日本列島各地の旨いもの巡りの旅

黒蓬

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第9話 茨城の海と大地の恵み

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新潟で美味しいお米と新鮮な魚介を満喫した早瀬真希は、次の目的地である茨城県に向かう車中で期待に胸を膨らませていた。関東地方に位置しながらも、茨城は広大な自然と豊かな食文化を誇る地だ。

「茨城といえば、やっぱり納豆と海鮮。それに、大洗の海も有名だよね。」

そんなことを考えながら、新幹線から在来線に乗り換え、真希は水戸駅に降り立った。駅前に漂う静かな空気が、これから始まる茨城の旅への期待感をさらに高めてくれる。

真希が最初に訪れたのは、水戸市内にある老舗の納豆店「水戸屋本店」だった。店内に入ると、大豆の香ばしい香りが広がり、所狭しと並ぶ納豆の商品が目を引いた。

「いらっしゃいませ。試食もできますので、ぜひ味わってみてください。」

店員に勧められるまま、真希は藁に包まれた昔ながらの納豆を一口いただいた。粘りのある食感と濃厚な風味が口の中に広がる。

「これは…全然クセがなくて美味しい!藁の香りがほのかに移っているのもいいですね。」

店主がにこやかに頷く。

「ありがとうございます。納豆はシンプルな料理ですが、大豆の質と発酵の技術が命なんです。この藁納豆は手間がかかりますが、それだけの価値があると思っています。」

真希はその深い味わいに感動し、いくつかの商品を購入した。

次に向かったのは、大洗町の漁港だった。海風が心地よく吹き抜ける中、真希は漁港に隣接する市場「大洗海鮮市場」を訪れた。

市場では、新鮮な魚介類がずらりと並び、活気ある声が飛び交っていた。その中でひときわ目を引いたのは、巨大なあんこうの吊るし切りの実演だった。

「茨城の冬といえば、やっぱりあんこう鍋です。」

実演を見学した後、真希は市場内の食堂で「あんこう鍋」を注文した。鍋が運ばれてくると、味噌の香りが漂い、食欲をそそる。真希はまずスープを一口飲んだ。

「濃厚だけど、全然くどくない。この味噌の風味とあんこうの旨味が絶妙にマッチしてますね。」

ぷるぷるとしたあん肝や、柔らかく煮込まれた野菜も絶品だった。店のスタッフが笑顔で説明してくれた。

「茨城のあんこうは脂が乗っていて、冬に最適なんです。この味噌仕立ては特に人気がありますよ。」

真希はその温かさに心も体も癒された。

午後、真希は筑波山へ足を運んだ。標高877メートルのこの山は、茨城の象徴ともいえる存在だ。ケーブルカーで山頂近くまで登り、そこからさらに徒歩で山頂を目指す。

「わあ、絶景…!」

山頂からは関東平野が一望でき、遠くには東京の高層ビル群や富士山も見えた。冬の澄んだ空気が景色をより美しく見せている。

下山後には、名物の「筑波山名物がままんじゅう」を味わった。皮はもちもち、中には甘さ控えめのこしあんがたっぷり詰まっている。

「素朴だけど、優しい味。登山の後にはぴったりですね。」

店員が微笑みながら答えた。

「ありがとうございます。がままんじゅうは筑波山のシンボルであるカエルにちなんで作られたんですよ。」

真希はそのユニークな歴史にも感心した。

宿泊先の旅館に戻った真希は、その日の出来事をノートに書き記した。藁納豆の奥深い味、あんこう鍋の濃厚な旨味、筑波山の絶景と素朴ながままんじゅう。それぞれが茨城の個性を表していた。

「茨城は、海も山も、そして人も温かい場所ね。」

次の目的地である栃木への期待を胸に、真希は深い眠りについた。
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