見つけた、いこう

かないみのる

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バイト先の塾の来るのは約三週間ぶりである。

教室に入ると早々、塾長の太田先生が「ちょっと橘先生どういうことだい?」と詰め寄ってきた。



「何か、あったんですか?」


「何かあったって?あったよ、大問題だよ大問題。優実ちゃんが、塾をやめるって言いだしたんだよ。橘先生、何か心当たりない?」


「うーん、全くないです」



俺は潔いほどはっきりと嘘を吐いた。



「あやしい。本当に?僕の目を見て言ってごらん。」



いやだ。何がうれしくて中年のおじさんと見つめあわなければいけないのだ。



「ありません」



俺は努めて真面目な顔で言った。

できるだけ目を細めて、太田先生の顔を極力見なくて済むようにした。



心当たりがないというのは完全な嘘である。

心当たり大ありだ。

しかし、正直に話してしまえば、説教一時間コースは確実である。

その後、「言い過ぎた。これでも食べて元気出しなよ」といってイナゴかハチノコを食べさせられるのもわかりきっている。

なんとしてでも回避しなければならない。



長い睨み合いの後、先に口を開いたのは太田先生だった。



「そっか。まあでも、本人に理由を聞いたら授業に不満があったわけじゃないみたいだから、橘先生が原因ではないんだろうね。どうにも、自分の秘めた力が覚醒したとか、修行をしないといけないとか言ってたよ。さすがに冗談だとは思うけど」



太田先生は肩をすくめた。

どうやら俺は一人の少女の運命を大きく変えてしまったらしい。

将来のエリート女医が、本当は超能力なんて持ってない哀れな自称超能力者となってしまうなんて。

じんわりと罪悪感が湧いてきたが、俺は優実ちゃんに嫌われているし今更何もできる事はない。

もう俺には関係のないことだと割り切る事にした。



優実ちゃんができるだけ早く目を覚ましますように。

それだけを願う。
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