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しおりを挟む俺は子どもの頃、水辺に近寄る事は禁止されていたが、川を眺めながら散歩することは好きだった。
川のせせらぎは心を癒してくれる。
だからよく川沿いを歩きに行っていた。
ある時、そこで危険な目に遭った。
その時の事は今でも鮮明に覚えている。
小学3年生の時の事だ。
曇り空の下、川沿いを散歩していると、川辺をよちよちと子猫が歩いていた。
小さい脚でよろけながら歩く姿は非常に危なっかしく、俺は目を離せなくなってしまった。
子猫は途中で立ち止まり、水を飲みたいのか、顔を水面に近づけていった。
その様子を見て俺は何か胸騒ぎがした。
水面まであと数センチというところで、子猫は前足を滑らせて川に落ちてしまった。
川の流れは容赦なく子猫をなぶるように流していった。
このままでは死んでしまう。
前に川に落ちた時もなんとかなったし、大丈夫だろう。
周囲に誰もいないことを確認して服を脱ぎ、意を決して川に飛び込んだ。
この時の俺は失念していた。
以前落ちた川よりもずっと荒々しい川だということを。
思っていたより流れの速い川だった。
水流が絡みつき、身体が思うように動かなかった。
プールの授業は常に見学していたから泳いだことなどなく、ほぼ溺れているような状態で子猫を追いかけた。
何とか子猫に追いつき抱き寄せることに成功したが、子猫を抱えて陸まで泳ぐには水の勢いが激しすぎた。
俺と子猫はどんどん下流に流されていく。
「あそこに子猫が!」
たまたま川沿いにいた通行人の女性が叫んだ。
その声を聞き、何人か川辺に近づいてきた。
俺は子猫が沈まないように子猫を持った手を上にあげて懸命に足を動かした。
背の高い男性が岸を走って追いかけてきてくれた。
男性が追いつき、手を伸ばしていた。
俺は力の限り水を蹴り、男性の手を掴もうと自分の手を伸ばした。
男性は俺が持っていた子猫の方に手を伸ばし、子猫を抱き上げ、そのまま去っていってしまった。
俺は……?
「随分水の勢いがすごいわね。誰かが暴れているみたい」
「魚でもいるのかしら?」
俺の方を見ておばさん達が驚いたような顔をした。
彼女達の目には俺は映っていない。
雷の音が聞こえる。
雨が降り出した。
雨水が川面を叩きつけ、身体が沈む。
ねえ、誰か見つけて。
やっとの思いで岸に着き、服を取りに戻る余裕もなく、裸で雨の中を歩いて帰った。
雨が降っていたために誰にも見つかる事はなかった。
俺はひとりぼっちだ。
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