戦士の帰郷

火吹き石

文字の大きさ
7 / 9

7.口づけ

しおりを挟む
 夕食に食べた煮物の匂いがするな、とタカネは思った。野菜と豆の匂いがする。そしてほんの少し塩気を感じる。ひどく場違いで、なんだか滑稽な感想に思えた。

 イワオは貪るように口づけをした。タカネの唇を、何度も何度も喰むように味わう。

 身長に大きな差があるから、タカネは軽く背伸びをして、顔を上げていた。イワオのほうも、腰を屈めている。

 イワオは、長いこと口づけをしていた。タカネは苦しくなって、友人の肩を押した。イワオが口を離すと、二人の唇の間に唾液の糸が張り、千切れて散った。

 二人とも、はあはあと息を乱していた。イワオはタカネの顔を掴んだまま、じっと食い入るように覗き込んでいる。タカネは笑った。

「お前、がっつきすぎだ。」

「ごめん。」

 イワオは謝りながらも、我慢できぬ様子で再び顔を近づけた。タカネは口を薄っすら開けて、待った。

 再び唇が触れ合うと、イワオはまた貪った。ぺちゃ、ぺちゃ、と音が鳴り、二人の口の端から唾液が溢れる。

 タカネは相手の大きな胴に腕を回し、体を押し当てた。胴着に縫い付けた金属片が触れ合い、耳障りな音が鳴る。イワオもタカネの体に腕を回し、押しつぶさんばかりに抱き締める。苦しいほどの抱擁が、タカネには愛おしかった。

 やがて唇が離れると、空気を求めて喘ぐタカネを、イワオは強く押した。半ば体が浮き上がると、手近にあった木に背中が当たった。

 タカネは友人を見上げて、軽く睨んだ。

「お前、乱暴すぎ。」

「ごめん。」

 イワオはまた謝る。だが興奮に息を乱しながら、再び唇を奪う。タカネの小さな体を木に押し付けながら、貪るように口づけする。まるで腹を空かせた少年が、パンの塊にでも喰い付いているようだった。

 タカネは心中で苦笑した。あまりに昂ぶったイワオが、可愛らしい。しかしあまりにイワオが激しすぎて、少しばかり体が痛かった。

 イワオの肩を押して、口づけを止めさせると、タカネは囁いた。

「落ち着けよ。」

 タカネは笑いながら言ったが、イワオは少しも落ち着かなかった。まるで、お気に入りの毛布かなにかを抱き締めて、一向に放そうとしない幼い子どものように、ぎゅっと太い腕でタカネを抱き締める。あまりに必死なすがたに、タカネは思わず笑ってしまった。

 イワオは怪訝そうに首を傾げた。

「なんだよ。なんで笑うんだ。」

 拗ねたような声に、タカネは笑い声を上げた。

「お前が可愛いからさ、イィ。――おれがちっさかった頃には、頼れる先輩って感じだったのになあ。いまじゃあ、でっかい赤ん坊だな。」

 イワオは不服そうに唸ったが、なにも言わなかった。代わりに、タカネの髪に口元を埋める。タカネは、イワオの首のあたりに顔を寄せた。

 イワオの体からは、濃い汗の匂いが漂っていた。肌を拭うこともせず、二日も汗みどろで訓練を続けているのだから、無理もなかった。タカネの体も、同じように汚れていた。

 イワオの息が、髪に熱い。タカネはいたずらっぽく笑った。

「なあ、おれの頭、そんなにいい匂いか?」

「すげえ、汗臭い。」

 イワオは興奮気味に答えた。だが髪を嗅ぐのを止めようとはしない。タカネのほうでも、イワオの汗臭い胸に顔を寄せたままだった。

 二人は体を抱き合い、腰を擦り寄せた。鉄片を縫いつけた、分厚い胴着の上からでも、勃起した性器は明らかだった。

 タカネは、服の上からイワオの性器に触れた。それはとてつもなく大きく、太さはほとんど腕ほどもあった。撫でてやると、イワオは可愛らしい声で喘いだ。

「タァっ、気持ちいい……。」

 タカネはにやっと笑った。

「もっと気持ちよくさせてやる。」

 身を低くし、膝を地面につく。そしてイワオの胴着と短衣の裾を持ち上げ、その中に顔を入れる。温くて汗臭い空気が、顔を撫でた。勃起した性器が、下着の内側で窮屈そうにしている。下着を解いてやると、勢いよく起き上がった。

「待って、タァ……。」

 イワオの声が上から降ってきた。だがその言葉とは裏腹に、大柄な若者はその手をタカネの頭に置き、自分の腰に擦り付けようと力を込めていた。

 タカネはその力に抗わず、友人の巨根に頬擦りした。二日分の汗と、先走りとでべとべとに濡れ、淫靡な臭気を放っている。口づけすると、刺すような酸味と塩気を唇に感じた。

 その匂いを嗅いでいると、喉の渇きにも似た感覚を覚えた。指で包皮を引き下ろしてやると、いっそう濃い匂いが漂う。露わになった太い先端を、口に入れる。

 すると、イワオはびくっと震え、あっ、と声を上げた。

 タカネはそれに構わず、太い肉をちゅぱちゅぱとしゃぶる。先端だけを口に含み、吸い付きながら、舌で舐め回す。溢れ出てくる塩辛い体液を、ごくごくと飲み干していく。

 イワオは震え、身をよじり、甘い声で喘ぐ。まるで初めて口でしてもらったとでもいうようなよがりようで、タカネは心中で笑った。

「あっ、んっ、うぅっ、んーっ……!」

 汗臭い竿をじっくり味わうと、タカネは口を離した。服の下から顔を出し、イワオを見上げる。イワオは息を乱し、呆然としていた。

「お前、初めてなのかよ?」

 タカネはからかうような口調で言った。すると、イワオは顔を背けた。その様に、タカネは驚いた。まさか本当に初めてだとは、思ってもみなかった。その割には、口づけは悪くはなかったが、他人がやっているのを見て覚えたのだろうか。

「悪かったよ。――お返しに、たっぷり口でよくしてやっからな。」

 再び裾の下に顔を潜り込ませると、びくびくと震える巨根に、頬を擦り寄せる。口を大きく広げて、陰茎を咥える。そして先ほどと同じように先端を攻めながら、片手で垂れ下がった袋を撫で回す。

「はぁっ、あぁっ、んっ、ふっ、ぅんっ!」

 イワオは喘ぎ、その足がかくかくと震え、いまにも転けそうだった。まるですがりつくように、両手でタカネの頭を掴んでいる。

 少年の頃には散々苛めてくれた大きな友人が、こうして乱れるところを見て、タカネは高揚感を覚えていた。心の内で笑いながら、もっと可愛がってやろうと、いっそう熱心にしゃぶった。

 突然、頭に置かれたイワオの手に、力が込もった。それに気づいた次の瞬間には、タカネの口の中に、精が弾けるように溢れ出した。驚いて口を放してしまい、勢い衰えぬ精液が、顔にぶち当たった。

 タカネは顔についた精液を手の甲で拭い、舐め取った。それはどろっと濃くて、むせ返るような匂いがした。それから竿にまたしゃぶりつくと、尿道に残った汁を搾り取っていく。

 そうしていると、上からイワオの声が降ってきた。

「――ごめん。」

 その申し訳なさそうな声に、タカネは裾の下から顔を出すと、相手を見上げた。

「なんで謝るんだ。すごくよかったぜ。ごちそうさん。」

 タカネが言うと、イワオはしばし絶句した。それから、恐る恐るといった調子で言う。

「お前、初めてじゃないのか。すげえいやらしい。」

 タカネは笑った。

「まあな。先輩方には、たっぷり仕込んでもらったからな。」

「タァ、もっとちっこくて、可愛かったのになあ。」

 イワオの寂しそうな物言いに、タカネはまた笑う。

「お前はもっとでっかくて、強くて、かっこよかったのになあ。――おれ、もう可愛くないか?」

「いや、可愛い。」

 イワオは恥ずかしそうに言った。

 タカネは立ち上がると、顔を見上げ、にやっと笑いかけた。

「いやらしくなっちまって、いやか?」

 イワオはたじろいで、そっぽを向いた。タカネは相手の裾の下に手を入れると、まだまだ固い性器を掴み、優しく揉んだ。

「んっ、うっ……。」

「ここは、いやじゃなさそうだなあ。」

 そう言って、イワオの顔を見上げる。イワオは困惑し、恥ずかしそうにしていた。

「ほんとに、なんで、お前、そんないやらしくなっちまったんだ。」

「けど、そっちだっていやらしいことがしたいだろ。――おれは、お前のを、入れて欲しいな。」

 タカネは囁くと、イワオの首筋に口づけした。

「入れるのか、これを。」

 イワオは、少し怯えたような声で言った。

「入るのか? おれの、大きすぎないか? それに、タァ、小さいし……。」

 イワオの言う通り、その性器は大きかった。これまでタカネを抱いたどの戦士よりも太い。そしてだからこそ、タカネはそれがどんなものか、味わってみたかった。

「大丈夫。心配いらない。」

「けど――」

「二本、いっぺんに入れたこともある。」

 タカネが言うと、イワオは息を呑んだ。

「本当か? そんなことして、平気だったのか?」

「いや、平気じゃなかった。」

 タカネは苦笑した。先輩たちはだいたい手荒だったが、時々、本当にひどく荒っぽいことをする。もっとも、それを喜んで許すのはタカネであったが。

「とにかく、お前のだって入る。なあ、入れていいだろ。お前だって、入れたいんじゃねえのか。」

 タカネはイワオの性器を扱いた。髪にかかるイワオの吐息が、ひどく荒かった。

「本当に、いいのか?」

「入れて欲しい。昂ぶっちまって、我慢できない。お前のが欲しい。」

「おれ、初めてだけど……。」

「大丈夫だって。お前の相手が、おれにできないと思ってるのか? おれのほうが上手うわてなんだ。任せろよ。」

 タカネが言うと、イワオは躊躇しながらも、頷いた。タカネは笑った。

「じゃあ、準備しないとな。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...