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第四話
とうとうその日がきた。三家が集められ、会議が行われる。といっても、ほぼ事後報告だ。すでにお父様たちの間では話がまとまっている。私とダヴィデ様、お姉様とエミリオ様の組み合わせで縁談をまとめると。
「お姉様。こんな結果になってしまって……本当にごめんなさい」
お姉様の表情は無。けれど、なにか言いたそうに私と私を抱きかかえるダヴィデ様を見ている。
――ふふ。さあ、お姉様はどんな言葉をくれるのかしら。
「ダヴィデ様、ミルカをどうぞよろしくお願いいたします」
お姉様は私を無視してダヴィデ様に言った。ムカつく。でも、ダヴィデ様が「もちろん」だとはっきり返してくれたから良しとしよう。
――ダヴィデ様、最高! 強がっているお姉様に対して、その返答はパーフェクトよ。さすが私のダヴィデ様だわ。
けれど、お姉様の強がりは筋金入りらしい。
「まあ、心強い。これからはミルカの側にはダヴィデ様がいてくださるのだから、私がいなくても大丈夫ですわね」
「ああ。ミルカのことは私に任せてほしい。私の生涯をかけてミルカを大切にすると誓うよ」
残念ながら思い描いていたような反応は返ってこなかった。けど、もういい。だって、ダヴィデ様が誓ってくれたから。ずっと私を大切にしてくれるって。まるで、王子様がお姫様にプロポーズをした時のように。
――うれしい。うれしい。うれしい。
皆に祝福されている。あの本のように。やっぱり、私は特別な……
「あ、あの質問をいいですか?」
感動している中、耳障りな声が聞こえた。手を挙げたのはエミリオ様。
なにこいつ。空気読めないの?
「なにかね?」
ダヴィデ様のお父様が口を開く。
「婚約相手が当初と替わるとなると、困ることがあるのでは? その、たとえば私の婿入りの話だとか」
「エミリオ!」
エミリオ様のお父様が怒ったような声を上げたけど、それも当然だと思うわ。なに、今の自己中心的な質問は。そんなこと気にするなんてみみっちい男ね。
けれど、さすがダヴィデ様のお父様。寛容に彼の言葉を許したわ。
「エミリオ君が不安になるのも当然のことだろう。謝罪の意味をこめて、君には公爵家が抱えている領地と爵位の一つを譲ることとした。爵位は男爵とはなってしまうが……すまないね」
「いや、それについてはかまいませんが……」
かまわないと言いながら、納得していない反応。
眉根を寄せる。
――なんて、ずうずうしい人かしら。この人を選ばなくて正解だったわ。お姉様にぴったり。
しかも、エミリオ様が授かるのは男爵位。つまり、お姉様は男爵夫人になるのだ。一方、私たちは伯爵。
――理想的な展開だわ!
神様は見ていてくれたのかしら。それとも、もともとこうなる運命だった? 満足いく結果に興奮していると熱が上がってきた。
「あの、お話の途中で、申し訳ないのですが」
「ああ。そろそろ限界だろうね。後は私たちだけで話をまとめるから、君たちはもう行っていいよ」
ダヴィデ様のお父様にそう言われ、私とダヴィデ様、お姉様とエミリオ様も部屋から出た。部屋の前でお姉様たちとは別れ、私はダヴィデ様に抱えられたまま、自室へと向かう。ちらっと見たお姉様とエミリオ様の間には距離感があるように思えた。
――あの二人は今からどんな話をするのかしら? ケンカ? そうだったら面白いけど……。
私はダヴィデ様の胸に甘えるように頭を寄せる。
「ダヴィデ様」
「ミルカ」
「やっとですね」
「ああ。これからは君が私の婚約者だ」
「ええ」
「幸せにするよ」
「はい」
部屋に着くと、ベッドの上に降ろされ、そっとダヴィデ様の唇を重ねられた。私も応えるように目を閉じる。ああ、幸せだわ。
「お姉様。こんな結果になってしまって……本当にごめんなさい」
お姉様の表情は無。けれど、なにか言いたそうに私と私を抱きかかえるダヴィデ様を見ている。
――ふふ。さあ、お姉様はどんな言葉をくれるのかしら。
「ダヴィデ様、ミルカをどうぞよろしくお願いいたします」
お姉様は私を無視してダヴィデ様に言った。ムカつく。でも、ダヴィデ様が「もちろん」だとはっきり返してくれたから良しとしよう。
――ダヴィデ様、最高! 強がっているお姉様に対して、その返答はパーフェクトよ。さすが私のダヴィデ様だわ。
けれど、お姉様の強がりは筋金入りらしい。
「まあ、心強い。これからはミルカの側にはダヴィデ様がいてくださるのだから、私がいなくても大丈夫ですわね」
「ああ。ミルカのことは私に任せてほしい。私の生涯をかけてミルカを大切にすると誓うよ」
残念ながら思い描いていたような反応は返ってこなかった。けど、もういい。だって、ダヴィデ様が誓ってくれたから。ずっと私を大切にしてくれるって。まるで、王子様がお姫様にプロポーズをした時のように。
――うれしい。うれしい。うれしい。
皆に祝福されている。あの本のように。やっぱり、私は特別な……
「あ、あの質問をいいですか?」
感動している中、耳障りな声が聞こえた。手を挙げたのはエミリオ様。
なにこいつ。空気読めないの?
「なにかね?」
ダヴィデ様のお父様が口を開く。
「婚約相手が当初と替わるとなると、困ることがあるのでは? その、たとえば私の婿入りの話だとか」
「エミリオ!」
エミリオ様のお父様が怒ったような声を上げたけど、それも当然だと思うわ。なに、今の自己中心的な質問は。そんなこと気にするなんてみみっちい男ね。
けれど、さすがダヴィデ様のお父様。寛容に彼の言葉を許したわ。
「エミリオ君が不安になるのも当然のことだろう。謝罪の意味をこめて、君には公爵家が抱えている領地と爵位の一つを譲ることとした。爵位は男爵とはなってしまうが……すまないね」
「いや、それについてはかまいませんが……」
かまわないと言いながら、納得していない反応。
眉根を寄せる。
――なんて、ずうずうしい人かしら。この人を選ばなくて正解だったわ。お姉様にぴったり。
しかも、エミリオ様が授かるのは男爵位。つまり、お姉様は男爵夫人になるのだ。一方、私たちは伯爵。
――理想的な展開だわ!
神様は見ていてくれたのかしら。それとも、もともとこうなる運命だった? 満足いく結果に興奮していると熱が上がってきた。
「あの、お話の途中で、申し訳ないのですが」
「ああ。そろそろ限界だろうね。後は私たちだけで話をまとめるから、君たちはもう行っていいよ」
ダヴィデ様のお父様にそう言われ、私とダヴィデ様、お姉様とエミリオ様も部屋から出た。部屋の前でお姉様たちとは別れ、私はダヴィデ様に抱えられたまま、自室へと向かう。ちらっと見たお姉様とエミリオ様の間には距離感があるように思えた。
――あの二人は今からどんな話をするのかしら? ケンカ? そうだったら面白いけど……。
私はダヴィデ様の胸に甘えるように頭を寄せる。
「ダヴィデ様」
「ミルカ」
「やっとですね」
「ああ。これからは君が私の婚約者だ」
「ええ」
「幸せにするよ」
「はい」
部屋に着くと、ベッドの上に降ろされ、そっとダヴィデ様の唇を重ねられた。私も応えるように目を閉じる。ああ、幸せだわ。
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