラチア様は今年、魔法学院を卒業なされるのですわよね…魔法学院とはどのような感じなのですか?」
私の中の魔法学院はゲームでの印象しか残っておらず、詳しい事まではよく分からないのだが現代の学校に近い感覚なのだろうか。
そう思った私はまだ歳的に現役のラチア様が質問するには最適だと軽率にも考えついた。
ラチア様の事だし……生徒会長とかやってそうよね。
「そうですね…生徒会の仕事に追われていた思い出が強くて大したことは言えませんが……楽しくもあり、ある意味危険な場所でもありました」
あとはとにかく広くて必ず一度は授業に遅刻しかけます…と苦笑しながらラチア様は語る。
やっぱりラチア様でさえ道に迷う程なのか…魔法学院よ……。
城に住むラチア様でさえ迷うのなら方向音痴の予兆が見られる私は必ず一回は遅刻確定だろうな。
そして生徒会と聞いてこれは予想通りベタではあるが生徒会長だったのではないだろうか。
「生徒会……という事はもしかしてラチア様は生徒会長だったりするのですか?」
ラチア様の口振りから生徒会の仕事は大変そうだという事だけは窺い知れるが流石は第一王子、問題なくこなせているのだろう。
器量も良しと来たらもう弱点なんて彼には見当たりやしない。
「はい…恐れながら」
「あら…?そう言えば魔法学院は全寮制だった筈ですが…まだ寮生活なのではありませんの?」
ここ最近ホイホイと私の屋敷に赴いていたり、城でのお茶会にもいたような気がしていたような……。
何らかの長期休暇なのだろうか。
「弟達の誕生日と公務もあって特別に少し城に戻らさせていただいてるんです」
なんでもあのお茶会とラチア様を含めた公務の為に城に一時的に戻っていて、学院には城から通っているのだとか。
なんというか忙しい身なのに私の屋敷でお茶会なんてしていていいのだろうか……。
「…お忙しいのにわざわざお越し頂いてありがとうございますわ…ラチア様」
「ああ…!全然気にしないでください!…僕がラブラ様にお会いしたくてお邪魔しているので」
「あ、ありがとう…ございます…」
サラッと笑顔で言い切るラチア様は王子スマイルの無駄遣いである。…というか心臓に悪い。
こんな美形なのに攻略対象ではないのだから不思議だ。
「楽しそうなお話ですね、私も混ぜてくださいよラチア様?」
ハウと話し込んでいた様子だったヘリオがどことなく刺々しい雰囲気を纏いながら微笑む。
そんな彼の雰囲気をものともせず、と言うよりは気づいていないといった感じでラチア様も優しく笑い返す。
「そうですね…そう言えば、ヘリオ様は数日後のラブラ様の誕生日記念の舞踏会にいらっしゃるのですか?」
上手いこと話題を見つけたというようにラチア様はヘリオに私の社交界入りの舞踏会についての話題を振った。
私にとってはあまり話したくない内容でしかないのだけれど。
勿論、お茶会で会った攻略対象とラチア様達には招待状をもう送ってあるのであとは参加者次第だ。
基本的には私というよりはお父様やお母様に本来の目的を持つ人の方が多い事だろう。
私の友人の少なさはとんでもない為両親づてで知らない令嬢たちにも会うことになる。
話を合わせるのに苦労しそうだと今から不安なのである。
「ええ、もちろん。ご招待頂いたので参加させて頂きます、お望みとあらばダンスのお相手なども致しますよ?ラブラ様」
「それは良いですね、僕ともぜひお願いしますラブラ様」
「は、はあ……私などでよろしければ…」
張り合うかのように終始笑顔の二人なのだが、何故だか良い雰囲気とは言えない気がする……
何としてでもこの状況は打破しておきたいが二対一では分が悪過ぎる。
断れもしないので生返事を返すとニコニコと笑う二人と目が合う。
「……あ、あの!ラチア様、魔法学院では学院祭の様なものはございますの?」
妙な雰囲気に耐えきれず、学校の醍醐味と言ってもいい行事について話をそらす。
『MAGIC☆LOVER』の作中にも描写があったので恐らくはあるのだろうけれど魔法の存在する学校ではどんな風に学院祭をやるのだろうと、純粋な興味もあった。
「………。」
「はい、学院祭があります。よくご存知でしたね?もうすぐ丁度学院祭の時期になりますよ」
「ええ、お兄様から少し聞いておりましたの。それは楽しそうですわ…!」
いいえ、全くもってペクト兄様には聞いていません、招待状すら貰いませんでしたし行ってもいませんよ。
とんでもない嘘をさらりと嘯く。
こんなことを言うのはおかしいが今日の私は中々頭が回っている。
恐らくは貴族ばかりの国立校なので招待状無しには行けないのだろう。
一般公開なんてしている様子はない、というか聞いたことがない。
「なら…来てみますか?学院内も見学出来ますし。招待状なら僕が送りますよ」
「本当ですか!楽しみにしていますわ!」
「…それならラチア様の応援がてら僕も行ってもいいですか?」
すっかりまたヘリオを置いてけぼりにして話し始める私達に痺れを切らした彼は笑顔でさり気なく自分も行く主張をする。
まあそうだよね、ヘリオも見てみたいよね学院祭。
「ええ、勿論。招待状をお送りしますよ」
そんな彼にもラチア様はきちんと招待状を送ってくれるらしい。
日時は私の誕生日から一ヶ月半くらい後で学院祭は三日間に渡って行われるらしい。
学院生のみで行うのは一日目と最終日の夕方、所謂前世の文化祭に例えれば後夜祭に分類されるものらしい。
なので招待状で招かれる招待客や来賓、卒業生の多くは一番盛り上がる二日目に多く招かれるのだとか。
「二日目の学院祭ではきっと僕も手一杯でしょうから…そうですね、三日目なんていかがですか?三日目ならきっと学院内も案内出来ますし」
「案内までしていただけるのですか…?日時はいつでも構いませんわ」
「まあ…ああも広いと部外者の私達では迷ってしまいますしね…」
ヘリオも案内に関しては異論がないようだ。
しかし、盛り上がっている時に行きたかったのか、ヘリオの表情はこころなしか明るくは無かった。
文化祭のイメージが強い私は三日目でも十分に楽しめると思っているのだけれど、そんなに差があるものなのだろうか。
「ステージで行うものが少し少ないので盛り上がりには若干欠けますが、案内しながらオススメの出し物にお連れしますよ」
「なっ……!?」
その表情を見てなのかクスリとラチア様は笑うとヘリオの頭をポンポンと撫でた。
その行動にヘリオは驚きと恐らく羞恥のあまり瞠目して頬を染めながら固まっている。
私も少し驚いたが流石は前世の私、イケメン達の戯れには耐性があるようだ。
「…ふふ、すみません…つい、弟達と被ってしまって」
「そ、そんなに似てないですよ彼らと私では…っ」
すみませんと謝りながら尚も頭を撫で回すラチア様に困惑したままヘリオは言い返していた。
なんだこの子お兄ちゃんキャラには弱いのか可愛いなちくしょう。
末っ子で甘やかされていてあざとくなったのではなかったのかヘリオさんよ。
ニヤニヤと撫でくりまわされるヘリオを見ているとその視線に気付いた彼がキッと恨めしそうに睨んでいるが、迫力が全くもってない。
▷▷
しばらくは他愛もない話をヘリオやラチア様と交わしていたのだが、ラチア様の従者が彼に耳打ちをすると困ったように笑う。
「すみません…お二人共。城から呼び戻しがかかっていて申し訳ないのですが僕はここでお暇させていただきます」
「ああ、なら私もそろそろお暇しますよ。」
そう言って立ち上がる二人に少しの名残惜しさはあるものの二人にも事情があるのだろうから私も見送るべく立ち上がった。
「今日は本当に楽しかったですわ。ラチア様、ヘリオ様」
「こちらこそ、素敵なお時間をありがとうございます」
「ではラブラ様、舞踏会で会いましょう。私と是非踊ってくださいね?」
柔和な笑顔を浮かべながら軽く会釈するラチア様と私の手を取りクスリとあざとい笑顔を見せるヘリオを見送りお茶会は無事に終わりを告げたのであった。
始まる前はあんなにキリキリと痛んでいた胃の痛みはもうすっかり治っている。
案外、私という人間は図太い精神を持ち合わせているのかもしれない。
部屋に戻り、ベッドへ倒れ込むと途端にほっとした気分に満たされる。
ヘリオとは学院に入る前から良好な関係を築けそうだし、ラチア様に関わりがある以上はそのうちに双子王子とも会うことになるだろう。
事は割と順調なのではないだろうか!
ここまで実際に会ってみて設定と少し相違のある点をまとめて比較してみたい。
何か手頃な手帳などがあればそこにこちらの言語ではない前世の日本語を思い出しながら書いてみようと思い立つ。
「ねえ、ハウ。何か使ってない手帳ってないかしら?」
「手帳、ですか…はい、こちらに御座いますが突然どうしたのですか?」
「あー、ええと…日記をそろそろ付けようかなぁ…なんて……」
あはは……と誤魔化したつもりだが、ハウにはなにか疑問を生んだらしい。
あれ?私、日記とか三日坊主タイプだったかな。
「そんなにおかしな事言ったかな……」
「あ…いえ、日記もぱったり付けなくなっていらっしゃったので少し驚いただけです。」
どうぞ、と手渡された手帳は鍵がかけられるタイプのもので、小さな合鍵も一緒についていた。
これは情報漏洩も防げて可愛いデザインで一石二鳥だ、たとえ見られたところでこの世界には存在しない言語なのだから心配いらないだろうけれど。
「ありがとう、ハウ。しばらく休むから夕食の時間になったら呼びに来てくれる?」
「かしこまりました。ごゆっくりお休みください」
手帳を笑顔で受け取り、休むことを口実に一人にしてもらうことにした。
いくらハウでも読めない言語を書きなぐる姿は見せられないし下手をすれば医者を呼ばれかねない気もするので退場願うのが一番だろう。
ハウはドアの前で一礼するとそのまま部屋から出てくれた。
ひとまずは情報まとめを始めるとしよう。
これがもう見計らっていたかのように予定時間ピッタリに。
「今回もお招きいただきありがとうございますラブラ様。……お待たせさせてしまいましたね、すみません」
「いいえ。時間ぴったりですわ、ラチア様」
「ああ、私が少しラブラ様に少しお話しする事があって予定より早く押し掛けてしまっただけですので…お気になさらないで下さい」
さっきのあどけなさの残る口調とは打って変わって気品のある雰囲気を纏ったヘリオにここまで変わるものなのかと感心する。
というか素の一人称がボクなのが私としてはギャップを感じるところなのだろう。
「そろったところですしお茶にいたしましょう?」
私がそう言うと使用人達は椅子を引き、二人に椅子を勧める。
勧められるままに二人は座ると彼らと私の前にお菓子と共に紅茶が準備される。
今日も今日とてハウと料理長によって厳選されたお茶菓子と茶葉が使用されている事だろう。
「わぁ…これはいい茶葉ですね、うちの紅茶には無い香りがします」
口をつける前に紅茶の香りを楽しんでいたヘリオがふわりと微笑んだ。
すると側で控えていたハウが嬉しそうに口を開く。
「お褒めいただき大変光栄にございます、ヘリオ様。こちらの紅茶の茶葉は紅茶専門の商会から取り寄せておりまして滅多に手に入らない茶葉なんだそうです」
紅茶にはどの使用人達もハウの右に出る者はいないだけあって流石過ぎる熱意だ。
そんな彼女の紅茶をいつも飲んでいる所為なのか私も最近、香りで茶葉の違いが分かるようになってきていた。
確かにこれは今までの中で一番美味しい気がしている。
「紅茶専門の商会なんてあるのですね…奥が深い。」
ふむ…とヘリオはハウと紅茶談義に入り始めてしまってお茶会開始早々、置いてけぼりを食らったラチア様と私はクスリと笑い合う。
なんだか初めてのメンバーにしては妙に馴染んで少し楽しいと思える。
あんなに緊張していたのに不思議なものだ。
「ラチア様は今年、魔法学院を卒業なされるのですわよね…魔法学院とはどのような感じなのですか?」
私の中の魔法学院はゲームでの印象しか残っておらず、詳しい事まではよく分からないのだが現代の学校に近い感覚なのだろうか。
そう思った私はまだ歳的に現役のラチア様が質問するには最適だと軽率にも考えついた。
ラチア様の事だし……生徒会長とかやってそうよね。
「そうですね…生徒会の仕事に追われていた思い出が強くて大したことは言えませんが……楽しくもあり、ある意味危険な場所でもありました」
あとはとにかく広くて必ず一度は授業に遅刻しかけます…と苦笑しながらラチア様は語る。
やっぱりラチア様でさえ道に迷う程なのか…魔法学院よ……。
城に住むラチア様でさえ迷うのなら方向音痴の予兆が見られる私は必ず一回は遅刻確定だろうな。
そして生徒会と聞いてこれは予想通りベタではあるが生徒会長だったのではないだろうか。
「生徒会……という事はもしかしてラチア様は生徒会長だったりするのですか?」
ラチア様の口振りから生徒会の仕事は大変そうだという事だけは窺い知れるが流石は第一王子、問題なくこなせているのだろう。
器量も良しと来たらもう弱点なんて彼には見当たりやしない。
「はい…恐れながら」
「あら…?そう言えば魔法学院は全寮制だった筈ですが…まだ寮生活なのではありませんの?」
ここ最近ホイホイと私の屋敷に赴いていたり、城でのお茶会にもいたような気がしていたような……。
何らかの長期休暇なのだろうか。
「弟達の誕生日と公務もあって特別に少し城に戻らさせていただいてるんです」
なんでもあのお茶会とラチア様を含めた公務の為に城に一時的に戻っていて、学院には城から通っているのだとか。
なんというか忙しい身なのに私の屋敷でお茶会なんてしていていいのだろうか……。
「…お忙しいのにわざわざお越し頂いてありがとうございますわ…ラチア様」
「ああ…!全然気にしないでください!…僕がラブラ様にお会いしたくてお邪魔しているので」
「あ、ありがとう…ございます…」
サラッと笑顔で言い切るラチア様は王子スマイルの無駄遣いである。…というか心臓に悪い。
こんな美形なのに攻略対象ではないのだから不思議だ。
「楽しそうなお話ですね、私も混ぜてくださいよラチア様?」
ハウと話し込んでいた様子だったヘリオがどことなく刺々しい雰囲気を纏いながら微笑む。
そんな彼の雰囲気をものともせず、と言うよりは気づいていないといった感じでラチア様も優しく笑い返す。
「そうですね…そう言えば、ヘリオ様は数日後のラブラ様の誕生日記念の舞踏会にいらっしゃるのですか?」
上手いこと話題を見つけたというようにラチア様はヘリオに私の社交界入りの舞踏会についての話題を振った。
私にとってはあまり話したくない内容でしかないのだけれど。
勿論、お茶会で会った攻略対象とラチア様達には招待状をもう送ってあるのであとは参加者次第だ。
基本的には私というよりはお父様やお母様に本来の目的を持つ人の方が多い事だろう。
私の友人の少なさはとんでもない為両親づてで知らない令嬢たちにも会うことになる。
話を合わせるのに苦労しそうだと今から不安なのである。
「ええ、もちろん。ご招待頂いたので参加させて頂きます、お望みとあらばダンスのお相手なども致しますよ?ラブラ様」
「それは良いですね、僕ともぜひお願いしますラブラ様」
「は、はあ……私などでよろしければ…」
張り合うかのように終始笑顔の二人なのだが、何故だか良い雰囲気とは言えない気がする……
何としてでもこの状況は打破しておきたいが二対一では分が悪過ぎる。
断れもしないので生返事を返すとニコニコと笑う二人と目が合う。
「……あ、あの!ラチア様、魔法学院では学院祭の様なものはございますの?」
妙な雰囲気に耐えきれず、学校の醍醐味と言ってもいい行事について話をそらす。
『MAGIC☆LOVER』の作中にも描写があったので恐らくはあるのだろうけれど魔法の存在する学校ではどんな風に学院祭をやるのだろうと、純粋な興味もあった。
「………。」
「はい、学院祭があります。よくご存知でしたね?もうすぐ丁度学院祭の時期になりますよ」
「ええ、お兄様から少し聞いておりましたの。それは楽しそうですわ…!」
いいえ、全くもってペクト兄様には聞いていません、招待状すら貰いませんでしたし行ってもいませんよ。
とんでもない嘘をさらりと嘯く。
こんなことを言うのはおかしいが今日の私は中々頭が回っている。
恐らくは貴族ばかりの国立校なので招待状無しには行けないのだろう。
一般公開なんてしている様子はない、というか聞いたことがない。
「なら…来てみますか?学院内も見学出来ますし。招待状なら僕が送りますよ」
「本当ですか!楽しみにしていますわ!」
「…それならラチア様の応援がてら僕も行ってもいいですか?」
すっかりまたヘリオを置いてけぼりにして話し始める私達に痺れを切らした彼は笑顔でさり気なく自分も行く主張をする。
まあそうだよね、ヘリオも見てみたいよね学院祭。
「ええ、勿論。招待状をお送りしますよ」
そんな彼にもラチア様はきちんと招待状を送ってくれるらしい。
日時は私の誕生日から一ヶ月半くらい後で学院祭は三日間に渡って行われるらしい。
学院生のみで行うのは一日目と最終日の夕方、所謂前世の文化祭に例えれば後夜祭に分類されるものらしい。
なので招待状で招かれる招待客や来賓、卒業生の多くは一番盛り上がる二日目に多く招かれるのだとか。
「二日目の学院祭ではきっと僕も手一杯でしょうから…そうですね、三日目なんていかがですか?三日目ならきっと学院内も案内出来ますし」
「案内までしていただけるのですか…?日時はいつでも構いませんわ」
「まあ…ああも広いと部外者の私達では迷ってしまいますしね…」
ヘリオも案内に関しては異論がないようだ。
しかし、盛り上がっている時に行きたかったのか、ヘリオの表情はこころなしか明るくは無かった。
文化祭のイメージが強い私は三日目でも十分に楽しめると思っているのだけれど、そんなに差があるものなのだろうか。
「ステージで行うものが少し少ないので盛り上がりには若干欠けますが、案内しながらオススメの出し物にお連れしますよ」
「なっ……!?」
その表情を見てなのかクスリとラチア様は笑うとヘリオの頭をポンポンと撫でた。
その行動にヘリオは驚きと恐らく羞恥のあまり瞠目して頬を染めながら固まっている。
私も少し驚いたが流石は前世の私、イケメン達の戯れには耐性があるようだ。
「…ふふ、すみません…つい、弟達と被ってしまって」
「そ、そんなに似てないですよ彼らと私では…っ」
すみませんと謝りながら尚も頭を撫で回すラチア様に困惑したままヘリオは言い返していた。
なんだこの子お兄ちゃんキャラには弱いのか可愛いなちくしょう。
末っ子で甘やかされていてあざとくなったのではなかったのかヘリオさんよ。
ニヤニヤと撫でくりまわされるヘリオを見ているとその視線に気付いた彼がキッと恨めしそうに睨んでいるが、迫力が全くもってない。
▷▷
しばらくは他愛もない話をヘリオやラチア様と交わしていたのだが、ラチア様の従者が彼に耳打ちをすると困ったように笑う。
「すみません…お二人共。城から呼び戻しがかかっていて申し訳ないのですが僕はここでお暇させていただきます」
「ああ、なら私もそろそろお暇しますよ。」
そう言って立ち上がる二人に少しの名残惜しさはあるものの二人にも事情があるのだろうから私も見送るべく立ち上がった。
「今日は本当に楽しかったですわ。ラチア様、ヘリオ様」
「こちらこそ、素敵なお時間をありがとうございます」
「ではラブラ様、舞踏会で会いましょう。私と是非踊ってくださいね?」
柔和な笑顔を浮かべながら軽く会釈するラチア様と私の手を取りクスリとあざとい笑顔を見せるヘリオを見送りお茶会は無事に終わりを告げたのであった。
始まる前はあんなにキリキリと痛んでいた胃の痛みはもうすっかり治っている。
案外、私という人間は図太い精神を持ち合わせているのかもしれない。
部屋に戻り、ベッドへ倒れ込むと途端にほっとした気分に満たされる。
ヘリオとは学院に入る前から良好な関係を築けそうだし、ラチア様に関わりがある以上はそのうちに双子王子とも会うことになるだろう。
事は割と順調なのではないだろうか!
ここまで実際に会ってみて設定と少し相違のある点をまとめて比較してみたい。
何か手頃な手帳などがあればそこにこちらの言語ではない前世の日本語を思い出しながら書いてみようと思い立つ。
「ねえ、ハウ。何か使ってない手帳ってないかしら?」
「手帳、ですか…はい、こちらに御座いますが突然どうしたのですか?」
「あー、ええと…日記をそろそろ付けようかなぁ…なんて……」
あはは……と誤魔化したつもりだが、ハウにはなにか疑問を生んだらしい。
あれ?私、日記とか三日坊主タイプだったかな。
「そんなにおかしな事言ったかな……」
「あ…いえ、日記もぱったり付けなくなっていらっしゃったので少し驚いただけです。」
どうぞ、と手渡された手帳は鍵がかけられるタイプのもので、小さな合鍵も一緒についていた。
これは情報漏洩も防げて可愛いデザインで一石二鳥だ、たとえ見られたところでこの世界には存在しない言語なのだから心配いらないだろうけれど。
「ありがとう、ハウ。しばらく休むから夕食の時間になったら呼びに来てくれる?」
「かしこまりました。ごゆっくりお休みください」
手帳を笑顔で受け取り、休むことを口実に一人にしてもらうことにした。
いくらハウでも読めない言語を書きなぐる姿は見せられないし下手をすれば医者を呼ばれかねない気もするので退場願うのが一番だろう。
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