精霊の庭

火吹き石

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3.熱い肌

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 自らの唇に触れる、イシコロのそれは、ひどく熱かった。唇を離すと、ホムラは相方の頬を撫でた。頬も熱く、真っ赤だった。

「本当に熱いなあ、イシコロ。」

 ホムラが悲しげに言うと、イシコロは寂しそうに、しかし笑って頷いた。そしてホムラを抱き寄せ、髪に何度も唇を押し付ける。ホムラは相手の胸に口づけした。唇に塩気を感じた。

 もう長いこと、二人はこうして色事に興じることがなかった。最後にしたのはいつだったろうかと思うと、一月ひとつき前か、それとも二月前だったかもしれなかった。ずっとイシコロのことが心配で、その気になることがなかったからだったが、それまではほとんど毎晩のように睦み合っていたものだったから、ホムラの体は刺激を受けて、いまは興奮しきっていた。

 ホムラは仰向けのイシコロに抱きついたまま、相手の腰に、自分の腰を擦り付けた。二人とも、その性器は固くなっていた。病身の恋人を相手にこんなに興奮しているのが、なんとも心苦しく思われたが、昂ぶってしまってどうしようもなかった。

 ホムラはイシコロの胸にむしゃぶりつき、もう一方の手で揉んだ。少しばかり筋肉は落ちていたものの、まだまだ並の若者たちには及ばないほどに逞しい。小さな突起に舌を這わせ、手で弄ると、それはすぐに固くなった。それをちゅっ、ちゅっ、と音を立てて吸い付けば、イシコロはうれしそうに溜め息をついた。

「可愛い、ホムラ。」

 イシコロは言いながら、ホムラの髪を撫でた。そして両手で脇の下を掴むと、引っ張り上げようとした。しかしホムラはそれに抵抗して、言った。

「だめだ。お前は休んでろ。今夜は、おれが触るんだからな。」

 それを聞くと、イシコロは微笑んだ。

「おれが病人だからかい。本当に心配性だなあ。分かったよ、ホムラ。おれは見といてやるよ。」

 イシコロはそう言って、両手を自分の頭の後ろで組んだ。そうして露わになった脇に、ホムラは鼻面を突っ込み、口づけし、舌を這わせた。そこは蒸れて汗の匂いが強く、舌を刺すような味がした。ホムラは興奮して、何度も舐めた。

 イシコロは笑った。

「お前、なんてところを舐めるんだ。最近、ちゃんと洗えてないってのに。」

 イシコロはそう言ったが、ホムラはなにも言わず、夢中になって脇に口をつけた。恋人の匂いが、たまらないほど性欲を掻き立てた。汗と汚れを舐め取ると、今度はもう一方の脇に口を突っ込む。それから首筋を舐め、胸をまた味わい、肉付きのいい逞しい腹を愛撫し、腕や指にまで舌を這わせる。

 ホムラの愛撫に、イシコロはうっとりとした顔で、甘い吐息をついた。だがこの若者にはいつもの通り、声はほとんど上げなかった。

 熱い体に触れ、熱心に奉仕していることもあって、ホムラの肌は汗に濡れ、水滴となって浮かんでいた。イシコロは頭の下から片手を出すと、ホムラの髪を愛おしげに撫でた。

「可愛いホムラ。すごく気持ちいいよ。ありがとう。」

 ホムラは恋人の顔を見上げた。

「おれも気持ちいい。なあ、疲れてないかい。」

「ぜんぜん。けど――」

 と、イシコロははにかんだ。

「――こっちも触って欲しいな。」

 そう言って、イシコロは自分の性器を軽く撫でた。ホムラは思わず舌なめずりをした。恋人の大きな得物を求めて、腹の奥底できゅうっと切ない感覚が湧き上がった。

 ホムラは恋人の股座またぐらに顔を寄せると、立ち上がった陰茎に口づけした。根本まで皮の剥けたそれは、黒ずんで濡れ濡れと光っている。その太さは少年の腕ほどもあり、その先端は膨らんで、まるで棍棒のようだった。息をするたびに、蒸れた汗の匂いが漂ってきて、舌から自然と唾が滲み出てきた。

 口を開けると、太い茎を下から舐め上げ、それから、凶器じみた見た目の、膨らんだ先端を咥えた。

 口に入れた途端、濃い匂いと味が口いっぱいに広がった。そして火の魔物の影響はここにも現れており、太い陰茎は、血管に湯が流れているかのように熱かった。

 ホムラは頭全体を上下に動かして、性器を味わった。それから口を離すと、舌を出して先端に唾液を垂らして、両手で恋人の得物を磨いた。

 イシコロが喜びの溜め息を漏らした。にっこりと微笑みながら、ホムラの頭を撫でる。ホムラはむせ返るような匂いと味とで酔ったようにぼうっとし、興奮に息を荒げながら、ひたすら恋人に奉仕した。

 ホムラは自分の腰のあたりが、刺激を求めて熱を持つのを感じた。イシコロのものを口で喜ばせながら、自分の指に唾を取り、自分の尻にやった。ひくつく肛門に指を押し当てると、それほど抵抗なく飲み込んだ。相方の棍棒のような得物でいつも突き回されて、穴はすっかり異物を咥えることに慣れていた。

 唾で濡らし、しばらく指で弄ると、後ろの準備は整った。ホムラは身を起こすと、イシコロの首に抱きつき、耳元で囁いた。

「もう、入れていい?」

 ホムラが言うと、イシコロはうれしそうに顔をほころばせた。髪を撫で、額に唇を落とす。

「いいよ。おれも入れたい。」

 ホムラは膝立ちになると、イシコロの腰の上に跨った。太い陰茎を片手で掴み、ゆっくりと腰を降ろしていく。穴の口に膨らんだ先端を押し当てると、ぞくぞくとするような期待感が体を走った。

「はっ……あっ……はぁ……。」

 腰を沈めていくと、性器が体の内側に喰い込んでいった。ホムラは背を仰け反らせ、甘く声を漏らした。これまで何度も受け入れてきたとはいえ、イシコロのものは太く、そう簡単には入らなかった。やがて根本まで飲み込んでからも、ホムラは動かず、息を荒げていた。

「熱い……。お前の、こいつも熱いぞ……。」

 ホムラは呻いて、肛門をきゅっと締めた。まるで血が湯だっているかのように、イシコロの陰茎は熱かった。体の奥を熱い肉塊に貫かれ、言いようのない苦悶と快感を覚えた。とはいえ相方の身を心配して、ホムラは眉根を寄せた。

「お前、本当に大丈夫なのか。こんな、熱いのによ。」

 ホムラの言葉に、イシコロは笑いを零した。

「大丈夫。だから、ほら、腰を振ってよ。今夜はホムラが、おれをよくしてくれるんだろ。」

 イシコロの言葉に、ホムラは苦しげに笑みを浮かべた。

「分かった。お前が満足するまで、いくらでも絞ってやるからな。」

 ホムラはイシコロの胸に手をつくと、ゆっくりと腰を浮かし、沈めた。口が開き、喘ぎ声が自ずと漏れた。久方ぶりの閨事ねやごとに、たまらぬほどに興奮していた。声を上げながら、何度も何度も腰を動かす。

「んっ、あっ、んーっ……。」

 汗をかきながら腰を振るホムラに、イシコロは手を伸ばし、その頬を撫でた。ホムラは無骨な手に頬擦りし、口づけし、それから、指を口に含んだ。塩気のする指を、興奮してちゅうちゅうと吸った。

 これだけホムラが淫らなすがたを晒していても、朴訥としたイシコロの顔には、それほど強い表情は浮かんでいなかった。だがこの一年の付き合いで、ホムラには恋人の微かな表情を読み取ることができるようになっていた。いま、イシコロは満足気な笑みを浮かべていた。

 イシコロが言った。

「舌を出してごらん。」

 言われるままにホムラが舌を出すと、イシコロはそれを指で撫で回した。それから頬を手荒に撫で回し、耳を弄り、胸に手を置いた。そして胸を揉んだり、突起を抓んだりして、すきなように弄んだ。

「あっ、んっ、ふっ、あぅっ……。」

 愛撫を受けながら、ホムラは甘く鳴き、ひたすら腰を振った。動くたびに、太くて熱い肉塊に体の内側を擦られ、痺れるような快感が走った。悦楽を求めて抜き差しを続けるが、あまりに気持ちがよくて、そしていつもはイシコロに動いてもらっていたこともあって、動きはぎこちなかった。

 そうやってたどたどしく、しかし貪欲に、淫らに腰を振るホムラを、イシコロはうれしそうに見上げていた。手をホムラの体から離し、また自分の頭の下に置くと、くつろいだ様子でホムラを見つめた。そんなふうに突き放して見られると、ホムラは、恥ずかしくてたまらなかった。

 すると、ホムラの心中を察したのか、それとも顔に現れたのか、イシコロはくすっと笑った。

「可愛い、ホムラ。こっちに来てごらん。口づけが欲しいよ。」

 そう言われると、ホムラは拒むはずもなかった。覆いかぶさるようにして顔を近づけると、恋人に短く口づけした。そしてまた起き上がろうとすると、イシコロがその頭を手で掴んだ。

「短いな。もっと欲しい。」

 そう言って、イシコロはホムラの頭を引き寄せ、唇を奪った。今度は、もっと濃厚な口づけだった。ホムラの唇を喰むようにして味わい、口中に舌を捩じ込む。ホムラは口を開いて、自らを差し出した。

 ぺちゃ、くちゅ、と水音が響いた。口づけは長いこと続いた。ホムラは蕩けてしまい、腰を動かすこともできず、ただイシコロに抱きついた。

 やがてイシコロがホムラの頭から手を離し、唇を離した。ホムラが息を弾ませ、イシコロの体の上でくたっとしていると、イシコロがその腰をがっしと掴んだ。驚いてホムラが顔を上げると、イシコロは恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。

「ごめん、我慢できない。」

 そう言うや、イシコロは下から勢いよく突き上げた。棍棒のような陰茎が体を奥まで貫き、まるで殴りつけられたかのような衝撃が、ホムラの体を走った。

「まっ――まってっ――だめっ――!」

 いきなりのことに、ホムラは喘いだ。今夜は、病身のイシコロには寝ていてもらうはずだったのだ。イシコロを止めようと、まずは身を起こそうとするが、体を貫く快感に四肢が力を失い、ぐったりとイシコロの上で横になり、されるがままになるだけだった。

 イシコロはホムラの腰をがっしりと掴み、がつがつと貪るように突きまくりながら、ホムラの顔を覗き込んで言った。

「心配しなくていいから。ホムラだって、こうしたほうが気持ちいいだろ。」

 イシコロの言う通りではあった。相手に動いてもらったほうが、ホムラも気持ちよかった。自分で腰を振ることには慣れておらず、こうやって乱暴に尻をえぐってくれるのが、体に合っていた。

 それで、ホムラは抵抗を止めて、相手に身をゆだねた。イシコロの首にすがり、肌に唇を押し付ける。

 二人とも体から汗が流れていた。熱に冒されたイシコロは、余計に体が熱くなり、その肌は火に当てられたかのようだった。触れ合う肌から感じるその熱さが、ホムラには気持ちよくもあり、また悲しくもあった。

 少しして、イシコロが息を乱しはじめ、その顔から余裕がなくなってきた。喜ばしい期待に胸を踊らせ、ホムラは恋人にぎゅっと力を込めて抱きついた。イシコロはそれに応えるように、いっそう激しく腰を動かし、攻め立てた。

 やがて、イシコロが上擦った声で言った。

「もう、出そうだ、ホムラ。」

 イシコロはホムラの髪に唇を強く押し付けた。すぐに、ホムラは自分の中に、熱い精が吐き出されるのを感じた。それは本当に熱を持ち、並の人肌よりもはるかに熱かった。ホムラは恋人の精を身内に注がれ、満たされた気持ちになった。

「イシコロ――イシコロ――」

 ホムラは相方に抱きつき、何度も愛しい名を呼んだ。

 イシコロは、射精してからもすぐには動きを止めなかった。それはいつものことだった。たっぷりと精を注いだ後で、何度も何度も棍棒のような性器で貫き、掻き混ぜ、ホムラをよがらせるのだ。

 やがてイシコロは動きを止めた。ホムラの腰を掴んでいた手を放し、その背中を優しく、力強く抱きしめる。ホムラは疲れて、ぐったりとイシコロの上で四肢を伸ばした。二人とも肌は汗でびっしょりと濡れ、息を荒げていた。
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