アンデッドハザード

内海 裕心

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2.戦い

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朝起きると、私はまだ自分が生きていることがわかった。
昨日彼女に、無理やり連れてこられた家。彼女の家だろうか。そのリビングの地べたで壁にも垂れながら寝ていた。床が冷たく下半身が冷えていた。

家の外からなにやら銃声のような音が聞こえる。

彼女は、、、いないな。

あの人は、命の恩人だ。普通なら感謝してもしきれない。一生恩を返していくべき人だろう。でも、私は普通じゃない。むしろ死にたかった。だから私は彼女を一生恨んでやるとさえ思っていた。

死ねたら楽になれたのにと。

自ら死のうとする勇気も行動力も無いやつが助けられておきながら、なおも助けた恩人に恨み文句を言う私を神はどういった残虐非礼な裁きを下すだろう。

その時はその時だ。今は考える必要も無い。考えたくもなかった。

私は、彼女が居ないことをいいことに、匿ってくれた家から抜け出した。

死に場所を見つけるために。

外は、奴らと拳銃で戦う一般市民と奴らで溢れかえっていた。

それを私は突っ立って諦観する。

市民の拳銃の弾は奴らの胸や頭にぶち込まれていったのが見えた。
頭や胸の辺りが吹き飛び、血飛沫などが飛散していく。

奴らはそれで1度は倒れた。
頭や胸の当たりは弾け、完全に機能停止していた。
しかし数分後か、立ち上がり、動き出した。しかも、無くなっていた頭や胸は、再生していた。

奴らは、、不死身なのか?

もういい、気持ち悪い。どこでもいい。高いところから落ちたら一瞬だろうか。早く死にたい。あれを見たらあんな不死身の化け物にはなりたくないと思った。私は橋へと向かうことにした。

もう一度、来た道を戻れば大きな橋がある。そこで、飛び降りよう。そこを最期の場所にしよう。

生き地獄なら、自殺して地獄に行っても変わらないだろう。神は許さないだろうが。

私は自暴自棄になっていた。

森の中へ入り、また走る。死ねるなら早く死ねた方がいい。

無我夢中で森の中を駆け抜ける。木の枝や草などにぶつかりながら。
体全身傷だらけになったが、気にしなかった。

森の中をぬけ、あの、カフェの店まで私は戻ってきていた。

橋まではもうすぐだった。ようやくこの世界から解放されると思った。
その時、私の肩が後ろから誰かに掴まれる。

嫌な予感が、私の脳内を瞬間的に駆け巡った。

奴らだ。

私は驚きすぎて、声をあげることも出来なかった。ぎゅっと目を瞑ることしか。

喰われると思った。

「メアリー」

しかし、響いたのは、聞き馴染みのある声だった。

「エミリー、、?」

目を開けると、そこには親友が立っていた。夢かと思った。
震える声で私は彼女の名を呼ぶ。そうすると彼女ははっきりと私の呼び掛けに答えた。その瞬間私は彼女にハグをしていた。

「良かった、、良かった。死んでしまったのかと思った。」

「メアリーも、良かった。生きてて」

私たちは少しの時間抱き合っていた。

「エミリー、噛まれてないよね」

「うん。噛まれてないよ。私さ、あの時トイレにずっと籠ってて店内が騒がしくなってて怖くなって窓から逃げたんだよトイレの。そこからずっとあそこの小屋の中で息を潜めてた」

エミリーは無事だった。しかも目立った外傷なく。私は彼女が生きていたことも嬉しかったし、何よりも私が彼女を見捨て、それによって彼女が死んでしまったという過去への後悔が彼女が生きていることによって少し晴れたことに心の底から安堵した。

「そうなんだ、、、」

「むしろメアリーは大丈夫なの?あの時店内に居たよね?」

「私は、、あの時気分転換で1回外に出たの、、それで」

私はあの時のことを話した。異変に気づいたこと、あの時の状況、そして、エミリーを見捨てて逃げたこと。

「そんな、誰でもそんな状況になったらそうなっちゃうわよ」
エミリーは優しく笑ってそう言う。その笑顔に救われた。

「エミリー、、ありがとう」

「状況は分かったわ。でも、どうしてまた戻ってきたの?」

「それは、、」
私はそのエミリーの当然の問いに答えられなかった。死ぬためにここに来たなんて、生きる希望に溢れている人の前で言えるわけが無い。

「まぁいいわ。私は、小屋の辺りにも奴らが多くなってきたから、森に隠れることにしたの」

「そうだったの、、」

「もう一度、助けて貰った人の所へ戻った方がいいかもね」

もう選択肢はそれしか残されていないようだった。

「分かった。戻りましょう」

私は戻りずらかった。命の恩人である彼女と顔を合わせたくなかった。逃げてしまいたかった。でも、今はひとりじゃない。エミリーがいる。だからどうだというのか。私は助けられたのにも関わらず、死ぬために勝手に抜け出して、そしてまた助けてくださいしかも親友も助けてなんて、どの面下げて頼めばいいんだろう。

「どうしたの?メアリー」

エミリーが、俯きながら考える私を見て、心配そうに私の顔を覗き込んでそう聞いた。

私はこの辛い悩みから解放されたくて、もう、全てを話すしか無かった。

「私、実は、、自殺しようとしていたの」

「え、、、?そんな、、、」

エミリーは、驚きを隠せず、手で口を押えていた。

「分かってる。神に背く行為で、最低で、あんな事をしたにも関わらず、自ら死のうとするなんて、、エミリーにはこのことを隠そうと思ってた。必死に前を向いて生きようとするエミリーの水を差したくなかったから。でも黙ってるのがどうしても辛くて、、、ごめん」

「メアリー、、、!」

私は涙を流しながらエミリーに許しを乞うように話していた。エミリーはそんな私の肩を抱いて心配してくれていた。

「メアリーは悪くない。悪いのはこの世界よ。それに、貴方がそんな人じゃないってことは私は知ってる。私は見てきたから、普段あなたがどれだけ優しくていい人間かってことを。だから安心して。メアリーは最低最悪なんかじゃない。とてもいい人よ。それに、そうやって悩んでるってことがその照明じゃない?最悪な人間なら悩まずにそういうことをするわよ。だから、メアリー、あなたは大丈夫だよ。親友の私が保証する。」

エミリーの言葉一つ一つが、とても優しくて私の心に響いていった。心の棘が全て無くなり、何かに包み込まれるような感覚だった。

「エミリー、本当にありがとう。私、あなたが親友でほんとに良かった」

「気にしないで。困った時はお互い様だよ」

「じゃあ、行こうか、命の恩人さんのところに」

「ちょっと待って、エミリー」

先へ進もうとするエミリーを呼び止めながら私は覚束無い足取りで前に進もうとする

「ごめんごめんゆっくり行こっか」
とエミリーは私に振り向く。

「ごめん、ありがと」
とお礼を言ったその時だった。

「メアリー後ろ!」

「え?」

「危ない!!!!!」

「エミリー!」

咄嗟の事で、何が起こったかまるで分からなかった。
私は、エミリーに突然覆いかぶさられ、地面へと倒れ込んだ。
頭を打ち、意識が薄れていく。
閉じゆく瞼、その間に薄らと何者かと掴み合うエミリーの姿が見えた。


「メアリー!メアリー!」

エミリーの声で、私は目覚めた。

「大丈夫?メアリー、ケガない?」
エミリーが、心配そうな顔で私に聞いてくる。
そのエミリーの左脇腹が少し赤く染ってきた。

「そんな、エミリーが、、」

「ん?ああこれか」

「傷、見せて」

「大したことないよ」

「いいから」

「止血しないと」

「それほどでもないよ。大丈夫」

私は、辺りを見ると私の寝ていた右隣にゾンビが倒れていた。

「さっき何が起こったかよく分からなかったけど、私をやつから庇ってくれたの?」

「うんそうだよ。真後ろに立たれてたから危なかった。もう少しでメアリーが死んじゃうところだった」

「エミリー、、」

エミリーは自分が噛まれたのにも関わらず、そして私を助けたせいにも関わらず、私を責めなかった。

「肩貸して、あの人の所へ連れてってあげるから」

「大丈夫1人で歩けるよ」

「いいから」
今度は私が譲らなかった。

私たちは再び歩き出す。私はエミリーの右肩を担ぎながら、エミリーは左脇腹押さえながら。

こんなに遠かっただろうか。

あの時は一瞬に感じた林道が延々と続いているように感じた。

とても辛そうだった。
あそこまでじゃなくていい。せめて、どこかの家までは侵入出来れば、安心して休めるだろう。
エミリーが急に足を止めた。

「私をもう置いていって」

「そんなこと出来ない」

「いいから!!!」

「嫌だ! エミリーを1人置いていくなんて、そんなこと出来ない」

「私は、大丈夫だし、私のせいでエミリーはこうなっちゃったんだから」

「メアリー、、」

エミリーは納得したのか、再び歩き始めた。

ゆっくり歩き続けて、よろよろになりながら、ようやく私たちは、彼女のいる街までやってきた。

「はぁ、はぁ、、着いた。」

街につけばすぐに彼女の家がある。鍵は、かかっていなかった。

「居ないみたいね、、彼女。」

「もしかしたらもうどこかへ移動したのかも、、、」

「エミリーはそこに座ってて、包帯とか色々持ってくる」
私は、エミリーを左手前の部屋のベットに座らせて、救急セットを探すことにした。
しかし、エミリーに手を掴まれる。

「いい。私はもう、助からないから」

「そんな、そんな事言わないでよ」

「事実よ、身体はだるいしもう、無理なの。だから、

「私が変わる前に」

私を見つめる彼女の瞳は、森で再開した時と打って変わって、光を失っていた。
しかし語気は強く、私に有無を言わさぬというような感じで、未だに掴んでいる彼女の手が私の腕をより一層強く掴んだ。

「死にたい私が死んで、エミリーが生きればよかったのに、、、」

「.....」

少しの間、私たちは黙りあっていた。

「メアリー、お願いね」
私は、彼女の最後の願いを聞き入れるしか無かった。

家のありとあらゆるところを探した。そして、見つけた。

「エミリー、見つけたよ」

「そっか、あってよかった、ありがとう」

私の右手には、拳銃が握られていた。
きっと、彼女のものだろう。

「エミリー、愛してる。大好き。これまでもこれからもずっと。そしてごめんなさい私のせいで」

「メアリー私も愛してる。メアリーのせいじゃないから自分を責めないで、そして強く生きて。私の分まで、、」

喋るのも辛そうな彼女を見て、私は涙をこらえきれなかった。震える手で拳銃を構えようとする。

「エミリー、、うっ、うう...」

この世界になってから、生きれば生き続けるほど、憂き目を見るということが分かった。
どんなに希望が訪れようともそれは、一時のもので、長くは続かない。
未来永劫、幸せなんて訪れないのだろうということを悟った。

私は彼女の額に向けて、拳銃を突きつける。

目をぎゅっととじて、深呼吸して、引き金を引いた。大きな衝撃とともに火薬の匂いがした。私の目からより一層の涙が溢れ出てきた。


「なんの音?銃声!?」

奥の方から声が上がった。私の命の恩人である、彼女の声だった。

「おい、何してる!!」

「アンタか、、、」

「勝手なことばかりしやがって、本来なら何発も殴ってやりたいが、ここは一旦我慢しといてやる」

彼女はそう言って、力なく握られていた拳銃を奪い取り、私の体を両手で掴んで引っ張りこんだ。


「な、何するの、、!」


「何って逃げるんだよ!来い!」


「えっ、、」

「いいから、はやくこい!!奴らが来るぞ!!!」
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