戦士の帰郷

火吹き石

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8.初槍

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 タカネは下着をするすると解くと、後ろを向いて、手近な木に片手をつく。そしてもう一方の手を口元に運び、指に唾をたっぷりつけると、それを裾の下に潜り込ませる。尻の穴に押し当てると、もう慣れたもので、それほどの抵抗もなく飲み込む。

 タカネが自分自身を解している間、イワオはすぐ近くで、黙って立ったままだった。肩越しに振り返ると、タカネは言った。

「なあ、見てるだけじゃなくてさ、触ってくれよ。」

 イワオはおずおずと近づくと、タカネの肩を優しく抱いた。

 タカネは笑みを零した。触ってと言われて、本当に触るだけというのは、おかしなことに思えた。愛撫してくれてもいいというのに。初めてで、どう触ったらいいのかわからないのかもしれない。

 とはいえ、タカネも色事を覚えて日が浅かったから、初めてがどれだけ緊張するのか、忘れてはいなかった。初めては、ほんの一月ひとつきほど前だった。そしてそれ以来、十人隊の先輩たちから手荒な手ほどきを受けて、抱かれる快感をたっぷりと肉体に教え込まれたのだった。

 何度か指に唾をつけ足して、後ろを弄った後、タカネは最後に指を引き抜いた。固唾をのんで見守るイワオを見上げる。

「もう、大丈夫だと思う。入れてみて。」

 そう言って、裾を軽く持ち上げる。イワオは裾を掴むと、めくり上げ、尻の谷間に手を這わせる。

「本当に、入るのか?」

 イワオは心配そうに言った。無理もない。二人の間には大きな体格差があり、ほとんど子どもと大人ほども違っていた。

 だが、タカネはこれまで、大柄な戦士たちに何度も可愛がってもらっていた。自分がどれくらいなら受け入れられるか、少しは心得ていた。

「大丈夫。入れろって。お前の初槍をもらってやるから。」

 タカネはイワオの裾を後ろでに掴み、引き寄せた。

 イワオはタカネの尻に、自分の得物を押し当てた。タカネは足を広げて、やりやすいようにする。しばらく探るように触れていたが、やがて先端が穴にあてがわれた。熱くて大きな感触に、タカネの背がぞくぞくと震えた。

「入れるからな。」

 イワオが言った。

 ぐっと力が込められ、異物が穴に入り、肉の壁を掻き分けていく。タカネは両手を木につき、深く息をついた。余裕ぶってはいても、イワオのものは大きかった。裂けてしまうのではないか、体が壊れるのではないかと思われるほどだった。

「半分……くらい……。」

 イワオが言った。タカネを気遣うように、ゆっくりと腰を進めている。やがて根本まで入ると、動きを止め、タカネの体を抱き締めた。そうして、髪に鼻面を埋める。

 二人とも、息を乱していた。

 タカネはイワオの頭を、後ろ手に撫でた。

「動いていいぜ。ちょっとずつ、抜いてみな。」

 タカネが言うと、イワオはその通りにした。ゆっくりと腰を引いていく。太いものに内側を擦っていく感覚に、タカネは額を固い樹皮に押し付け、背を仰け反らせた。

「んっ……はっ……あっ……。」

 二人はともに喘ぎ声を上げた。

 やがて、ぬるっと性器が抜けてしまった。イワオはまたそれを穴にあてがい、入れる。ゆっくりと押し込み、それから引き抜く。繰り返し、繰り返し、タカネの体の中をえぐっていく。

 あまりにゆっくりとしているので、タカネは焦れてきていた。普段はもっと乱暴に扱われてきたから、イワオの動きは優しすぎた。

 タカネは肩越しに言った。

「もっと動けよ。初めてで大変なんだろうけど、激しくしてくれよ。」

「お前、そんなことすりゃ、怪我するぞ。」

 イワオは心配そうな声で言った。タカネは胸のうちで笑った。わざと挑発的な声で答える。

「心配するんじゃねえよ。お前なんかに怪我させられるわけないだろ。でっけえ赤ん坊は、臆病で仕方ねえな。」

 タカネが言うと、イワオは一瞬言葉を失ったように黙った後、小さく笑い声を上げた。

「お前、後悔すんなよ。」

 その苛立ったような声に、タカネはぞくぞくと興奮した。

 イワオは性器を半ば引き抜くと、一気に押し込んだ。

「んぐっ……!」

 太い得物に貫かれ、異物感と快感にタカネは喘いだ。

「タァ、本当に大丈夫なんだろうな。」

 イワオはまた心配そうな声で言った。

 タカネは苛立ちを覚えた。一体どれだけ心配したら気が済むのだろう。すでに体の中はじんじんと熱く、荒々しく掻き混ぜて欲しがっていた。

 振り向くと、語気荒く言った。

「心配するなって言ってるだろ。初めてのくせに、てめえなんかに心配されるいわれはねえよ。ちょっと見ないうちに、腰抜けになっちまったなあ、イワオよ。」

 そう挑発すると、イワオは緊張しながらも、にやっと笑ってみせた。

「分かった。タァ、てめえが泣いても止めねえからな。覚悟しとけよ。」

 イワオは脅かすような声で言うと、一息に腰を引き、一気に叩き付けた。まるで殴りつけるような力で、タカネを貫く。

「――ひっ……!」

 タカネは喘いだ。圧倒的な衝撃に、めまいがする。

 イワオは今度こそ、容赦なく腰を振りはじめた。大きな得物で穴をえぐり、貫いていく。二人の防具が触れ合う金属質の雑音、体を打ち付ける軽快な音、湿った音、タカネの喘ぎ声、そしてイワオの荒い息とが、暗い木立に響いた。

「――おっ、ぅぐっ、ごっ、ほっ、ふっ、んっ――!」

 タカネは木にしがみつくようにして立っていた。イワオが腰を振るたびに、押しつぶされるような衝撃が襲う。体格の違い、力の違いを、快感とともに体に叩き込まれているようだった。暴力的なまでの激しさで繰り返し突きまくられ、足ががくがくと震えた。

「すげえっ、すげえっ――ふぅっ、ふっ――タァっ、タァっ――!」

 イワオはといえば、片手でタカネの腰を掴み、片腕で胴を抱き、覆いかぶさるようにして腰を振っていた。初めてのこと、ただひたすら快感を求め、夢中になって貪るように腰を振る。タカネの汗でべとついた髪に口を埋め、それがたまらない匂いででもあるかのように、匂いを嗅いでいる。

 タカネには、もう先程までの余裕は、欠片も残っていなかった。これまで先輩の夜伽をし、とことん抱かれる快感を教え込まれた若い戦士は、性の喜びに弱かった。友人の逞しい腕に抱かれ、激しく突きまくられると、少しもものを思う暇もないほどに、乱れに乱れた。

 そして、イワオが相手というのも、いっそうタカネの心を昂ぶらせた。

 少年時代、イワオと取っ組み合い、遊び半分の喧嘩を何度も繰り返し、そのたびに組み伏せられ、力尽きるまで苛め回された。タカネを組み敷き、勝ち誇った笑みを浮かべるイワオを見上げた時の、悔しさと憧れの入り混じった激しい情動の記憶が、いまのこの情事と混ざり合い、気持ちを異様なまでに高揚させる。

 負ける、とタカネは思った。巨躯のイワオに抱かれ、巨根で貫かれ、荒々しく犯され、屈服させられてしまう。性交が勝負ではないことなどタカネは知っていたが、相手がイワオだと、そういう競争心が煽られた。

「うっ、おっ、おぉっ――!」

 そして敗北を意識した直後、タカネの頭の中が真っ白になった。体を衝撃が貫き、気がついた時には、射精をはじめていた。性器が脈打ち、精液が勢いよく吹き出ていく。イワオに突かれるたびに体が揺れ、汁はあたりに飛び散った。

 タカネが達したのを追いかけるように、イワオもまた果てた。タカネの体を壊れるほど強く抱き締め、荒々しく腰を打ち付ける。どくっ、どくっ、と幾度も脈打って精が注ぎ込まれ、それが掻き混ぜられ、穴から溢れ出てくる。

 やがてイワオは腰を動かすことを止めると、タカネを抱きかかえたまま、その場に腰を降ろした。そして髪に口を突っ込み、口づけするやら、鼻面で撫でるやら、匂いを嗅ぐやらした。まるで少年時代のイワオのようだった――遊び疲れると、イワオはよくこうしてタカネにじゃれついたものだった。やりすぎて泣いたタカネも、こうして抱かれると、泣き止むのだった。

 タカネはぼうっとしていた。射精の後の余韻と、敗北感と、どうしようもない愛おしさと懐かしさとが、胸の内で混ざり合っている。なにも言うことができず、開いた口からはただ弾んだ息だけが出入りしていた。

 ふいに、イワオがタカネの裾の下に手を潜り込ませた。そして柔らかくなった性器に触れると、頭上で小さく笑った。

「ケツでいったんだ。」

 イワオは満足気に言った。どろどろに汚れた竿を、ふにふにと撫で回す。すると、すぐにそれは固さを取り戻していった。

「気持ちよかったんだなあ、え? 初めてでいかせるとは、おれにもなかなか、才能があるのかもな。」

 イワオは自信満々に、からかうように言った。タカネは屈辱感を覚え、俯きながら毒づいた。

「うるせえ。」

「がきの頃みてえだなあ。まあ、前は腕でねじ伏せてたけど、いまはチンポでもねじ伏せれるんだな。」

 タカネはかっと腹が立って、肩越しに振り仰いだ。イワオの挑発的な笑みに視線がぶつかる。

 本当に、子どもの頃の取っ組み合いの時のようだった。イワオはもともとやんちゃで、粗暴で、自信に溢れた少年だった。タカネが村を離れてからはそれも鳴りを潜めていたのだろうが、いままたそれが現れはじめたのだろう。

 心底、腹が立った。

「もう、止めだ。」

 タカネはむすっとして言うと、イワオの腕を掴んで、引き剥がそうとした。しかし強い力で締めていて、びくともしない。それどころか、イワオはいっそう力を入れて、締め上げた。

「てめえ、放しやがれ。」

 タカネは憎々しげに言った。だがイワオはにやにやと笑っていた。少しずつ力を込めて、押しつぶしていく。防具は着たままだったが、板金の鎧ではなく、柔軟性のある胴着だったので、締め付けに対しては、それほどの防御力を発揮しなかった。

「この、くそったれ。」

 タカネはイワオの腕に、籠手をつけたままの指先を立てた。すると、イワオは素早くタカネの両手を取って、腕を胴と束ねて締め上げる。こうなると、タカネには腕が使えなかった。それも、タカネにとっては屈辱的なことに、イワオは片腕だけで締めていた。

「本当に、昔みたいだなあ。」

 イワオは愉快そうに言いながら、タカネの性器を片手でぞんざいに弄った。タカネはなにも答えなかった。イワオの腕から身を引き剥がそうと、全力で暴れているところだったからだ。

 すると、突然、イワオが腰を揺すった。まだ、イワオのものはタカネの奥深くを貫いていた。

 タカネの体が少し跳ね、快感に身を固くした。

「うっ……!」

「逃げんなよ。もっとやられたいだろ。昔みたいに、いっぱい遊んでやるからな。」

 タカネは肩越しに振り仰ぎ、吐き捨てるように言った。

「てめえなんか、おれがいなくて、ずっとうじうじしてたくせに。」

「おお、口答えするとはいい度胸だよな。泣いて謝るまでボコボコにしてやるよ――てめえのケツ穴をな。」

 言うなり、イワオは突き上げた。

 快感を覚えながらも、しかしタカネは歯を食いしばり、声を上げなかった。どれだけやられても、決して声を上げはしない。力で負けても、決して屈服はさせられまいと、タカネは気を引き締めた。
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